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第183回MBS(2019/6/13収録)「ロボット化により、半農半“X”の業態が急増する」 後編 Inaho株式会社 Co-Founder/CEO 菱木豊さん

前編からの続きです。

●鎌倉に会社を設立した理由

 三木:何とか持ち直したきっかけがプロトタイプができてプレゼンテーションできるようになったことなんですか?

菱木:そこからちゃんとお金が入るようになってきたっていうのが大きいです。

三木:それはどういう…?

菱木:それは大きな金額の出資を受けたりすることによって、初めて自分に給料を出せるようになったのは去年の8月の話なので、それは大きいですね。

三木:ここを借りたのもその時?

菱木:借りたのは去年の7月ですね。

三木:なぜあえて鎌倉という地を選んでロボット開発をしようと?

菱木:我々農業って自然相手の仕事をしてるので、周りに自然がある環境がいいなっていうのもそうですし、あとそこに出てすぐに仮設の畑があったりするので、そういったところで実証実験が簡単にできるっていうことがあるので、畑付きの物件とか元々探してたんですけど、そういったのはなかなか都心ではないのでここにしたっていうのもあるんです。別に鎌倉じゃなくてもいいじゃないって話なんですけど、僕鎌倉出身なので、鎌倉大好きで鎌倉一番良いですからね。結構うち家族持ちの人が転職してきたりもするので、奥さんと一緒に引っ越してきてみたいになると、住環境的にも住みやすいほうがいいなというところで、今鎌倉に腰を置いてます。

三木:すごい経歴を持ってるエンジニアが次々と集まって来てるんでしょ?

菱木:そうですね。

三木:元自動車メーカーのプログラミングをしてた方とかエンジニアとか。

宇都宮:どうやって募集したんですか?口コミとか?

菱木:Wantedlyとかなんです。今度20人なんですけど、そのうち2人Canon、2人Hondaです。スタートアップなのに。

宇都宮:年齢層は30代、40代ぐらい?

菱木:いや、20代からいて一番上は抜けてて64までっていう幅広く。

宇都宮:こちらに働きに来てる?

菱木:基本はみんなそうですね。でも佐賀県にも支店があるので…

三木:なぜに佐賀県?

菱木:我々アスパラガスときゅうりをターゲットに収穫ロボットを作ってるんですけど、佐賀県がアスパラもきゅうりも同一面積当たりの生産量が日本でもトップクラスに多いんです。ロボット的に言うと獲るのがハードな環境なんです。逆にそこでちゃんとできれば他どこに行っても獲れるっていう環境になるので、そこで今支店を置いて色々実証実験をやってます。

 

●農業用ロボットの紹介と今後の方向性

 三木:今見せられる動画をちょっと見せていただいて。

<紹介動画(00:35:14~00:36:53)>

菱木:人がこうやって手で獲ってるんですけど、何で人が手で獲らなきゃいけないかっていうと、出荷するときに25cm以上の長さで収穫したものという基準が決まっています。
なので、今は人が目で見て、採れるものを1つ1つ選んでいます。それをこういったセンサーを使って1本ずつ収穫適期かどうかを判断して、条件に合ったものだけを採るということをロボットでやってます。
ソフトとハードウエアは全部基本的に自社設計で、アセンブリもアームなんかは全部内製で今やっている感じです。自立走行でこんな感じで勝手に動いて勝手に獲るみたいな。

宇都宮:これは早回しじゃないですよね?

菱木:これはちょい早回しです。アスパラは育ち続けると1mもの大きさにもなるんですけど、収穫適期のものだけを獲ったり、赤外線のセンサーを使ってるので夜間でも問題なく認識して獲れるんです。これはハウスからハウスへの移動をしています。あとはきゅうりなんですけど、汎用的に色んな野菜を獲ることをやってるので、きゅうりに関してもディープラーニングで実がどれかっていうのを認識して、茎の部分をめがけて獲りに行って切るっていう。

宇都宮:切る動作も含まれてるんですね。

菱木:そうです。これは今どんどんモノのクオリティを上げていって農家さんに出して、この後トマトとかピーマンとかナスとか色んな野菜に展開していこうっていう計画です。

三木:すごいですね。相当に進んでいますね。

宇都宮:夜も働いてくれるってすごいですね。

菱木:そうですね。

三木:一番最初に見た時(グラグラ)って感じで。

菱木:ほんと最初はそんな感じでした。

三木:すごい高速化されてますね。

菱木:まだまだですけどね。

三木:今コンペティターとかいくつかあるんですか?世界的に見て。

菱木:トマトとかを認識して獲ろうっていうのはあったりします。イチゴとか腕が20何個あるみたいな超大型のロボットがあったりするんです。

三木:イギリスの会社がイチゴでベリーという、でもスピードがいまいちだったり。

菱木:ああいったのがたくさん出てきて、まだ商業化ですごく広がってるかっていうとそこまでじゃないんです。どこも開発段階でこれから市場に出していくぞっていう、そこで言うとたぶん僕らも同じフェーズにいるので、どう早くそこを飛び抜けていけるかの勝負かなっていうところです。

三木:今後のロードマップというかどんな感じで開発していくんですか?

菱木:今年40台ぐらい生産して、来年400台っていう計画に今なってるんですけど、2022年ぐらいまでには8,400台っていうベンチマークを置いてるんです。その中でまずはなるべく早く海外に持って行きたいなっていうのがあるので、できるならば来年とか再来年の段階で海外にテストで持って行くことをしていきたいなと思っています。

三木:何となく販売価格みたいなのはあるんですか?リース?

菱木:一応売らないっていうことだけは決めていて、世の中の市場の取引価格ってオープンになってて、例えばkg単価1,000円の物を1kg獲ったら1,000円分の野菜を獲ったっていうことじゃないですか。これに対して例えばマージン15%頂戴するっていうビジネスモデルなんです。分かりやすく言うと1,000万円分の野菜を獲ったとすると150万円もらいますっていう料金体系に現状しています。

宇都宮:Robot as a Service(RaaS)っていう言葉はありますよね。

菱木:そうなんです。サービス型で提供していこうということです。

三木:メンテナンスもこちら側でやる?

菱木:そうです。メンテナンスはこちら側でやるので、何でそんなことをやってるかと言うと、カメラとかセンサーとか年々常により良くなっていくので、それを常にアップグレードし続けるということをねらいとしています。例えばいきなり100%獲るっていうのは難しいんです。ハード、ソフトをどんどんより良くして獲れる率が上がっていくと農家さんは手間が減るので、生産面積を増やしたら売上や利益を上げれるじゃないですか。そしたら僕らも利益上がるよねっていうところでお互いにとって良いよねっていうことを考えてます。

宇都宮:機械として購入すると資産になっちゃって今度償却しないといけないから、どんどんビジネスしても負担が増えていくから農家さん的には…

菱木:inaho側が償却資産どんどん増えていっちゃいますね。農家さん側としては導入費用は無料でいいので…

宇都宮:ランニングコストだけ負担する形?

菱木:そうです。収穫高に応じて利用料としてお支払いいただくメニューにしてます。

宇都宮:市場価格と連動させるイメージですか?

菱木:そうです。

 三木:サービススタートはいつぐらいが目途ですか?

菱木:もうそろそろ農家さんのところに入ります。

三木:すごいですね。

菱木:農家さんのところでテストみたいな形でずっとやってるんですけど、圃場全体を収穫できるようになるのが間もなく、という状況です。

宇都宮:今のところ作物を限定して出す?アスパラときゅうりっていう風に…

菱木:今はアスパラだけですね。アスパラの次の作物として、きゅうりにも対応できるように開発を進めているんです。

宇都宮:作物によって違いますもんね。当然マニピュレーターとかアルゴリズム変わりますもんね。

菱木:変わります。マニピュレーターの中でも本当に手元のエンドエフェクターの部分だけ変えようっていう感じで、ここの(アーム)部分は基本に同一で使えるように設計を考えています。あとは認識部分がそれぞれあるので、それぞれに対しての開発っていうのは必須になってくるところです。

宇都宮:無数にありますね。野菜にしても果物にしても。

菱木:そうです。優先順位を付けて、ロボットがやりやすいものからやっていこうと思ってるので、ここら辺のきゅうり、ピーマン、ナス、トマトとか、あとはイチゴとかですね。長さで収穫するしないが決まるのが結構多いんです。もしくはここの直径、幅も見て表面積でだいたい見れば分かったりするので、ここら辺だと色が加えてくるんですけど、いくつか段階を経ながらやっていく感じです。

三木:すごい広がり感がありますね。

菱木:そうなんです。

宇都宮:製造はどこで製造を?どこか契約した工場で?

菱木:そういったところで、今のプロト40台に関してもとある工場さんに今お願いしていて、ちょうど今週やってるところなんです。その次の量産のところも製造に関しては外部でお願いするってなっているので、いくつか工場に当たってるところです。そんなに外で動きものやってるとこって多くはないので、工場も色々あれなんですけど。

 

●モノづくりにおいて一番大変だったこと

三木:モノづくりのお話を聞きたいんですけど、4年前は全く素人が今ここまで来てるっていうところで、モノづくりでどの辺が一番大変でしたか?

菱木:思った通りにいかないことが多すぎるですかね。何事もそうだと思うんですけど。

宇都宮:ソフトとは違いますもんね。物理的な物があると重量があるとか…

菱木:そうですね。環境が変化するんですよね。

宇都宮:外部環境、温度とか湿度とか。

菱木:野菜の生え方っていうのも時期によってそれぞれ変わるわけなんです。分かりやすく言うと、例えば春夏秋冬ってなった時に、春の期間になるとちゃんと獲れてるんだけど、夏になった瞬間今までの春のアルゴリズムじゃ獲れなくなるみたいなことが発生するんです。そうするとこれに対応させるためにっていう形で、本当にリーンに色々作り続けなきゃいけないっていうのが大変です。それでも様々な環境のもとで安定感が出たらきちっといけるので、よく他の会社が同様のビジネスを始めるみたいな話があるんですけど、逆に言うとこの大変な試行錯誤が参入障壁の1つになるんです。

宇都宮:データ量自体が…

菱木:データ量もそうですね。例えばソフトウエアでデータをガーッと集めて解析できるかっていうのと、物理環境が変わるっていうのってそう簡単にデータとして集めにくいことなので。

宇都宮:ハードウエア自体が参入障壁ですね。

菱木:そうだとは思います。

宇都宮:モノづくりを知ってる人からすると逆にできないですね。知ってるほどたぶん踏み込めない領域というか…

菱木:もう大変なことが目に見えすぎるじゃないですか。モノづくりの人からすると。それがなかったのが良かったですね。

宇都宮:逆に言うと踏み込んだから分かることもあるので、知ってる人ができないことをやるのはたぶんベンチャーというかスタートアップみたいな。それをサポートするような体制ができてくるといいですね。

菱木:そうですね。

三木:面白いなと思うのは、我々はモノづくりからそうじゃないほうにどんどんシフトして、逆を行ってるからね。

 

癒しとしての農業と農業の課題について

 三木:我々マインドフルシティということで鎌倉を中心にこんな町にしていきたいということで、Zen2.0っていうイベントをやったりとか、それがきっかけで移住してくる人とか、マインドフルネスのコミュニティができたりとか、人の心の部分に焦点を当てて色んな活動をしてるんです。農業というのも人の心を癒す面でも重要な産業だと思ってて、お仕事としてやるのは大変なところもあると思うんですが、僕らは農業を癒しに使って土と触れ合うことで心が豊かになっていくところに可能性を感じてるんです。菱木さんの農業に対する今の想いというか、ロボット開発をしながら日本の農業がこういう風になっていったらいいなみたいなのはありますか?

菱木:そういう文脈でいくと、人の心に与える影響はあるだろうなっていうのはやりながら実感してる部分もあって、それはロボット作ってるっていうのと全然真逆なんですけど、畑に行って体を動かして何かやったりすると気持ちいいんです。いい汗流してみたいなのは間違いなくありますし、かつ社内でも「これは小学生とかみんなやったほうがいいよね」みたいな話に結構なるんです。それはそういうことをやってくれてる人達がいることを知ることによって、それこそ感謝して食べ物食べれるようになることもあるので、そういった気持ちを作っていくっていう意味でも、やはり人間って食べ物でできてますから、そこの源流から知っていくっていうことは非常に重要なことだと思います。

三木:ロボットを作っている人がそういうことを思うのは面白いなと思って。

菱木:ロボットができたとしても人間が行っていること全部をロボットが行うことは不可能です。そこには必ず人が協働していく、例えば収穫という作業はロボットに、よりおいしい野菜を作ろうとか、より安心して食べられる野菜を作ろうとかって、これは人側のアプローチがないとできないことです。そういった意味ではいくらオートメーション化、機械化だって言っても人が介在するのは必ず残るので、そこにはどういった気持ちでやっていこうかみたいなものも十分加わってくるポイントかなと思います。

三木:テストの中で色んな農家さんと対話していくでしょ?それぞれの農家さんの色んな想いがあると思うんですが、その中で気づいた日本の農業の課題はあるんですか?

菱木:僕らはどんな課題にアプローチしているかって言うと、間違いなく人手不足なわけなんです。例えば売上を増やしたいと思っても、人を安定的に雇うことが難しいので面積を広げられないっていう課題があるので、単純作業をなるべくロボットとかで自動化して、彼らが人を雇うんじゃなくても安定的に雇用の代わりができて、面積広げて売上増やしていくことに寄与できればいいなと思ってるんです。マインドフル的な文脈で言うと、田舎の農家さんとかって良い人めっちゃ多いんですよ。それは普段の過ごし方とか心のあり方とかっていうのがあるんじゃないかなと思っていて、喧騒の中で働いてるわけでもなく、日常的に畑の中とかに行って、(農作業って)瞑想をやってるのと一緒ですよ。単純にずっと何か作業してっていう…

宇都宮:作業をして今ここに集中して…

菱木:常にある程度目は視界を広げて見ておくとかっていうことを自然の中でやり続けてる人達ですから。

宇都宮:お坊さんみたいな。

菱木:修行僧ね。絶対自分にはできないなと思います。でもそれをやってる人達って良い人多いですよね。

三木:お坊さんみたいな人達が多いんじゃないですか。

菱木:多いです。

宇都宮:農業やってみようっていう人はたぶん大変すぎてやれないけど、ツールを使うともしかしたら参入できる人が増えるかもしれない。

菱木:そうです。毎日収穫作業するとかって大変すぎるので、それをある程度自動化できたら入りやすくなるのは間違いないので、かつそれで儲かるようになったら…

宇都宮:そうすると農業する人が増えてくる。

菱木:そういう風になるといいなと思ってます。

三木:いいですね。色んなバリエーションの農家さんがいて。僕もここのロボット1台お借りしてマインドフル農園みたいな、片一方で瞑想道場があって、お野菜は耕すところがあって、一緒に土でちょっとやってみましょうっていうところがあってみたいな、ロボットがいればある程度軽減できるところもあるので、そういう新しいビジネスモデルのスタイルもできるんじゃないかと。

菱木:そうですね。

宇都宮:ロボット経由で色んなデータが取れるから、それはまたビジネスにも使えますもんね

菱木:そうなんですよ。そこから取れるデータはたくさんあるので。

宇都宮:農業ビジネスに色んな広がりがあるとキャッシュポイントも増えてくるっていう。

菱木:ほんとそうなんですよ。

三木:農業をベースにしたリトリートセンターができる。

菱木:自給自足でいいと思います。

宇都宮:ロボットを使った自給自足って昔の自給自足とイメージが違いますよね。

菱木:そうですね。でも全然ありですね。

宇都宮:スマホがある時代ですもんね。インターネットもあって。

菱木:別に頼るじゃなくて使うなので、それをうまいこと使えばいいって話ですね。

宇都宮:そうすると市場介さず流通できたりとかそういう方向性もあり得るんですか?

菱木:色々あると思います。

 

●菱木さんの考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

 三木:菱木さんの考える「日本の○○の未来」っていう、○○は自分で入れてもらって、農業でもロボットでもスタートアップでも。

菱木:広めに言っちゃうとたぶん日本の社会って話になるんですけど、金なくてヤバかったって話したと思うんですけど、その時無駄な頭のCPUを使ってるなってすごい思ってたんです。それに対する嫌という感情すら無駄だなと思ってたので、なるべくそういうのはない社会があったらいいなと思ってます。それこそカマコンが好きな人達とかってほんとはそれだけやれればいいっていう人達意外といて、そういう人達が何でそれをやれずに普通に働くんだっけってお金の問題なんです。そういった意味でもベーシックインカムのように、衣食住に憂いが小さくなるような取り組みが必要だと思っていて、日本の農業って軸でいくと、あと10年で農家さんって半分になってるんです。10年で農家って供給サイドが50%減るのに対して、人口って5%ぐらいしか減らないんです。需要と供給にとんでもないギャップができてしまう。衣食住にかかるコストのトレンドでいくと衣はだいたい安くなってて、住まいは人口がどんどん減っていくので安くなっていくのに、食だけ上がっていく基調なんです。ロボットとか使って仮に生産性4倍っていうことをしたら、食の単価を例えば半分にするみたいな、でも農家の利益は2倍になるという、みんなヘルシーにそんなにお金がなくてもちゃんと良い野菜を食べれる社会であれば実現しやすくなるんじゃないかなと思っているので、そこに寄与できたらいいなと思っています。

三木:ぜひこの鎌倉でマインドフルな農家さんをどんどん増やしていただいて。

宇都宮:テクノロジーでそこをもっともっとサポートして。

菱木:はい。そこは段階アップするにはテクノロジーしかないと思ってるので。

宇都宮:テクノロジーが人間を不幸にしてるっていう人もいるけど逆ですよね。AIで仕事がなくなるって言ってる人もいるけど、逆にAIに仕事をさせて人はもっとクリエイティブなこととか…

菱木:まさに。働く必然性がなくなった時に働きたい人は働くでしょうし、そうじゃない人はもっと瞑想するのかもしれないし、マインドフルで自分が楽しめる何かをするのかもしれないし、選択肢を持てるっていうことが一番幸せなことなんじゃないかなって思います。

三木:今日は素晴らしいお話をありがとうございました。

菱木:ありがとうございました。

菱木豊さん
https://www.facebook.com/yutaka.hishiki

Inaho株式会社サイト
https://inaho.co/

 

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