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第183回MBS(2019/6/13収録)「ロボット化により、半農半“X”の業態が急増する」前編 Inaho株式会社 Co-Founder/CEO 菱木豊さん

●ご挨拶と出演者紹介

 三木:第183回マインドフルビジネスストーリーということで、今回からタイトルを少し変えました。よりマインドフルなビジネスを紹介していくということでMBS(Mindful Business Story)になりました。本日はInaho株式会社のほうにお邪魔して、菱木さんのほうに色々マインドフルな農業用ロボット開発のお話を…

菱木:ヤバいやつを…(笑)。

三木:ヤバいですね。

 

●三木さんとの出会いについて

三木:菱木さんと最初にお会いした頃は、我々は結構モノづくりのイメージだと思われてたと思うのですが、それからシフトして、モノからITとか金融そして心に移ってきたと。

菱木:なるほど。幅広く…

三木:菱木さんと最初にお会いしたきっかけはカマコンというところで、面白いお兄さんがいるなと(笑)。

菱木:変な奴がいると(笑)。

宇都宮:どう面白かったんですか?

三木:結構中心的に無理難題を振られてキーボードのキーが折れながら…

菱木:確かにやってましたね。懐かしい。それ何年前ですか?

三木:4年ぐらい前。IIKUNI(鎌倉をよくするアイデア支援!鎌倉市限定クラウドファンディング)を当初一緒にやってた。

菱木:4、5年前ですよね。

 

●菱木さんの経歴と農業用ロボットの開発について

三木:その時の本業は何だったんですか?

菱木:その時はomoroっていう会社をやってた時なので、とにかく面白いことを色々やっていこうということだけ考えてたので、Webサービスやフェスをやってみたりとか、多ジャンルで色々やってた感じでした。

三木:それがなぜ今の農業用ロボットに至るのかと。

菱木:その4、5年前ぐらいから三木さんもご存じのTheWave塾をやってる湯川さんのところでずっと事務局みたいな形でやり続けていて、当時、まだ流行っていなかったAIの講座が始まったんです。その時に例えば有名どころで言うと東大の松尾先生とか色んな方達の話を聞く機会があって、AIが次の時代の潮流を作るなと思ったんです。AIで何かできないか1年ぐらい考え続けていた時に、たまたま知ったのがアメリカにブルーリバー・テクノロジーズって会社があって、当時レタスを自動的に間引くっていうことをやってたんです。カメラの画像処理でディープラーニングで等間隔で種付けしていくんですけど、等間隔じゃなくちょっとずれちゃったりとかするわけです。そうするとあまりにも近接して生えちゃうと両方とも成長を阻害しちゃうので、等間隔になってるかっていうのを上からカメラで見て、レタス同士の間隔が不十分なところは、自動的に薬剤をビュッと散布して、間引いてくれて、成長を促していくっていうのをやっててすごいなと思ったわけです。

宇都宮:それは自動的にしてるんですか?

菱木:自動的にしてるんです。それが5年ぐらい前の話なんです。これはすごいと思って、鎌倉で鎌倉野菜を作ってる農家の友人がいたんです。そいつとたまたま飲む機会がそれを知った次の日にあって、今の話をしたら「いや、菱木さん、レタス間引いてる場合じゃないです。うちの雑草なんとかしてくれ」って言うんです。どういうことか僕も分かんなくて、畑なんて僕行ったことほとんどなかったので、行って雑草取ったらむちゃくちゃ大変なんです。この雑草を取るために何をすればいいんだろうって思った時に、野菜か雑草かをディープラーニングで見分けて画像認識して雑草だって見分けることはできそうだっていうことは感覚的に分かったんです。ずっと1年以上AIの勉強したので。あとはこれを取る機構さえあればできるんじゃないかと思ったのがきっかけです。

三木:でもロボットでしょ?その頃やってたお仕事は…

菱木:全く関係ないですね。

三木:そこでモノづくりにいけるっていう何か自信というか…知らなかったっていうことですか?

菱木:今振り返ると知らなくて本当に良かったなって思うんです。

宇都宮:怖いもの知らずですね。

 菱木:まさにロボットって作ろうとするともちろんハードだけじゃなくてソフトの認識だったり、つなぐのだったり電装だったりとか、とんでもなく大変な世界で、そもそも電装があるのもよく分かってなかったので、基板がどうたらすら分かってないタイプだったので良かったなっていうのもあるんですけど、10年後ないしは15年後にロボットが雑草を取ったりとかもしくは野菜を収穫したりっていうのは絶対当たり前の時代になるなっていうことだけは予見できたんです。

宇都宮:それは何かビジョンを見たんですか?

菱木:それはAIとかのロボットないしはそういったものの自動化していくのが基本的に潮流を見ていくと必ずそうなるだろうなっていうのはテクノロジーの進化を考えた時に思ったので、今の世の中にそのサービスがないとなった時には…

三木:作るしかないと。

菱木:作れるか作れないかっていう問題があるんですけど、まずチャレンジしてみる価値はあると!できないんだったら、できない理由はどこにあるのかを探ることが重要だと思ったので、まずはやってみました!知見を持っている人達に会いに行き、どうやったらできるのか?難所はどこだったか?今は何が課題なのか?をひたすら教えてもらいました!現状が把握できれば、あとは何を解決すれば良いか大枠が理解できるので、自分が出来ない部分は、出来る人と一緒にやって進めていきました。

三木:まずは色々ヒアリング、人脈づくりで、その次のステップはどんな感じですか?

菱木:分かったことは、外の太陽光が降り注ぐ中できちんと認識するってすごい難しいんです。カメラとかって太陽光が直行でやってくると白ボケしちゃうじゃないですか。センサーも一緒で、僕らは今TOFっていうTime-of-Flightっていう赤外線のレーザーをバーッと打って、当たって返ってきた値を見て分析することをやってるんですけど、なかなかノイズが入ってきて認識しづらいっていうのが原因であることが分かったので、それをできるセンサーがないかっていうのを探してた時に、たまたまそれをやってる会社があってそれを最初使いました。

三木:それは日本だけの高性能なセンサーなんですか?アメリカとか海外では出してないっていうか…

菱木:僕やってたのは3年ぐらい前なんですけど、当時はほとんどなかったですね。海外はそこまで調べ切れてなかったですけど、日本で普通の民生でそれでもカメラ1個25万とかするんですけど、ほとんど他になかったです。ただ標準なアプリケーションでちゃんと認識して獲れるはずなくて、僕ら野菜っていう特殊なもののデータを取ろうとしてるので、そこの会社さんに我々の獲りたいアスパラガスのデータを取るためのアプリケーションを作ってくださいっていう形で当時お金なかったんですけど、4-500万ぐらいで発注をかけて作ってもらったんです。

三木:すごい。いきなり   4-500万。

宇都宮:それは自己資金で?

菱木:いやいや、ほとんどお金集めてましたね。

三木:エンジェル的な?

菱木:エンジェル的な感じで。

三木:それでそれっぽいものができてきた感じですか?センサーがあってアプリケーションがあって。

菱木:アプリケーションできたんですけど、結論ダメだったんですよ(笑)。

三木:結構ショック?

菱木:めちゃくちゃショックですよ。お金も集めちゃってそのお金も使ってるし。何でできなかったかって言うと、ちゃんと実績があって評価されてるセンサーなんですが、そのセンサーが検知してるのは人の体のサイズが対象であって、僕らが認証する対象は野菜であって、全然サイズが違うんです。そうするとレーザーを打った時に返ってくる値の数が全然少ないんです。データが欠損しちゃったりとかっていうので、例えば獲りに行こうとしてちょっとズレちゃうっていう問題が発生して、「どうしようもない」って言われて、「はっ!?」みたいな感じで。

宇都宮:レーザー認識なんですか?

菱木:そうです。赤外線レーザーみたいな感じですね。

三木:「どうしようもない」って言われて「はっ!?」って言って、次はそれで?

菱木:その時にこのソフトウエアの認識ができる人材が必要だと思ってたので、Wantedlyで募集をかけてたんです。

宇都宮:エンジニアを?

菱木:エンジニアを。たまたま連絡してきてくれた子が、なかなかの経歴で!大学院に行ったり行かなかったりしつつ、でも自分のやりたい研究をやっているタイプで、まだ社会人経験がないのでこちらもうまく評価ができず戸惑っていましたが、「僕できると思います」みたいなことを言うので…

宇都宮:面接したんですか?

菱木:面接はしました。こっちも実績とか全然ないし未知数で、でも今困ってるアプリケーションがあるので、まだダメだって結論が出る前だったので、そこでもやってもらいながらこっちでももう1個やろうっていうので彼に最初バイトみたいな感じで発注して、こっちできないってなった後にこいつのでやったら獲れたんですよ。

三木:すごい(笑)。

宇都宮:天才じゃないですか(笑)。

 菱木:「何だったんだろう、あの500万は」って本当思ったんですけど、彼がつくったやつだとできるみたいになって不思議でした。

三木:それが今のベースになってるんですか?

菱木:そうですね。一番最初のベースですね。

三木:その後今度ロボット本体のほうに?

菱木:リサーチたくさんして分かったことは、車体の自立走行の部分はそんなに難しい技術じゃないっていうこともよく分かったんです。すでにある技術で、次に難しいところでいくと掴む部分、このロボットアームの部分で…

三木:大田区でやったんだっけ?

菱木:ここは一番最初は東工大の先生で色々なロボットアームをやってる先生がいらっしゃって、その先生とタッグを組んでそこの研究室とやるっていう形で最終的には共同研究みたいな形で「こんな感じの設計でやろう」っていうのを固めていって、発注は大田区の工場に発注した形で、次はまず動かなくてもいいからちゃんと認識してアームが獲りに行くっていうところまでをまずは実装しようっていうことを最初やりました。

三木:その後で1回見せていただいたのはもう少し時間が経ってデザインのお話の時に。

菱木:そうですね。たぶんその時はまだ車体もない時じゃないですか。腕ができたぐらいの時だと思います。

三木:そこまでの開発期間ってスタートしてからどれぐらいですか?

菱木:一番最初のプロダクト、認識して腕だけっていうのができたのが2017年6月で、スタートしたのは2015年の7月なのでそこまで2年かかったんです。

三木:2年か。それぐらいかかるよね。

菱木:でもお金あったら全然違いましたね。お金もなくて最初のリサーチが時間かかった感じです。そこからだいぶこの2年でまた変わりました。

三木:研究室と組むといっても、一応研究室にもお支払いしないといけないでしょ?共同研究費みたいな。

菱木:そうです。そこら辺もちょこちょこお金を集めつつっていう感じです。

三木:その辺は全部エンジェル資金というか…

菱木:そうです。個人で借り入れみたいなのもしてますけどね。今でも。

三木:それは何人体制ぐらいでやってたんですか?2年ぐらいまでは。

菱木:2年目ぐらいまではずっと2人ですね。

宇都宮:その職歴のない方?

菱木:違います。共同代表で2人で創業してるので、今のエンジニアのやつが出てきたのが2018年の頭ぐらいなんです。そいつが初めての新入社員になるんですけど、それでも雇ったのが2018年の7月とかなので、3年間は2人(笑)。

宇都宮:僕ら10年2人(笑)。

菱木:この事業やる前からだからもう5年ぐらいになるんですけど、それが2018年の7月に1人目雇ったのが1年で今度20人ですから。

宇都宮:すごいですね。20倍。じゃあ来年400人?

菱木:ねぇ(笑)。

三木:ブレイクスルーは何だったんですか?やっぱりこれ(SmartHR賞)?

菱木:いや、これもこれで大きいんですけど、ICC優勝したのも。でもプロダクトですから、さっきの段階のやつって認識して腕だけで獲りに行くだけだったのが、今度ちゃんと動いて車体がついて勝手に自立走行しながら認識して獲るっていうところまでが、PoCの段階でちゃんと回せるようになったっていうのが大きかったです。

三木:それを持って色々プレゼンに行けるようになったんですね?

菱木:そうですね。そうするとこれは動きそうだな感が伝わるじゃないですか。そこまで1歩いけたかなっていうのが大きかったと思います。

 

●農業用ロボット開発の資金難と苦労話

 三木:ほぼ2年、売上がないわけでしょ?その2年間。

菱木:そうです。

三木:その間は何か別の事業とかエンジェル同士とかで回しながらみたいな?

菱木:そうですね。でも別の事業って言っても、僕元々不動産の投資のコンサルをやってたので、たまにその仕事をちょっとやるぐらいで、お金はほんときつかったですね。身の回りのもの全部なくなりました。漫画から何から家にあるもの全部なくなりました。

宇都宮:売り払って換金して?

菱木:はい。たまに講演をするのでネタにしてるんですけど、通帳残高去年の3月800円で去年の6月300円とかなんですよ。より下がってるみたいな(笑)。ほんとにやばかったですね。

三木:結婚してる?

菱木:してるし、家賃もあるし。

三木:結婚したのはいつでしたっけ?

菱木:結婚したのは一昨年の9月です。

三木:色々と奥さんからクレームとか?

菱木:いや、一切言ってなかったです。言っても不安とか心配になるだけなので、一切言ってなかったですね。

宇都宮:表情とかには出なかったんですか?

菱木:どうなんですかね?今調子悪いんだろうなみたいなのはあったと思います。やたら家にいるなみたいな(笑)。外に出るお金もないみたいな(笑)。

三木:結構去年ギリギリだったんですね。

菱木:ずっとその状態でしたよ。たまに働くとポンとお金が入ってくるので、そうするとちょっとどこか行ったりもできたんですけど、結構ギリギリの綱渡りをずっとしてました。今でもそうですけど。

宇都宮:精神状態はどうなんですか?菱木さんご自身の。調えるとかそういうことはしないんですか?

菱木:僕も結構瞑想とか、ずっとヴィパッサナーとかやってるんですけど、それを凌駕してくるんですよね。ほんとにお金がないってなると。

宇都宮:瞑想は凌駕する?

三木:もちろん凌駕します。

菱木:例えば歩いてて大学生の奴らがいたりすると、全財産が300円とかだと「こいつらより俺のほうが金ねえんだよな」みたいなそっちが先にいっちゃうんですよ。「はぁ…辛い…」みたいな、いくら瞑想して何も考えないようにお腹の動きだけに意識を集中してってその時はそうなんですけど、歩き出して「今日も飲み会誘われたけど忙しいって言って断ったけど本当はお金がないだけなんだ」みたいな、そうなると「はぁ…」ってなりますよね。だから早く世の中が、やりたいことを躊躇なくやれる、クリエイティブな社会を創りたいなと思ってます。

三木:そうだね。でもよく乗り切れましたね。

菱木:ほんと危なかったです。よく「いくらでも佐川急便とかで働けばいい」とかって言う人いるんですけど、たぶん頼ったらいくらでもあったと思うんですけど、そっちに流れちゃうなって…

宇都宮:戻って来れないなって…

菱木:戻って来れないとか、それするんだったらとにかく本を読んで勉強するとか、農家さんのとこ行くとか、事業にフルコミット常にしてないと目の前の15万とか生活費を稼ぐために時間使っちゃうと思って、ダメだと思ってそこは粘りました。

宇都宮:でも独身で若い人だとまた何となくフルコミットできそうな、ご家庭があってその決断をするっていうのはすごい。できないって思う人のほうが多い気がするじゃないですか。

菱木:でもよくある話ですけど、やらなかったら後悔するなっていうのが一番ですね。10年後とか15年後とかにそうなってる世界が当たり前だっていうのは確信めいて、ちょっとでもアクセルが緩んでそうじゃない方向に時間を使ったりして後から抜かされたりとか、自分がその立場にすらいられなかったとか、プレイヤーですらなくなった時の後悔する絵も十分見えてたので、そこは粘れた感じがあると思います。

宇都宮:すごい心は揺れ動きますからね。

菱木:揺れ動きます。「何で俺こんなに苦しんでるんだろう。やらなきゃいけないんだろう」みたいなのはあります。

三木:色々深いですね。

菱木:深いのかな(笑)。

後編に続きます。

菱木豊さん
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Inaho株式会社サイト
https://inaho.co/

 

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