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第180回MMS(2019/5/10収録)「人類学を学び世界中がつながる未来を志す」前編 教育人類学者 井本ゆきさん

●ご挨拶と出演者紹介

 三木:マインドフルマニュファクチャリングストリーミング第180回本日も始まりました。本日はZen2.0で色々お世話になった逗子の井本さんにお越しいただきまして、井本さんの色んな活動とか研究されてることを伺っていきたいと思います。本日はありがとうございます。

井本:ありがとうございます。

 

●三木さんとの出会いについて

三木:井本さんと私はこの番組にも出ていただいたスタンフォード大学の重松先生の本の出版パーティでお会いしたんです。その時にこれからスタンフォードに行って1年間研究するという話をされていて、次にサンフランシスコのWisdom2.0(世界最大のマインドフルネス関連国際カンファレンス)でまたお会いして、その時は重松先生のラボにいたんでしたっけ?

井本:そうですね。2017年から。

三木:ちなみにどんなことを研究していたんですか?

井本:重松先生は『スタンフォード大学マインドフルネス教室』っていう本を2015年に出版されてますが、それを読んで重松先生の教育のアプローチにすごく関心を持ったので、実際に1年間留学期間中スタンフォードの重松先生の授業に参加して、自分も学生の身になってマインドフルネス教育とはどういうものなのかを体験的に学んできました。

 

●井本さんの経歴について

 三木:井本さんはその前にどういったことに興味を持って色々活動を…特に教育なんですよね?

井本:教育人類学が専門で多文化教育とか外国の教育とか、私自身帰国子女で色んな国の教育を受けてきたので、移動する人々とか越境する人にとっての教育とは何なのかをテーマにずっと研究しています。

三木:もうずっと海外にいたんですよね?ヨーロッパが主でしたっけ?

井本:ヨーロッパ、イギリスが長いですね。

三木:何歳ぐらいから?

井本:生まれたのはシンガポールで、その後幼稚園が日本で小中がイギリスで高校大学が日本で、またイギリスに行ってその後色々グルグルしていて、今は逗子です。

三木:自分としてはナショナリティっていうのはどういう感じなんですか?日本人?

井本:ナショナリティは海外が長かったからこそ日本人とは何かとか日本文化とは何かということにすごい関心があって、大学院でも専攻は教育人類学で日本について知りたいっていうのがあって、日本の教育について勉強していました。

三木:ヨーロッパとか他の国にいると日本のことを聞かれるのが多いんですか?「日本の歴史とかってどうなの?」みたいな。

井本:聞かれることも多いし、自分は常にみんなと違うマイノリティなので。

三木:そういう違いを感じながらここの中にいるという感じですか?

井本:そうですね。いつも端っこで見てる感じで、だから人類学がすごい性に合うんです。

三木:そういうことなんですね。いつもクラスの中でもあまり…

井本:中心ではないです。

三木:一応会話とかあるけど少し外れて見ているみたいな。

井本:そういう立ち位置が心地よくなりました。そういう育ちのおかげで。

三木:それで人類学というところに目覚めて?

井本:はい。人類学はまさに“ボーダー”という何かと何かの狭間にいる人達がする学問だったり生き方なのですごい自分には合うなと思って。重松先生もそういう狭間を生きてきた方なので、そこでもすごく共感できて。

三木:さっきおっしゃってた教育学と人類学を合わせたカテゴリーがあるんですね。それはどういうアプローチというか実際にそういう場に自分が参加していくんですか?

井本:人類学なので体験が一番重要なんです。だからいかにその場のコミュニティに入り込んでそこの一員になりきって、同じ体験をしてそれを言葉にできるかっていうのが人類学の肝だと思って、教育以外のある部族の研究をする人とかもいるんですが、私は現代社会の教育っていう現場に入り込んでその内側の視点を獲得してそこから学ぶことをやっています。

三木:すごい面白かったのは、アメリカのフィールドワークの発表の場に行ったんですが、すごい入り込んでるなと思いつつ、ちゃんと冷静にそれを分析して言葉にしていくっていう。普通の人間だったらその中にどっぷり入っちゃったら客観的に見れないけど、さすが研究者の目線なんだなって。でもかなり楽しんでた風でもありますよね。

井本:そうですね。私は結構入り込んじゃうタイプなので、一生懸命研究してるんだって自分にリマインドしないとっていうのはあります。

 

●スタンフォード大学での研究について

 三木:アメリカでの研究はどういうコミュニティに入って行ったんですか?

井本:アメリカでは色んなコミュニティに入って行ったんですが、もちろん1つはスタンフォードの重松先生の授業を受けている学生達のコミュニティで、それ以外にもより広くスタンフォードのベイエリアの文化を知るためにベイエリアの色んな若者のコミュニティに入って行って、一緒に生活したりとか一緒に瞑想会に行ったりとかして仲良くなってきました。

三木:僕もWisdom2.0に行くたびに周りの禅センターに行ったりとかして、かなり日本のお寺とは違うし来てる人達も若い人が多いなと思っていて、1回グリーンガルチファーム禅センターに行った時に、ほとんど20代ぐらいの若者達と一緒に座って、日本の日曜座禅会とか円覚寺に行くと、みんな僕より年上でだいたい60、70代ぐらいで、それがまずカルチャーショックだったし、あと座禅が終わった後のQ&Aセッションも、人種差別のこととか環境問題とか老師と対話しているのがすごいラジカルというか、日本の老師との対話ではなかなかそういうのは…文化が違うから一概には言えないんですけど…、個人的なことは結構多いんだけど、そこがある種開かれたお寺という感じはしていて、かつグリーンガルチの一番位の高い老師様は黒人の女性ですごいなっていうか、周りに色んな人種の方がいらっしゃって対話をしている。その方をZen2.0にもお呼びしたいなと思って何回かアプローチしているんですが、毎回スケジュールが合わなくて、今年も残念ながら。

井本:そうなんですね。

三木:多様な文化が禅のレイヤーだけでもサンフランシスコ周りにあるなと。僕が知ってるのは禅センターのレイヤーしか知らないんですが、他はどういうところに入って行った感じですか?

井本:私も禅センターの他にシェアハウスみたいなインテンショナル・コミュニティに住んでたので、そういうシェアハウス自体も瞑想の場になっていることが多くて、そういうところでまず瞑想してその後何か対話する、それこそ社会問題について話し合ったりとか、誰かの研究について聞いてそれについてディスカッションするとか…

三木:割とそういうのってバークレーの周りが多いんですか?

井本:はい。バークレー、オークランド、サンフランシスコは多いです。

三木:僕もバークレーの近くの本屋さんに入ったら仏教の本がいっぱいあってびっくりしたんですが、仏教学が盛んなんですね。

井本:盛んですね。もちろんそこはカウンターカルチャーの発祥の場所なので、今の20代ぐらいのミレニアル世代の人はヒッピー文化っていうのに憧れというか回帰があって、瞑想したりコミューンみたいな形で暮らしたりとかしてるんだと思うんですが、ベイエリアはすごくオープンだしコミュニティに入りやすいです。

三木:ふらっと行って住んでいいみたいな感じでいけるんですか?

 井本:そうですね。色んな人がいるし、ホームレスの率がすごい高いので、自分の家を持たずに友達の家を転々として暮らす若者とかも多いです。だからそういう人が出たり入ったりみたいな感じで暮らしてました。アメリカはすごく個人主義っていうイメージがあるので、そういう共同生活をすることに皆さん抵抗があるんじゃないかとか思ったんですが、ああいう経済状況ですから、もう助け合わないと経済的にサバイブできない。

三木:ああいう経済状態っていうのは貧富の差が激しいっていうことですか?

井本:貧富の差が激しくて物価も高くて1人で部屋を借りて住むっていうのができないので、みんなでシェアしないと家に住めないっていう状況です。

三木:みんなシリコンバレーと言うとものすごいリッチな人がいっぱいいるっていう、経済も良く回ってるからそんなにホームレスの人とかいないってたぶん日本人の多くの人はそういうイメージだと思うんですが、実際結構いらっしゃる。

井本:そうですね。マインドフルネスも限られた裕福な人だけのためのマインドフルネスではなくて、そういうホームレスの人も含め精神的に苦しい状況にある人達のためのマインドフルネスっていうのが今ベイエリアではすごく注目されてるし、より開かれた、人種だけじゃなくてそういう階層とか経済状況の…

三木:重松先生もおっしゃってたんですが、そういう競争が激しいスタンフォードとかシリコンバレーだから逆にマインドフルネスが非常に流行っているという側面もありますよね。日本はそこまでではないから爆発的に広まってない。日本とアメリカの違いはそこなのかなと。

井本:そうですね。日本では広まってないですかね?

三木:言葉としては知ってる人も増えてるけど、実際に「毎日プラクティスしてます」みたいなのはあまり多くない。僕らの周りはたまたまそういう人が多いんですが、この間もある若い経営者が集まるところに行って、「この中で瞑想している人?」って言ったら100人で2人ぐらいで、1人はお坊さんだったので(笑)。マインドフルネスとは何かっていう話をそこでしたんですが、まだそういう世界ってすごいマッチョな世界なので、地方の青年経営者が集まるところってなかなかいらっしゃらないです。でも自然が豊かなところなのでそんなにみんな疲弊してる感じはないので、必要もあんまりないのかもしれないです。まだまだ日本ではそんなに市民権を得てないのかなという感じはあります。

井本:そうですね。これから広まるといいなとすごい思います。

三木:僕もそうです。

 

●マインドフルネス・シアターワークについて

三木:この間シアターワークのワークショップで井本さんがやってらっしゃるのに参加したんですが、とても新鮮な体験で良かったです。僕もちょっとだけ演劇をかじったことがあって。

井本:そうなんですか?

三木:インプロビゼーションをやってたんですが、それとは全然違う感じだったので、内観と組み合わせるのがとても良くて、実際にスタンフォードの学生が来て同じワークショップをやったと思うんですが、すごいそれも評価が高くて。

井本:ありがとうございます。

宇都宮:シアターワークって何なんですか?

井本:ぜひ体験していただきたいんですが、なかなか言葉にするのが難しいんです。

宇都宮:シアターって劇場のシアターですか?

井本:シアター、演劇を手法とした心と体のワークなんです。

宇都宮:演じるんですか?

井本:そうですね。でも何か役を演じるではなくて…

三木:状況も特に設定してないですが、心のままに何か声を出してみましょうみたいな。

宇都宮:普段と何か違うんですか?

井本:「日常全てをシアターと捉えましょう」っていうことをシアターワークの専門家の小木戸(利光)さんはおっしゃってますが、シアターワークの場合は普段よりももっと自分の心の声に寄り添って、自分が本当に声に出したいこととか、本来の自分の声とか体の動きとかに戻っていくようなプロセスです。

 三木:まず瞑想をやって内観をやって、それに基づいたシアターと3段階なんですが、瞑想でも結構体と心もほぐれるんですが、さらに内観っていうワークをやると本来自分は重要だなと思ってたことをもう1回思い出したりとか、特に母親に関するワークなので、「お母さんごめんなさい」みたいになり…

井本:三木さんあの時大変でしたね(笑)。

三木:それで3日後にお母さんに会いに行きました。花束を持って。

宇都宮:悪いことがあったんですか?

三木:いやいや。あまりにも母親に会ってなかったので、それでとても涙が出てきて。母もすごい喜んでたのでとても良かった。ある種の安全な場づくりでセットされてるので、そうすると自分をより出せる。ほとんど初めて会ったような人が多いので、なかなかそういうのは安全が担保されないんですが、そのワークの中でそういう雰囲気、場を作ってやると本来の自分を出せるみたいな。とても素晴らしかったです。3人でやってらっしゃいますよね?

井本:はい。私と内観療法がご専門の手塚千鶴子さんとシアターワークがご専門の小木戸利光さんと3人で、Contemplative Learning Network(CLN)って名前を付けて最近各地で内観×シアターワークのワークショップをやっています。

三木:どういうことがきっかけでそういうのをやろうみたいな?

井本:手塚さんとは私はもう10年ぐらい前から一緒に三田の家っていうコミュニティスペースの運営に関わっていて、そこで手塚先生が内観ワークをしてくださってたんです。私も自分の授業にも取り入れたりしてたんですが、2年前ぐらいに小木戸さんのシアターワークにたまたま出会って、私はシアターワークも素晴らしいし、それを内観とくっつけたらより深いものが出てくるんじゃないかなっていうことで、それを大学の中でやったり逗子でやったりして、今プログラムをさらに有効的なものにしていこうとしてるんです。

三木:今の大学の中でそれを広めようっていうのはどういう目的で?何か教育の中で少し足りない部分を補おうと思ってそれをやられようとしてると思うんですが、どういうところがゴールというか…

井本:たくさんあるんですが、大学教育って机があって教師が前に立ってひたすら話して、それを学生がこうやって聞いてるみたいな場の設定があり、割と一方的な知識の伝授が大学教育の典型だと思うんですが、私はそれは常に壊したいなっていう欲求があったんです。アクティブラーニングとかディスカッションベースのラーニングをやってたんですが、ただ議論するんじゃなくて体と心での対話を教室という場でやりたいと思うようになって。それにはどういう仕掛けが必要なんだろうって思った時に、まず重松先生のところから学んだマインドフルネスを教室に取り入れるっていう方法と、あと手塚先生から学んだ内観(リフレクション)を教室でやることによってよりパーソナルな話ができるような環境を作っていくということと、あとは小木戸さんから今学んでいるもっと体を動かして体で感じ合ってお互いのエネルギーのやり取りをしてそれで対話をするっていう、色んな方法で心と体を含んだ大学教育、排除しない大学教育っていうのを模索してて。

三木:とても重要なことだと思います。

後編に続きます。

井本ゆきさん
https//www.facebook.com/yuki.imoto.73

 

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