
第172回MMS(2018/10/24収録)「モビリティを通じて次世代に夢を提供するため、空飛ぶクルマの開発に情熱を傾ける」前編 ㈱SkyDrive 福澤知浩さん
●ご挨拶と出演者紹介
三木:マイクロモノづくりストリーミング第172回、本日はシンガポールのSkyDriveのオフィスからお送りしております。というのは冗談で、早稲田にあります非常に眺めの良い株式会社SkyDriveのオフィスから福澤さんと共にお送りしております。
福澤:よろしくお願いします。
●enmonoとの出会いとクラウドファンディングについて
三木:福澤さんと我々の出会いはどういう出会いでしたっけ?
宇都宮:クラウドファンディングの時?2014年末?
福澤:そうですね。4年前ぐらいの12月。
宇都宮:その頃はまだ前の会社にいらっしゃったんですよね?
福澤:トヨタ自動車におりまして、サラリーマンライフを満喫してたんです。
三木:中村(翼)さん(https://zenmono.jp/story/336)という方とお話をして、COO的な立場の福澤さんという方が出ていらっしゃって。
宇都宮:福澤さんはどうやって関わったんですか?
福澤:CARTIVATOR空飛ぶクルマの活動は2013年の頭から関わってまして、最初の1年間は何かモビリティを作ろうとひたすら考えて。
宇都宮:最初は何の団体なんですか?
福澤:CARTIVATORってそもそもCARとCULTIVATORの合体技で、CARは車でCULTIVATORは開拓なんです。車がつまらなくて面白くないというかイノベーションが起きないから、何か面白くて画期的な車、モビリティを作ろうというのでCARTIVATORだったんです。「じゃあ何作るの?」という話になって、過去に作られた色んなモノを研究したり、プロジェクトリーダーの話を聞くと「最初はやっぱり合宿だ」と。「合宿でどんなモノを作るのか、自分達は何を作りたいのか、どんな世界を作りたいのかをとことん議論して、その中で出てきたモノこそ意味があるんだ。目先のモノに飛びつくな」という話がありまして、その時トヨタ自動車の当時専務の方から「人はなぜ移動するのか?」という問いを投げかけられて、「人はなぜ移動するか?」だけで1泊2日の合宿をやったりとか1年間ぐらい色々やって。
宇都宮:その時合宿とかは何人ぐらい?
福澤:だいたい合宿に参加したのは10名弱ぐらいです。毎回必ず同じメンバーじゃないんですが、そのいる10数名の中でたまたま来れる人が集まったりして。
宇都宮:どういう関わりの人達なんですか?同じトヨタの方とか?
福澤:愛知県豊田市付近に住んでいる人達がメインだったんですが、大阪のパナソニックさんとか、たまたま会って仲良くなった友達ベースです。どこからCARTIVATORでどこからCARTIVATORじゃないとかそんな明確な区分もないですし、興味がある人達で集まってゆるい感じでやってたんです。
宇都宮:バックボーンも色々なんですか?
福澤:エンジニアもいるしマーケティング系もいるし外国の方もいるし、それで1年間考えた結果「空飛ぶクルマだ!」となったので。2014年の3月ぐらいに決めて「何かをどこかで出そう」となって、メイカーフェアというのが3ヶ月後ぐらいだったので「そこまでに作ろう」となってガガガガッと5分の1サイズを作ったと。
宇都宮:そうなんですか?あの5分の1サイズはそんな…
福澤:たぶん作ったのは3、4ヵ月です。最初は飛ぶのもヨタヨタで、ドローンが普及する前だったので「ドローンよりは安定しないね」って言われながら5分の1を飛ばしてたのがその夏か秋ぐらいだったんです。12月の冬になって僕がクラウドファンディングの話を聞いて「これは絶対やるべきだ。金がないと進まん」と言ってみんなも同意してスタートだったんです。僕が「クラウドファンディングをやります」という感じで割とリードして作っていった時にお2人とお会いしたのが最初になります。
三木:それって何で我々を選んでいただいたんですか?
福澤:それはお2人から提案があったのからクラウドファンディングを知って、「何だろう?」と検索していったら色々あったんですけど、取りあえずクラウドファンディングでお金を集めるだけじゃなくて、マーケティングが目的でお金はたいして集まらないだろうと思ったので、ハンズオンで色々お手伝いいだだけるのは我々はノウハウがないので大変ありがたいなと思ったのと、あとはモノづくり専門のクラウドファンディングだというので見てみたら、我々っぽい突拍子ない系が色々あってお金が集まってるので、「これならイケるだろう」と思ってスタートさせていただきました。
宇都宮:中村さんの大学の先輩で愛知県の町工場の方がいらっしゃって、三木さんの講演を聞いたきっかけでコンタクトを…「こういう後輩がいるんだけど」みたいな。
福澤:中村さんから「こんなのあるけどどう?」って言われて「でも大変だよね。本当に意味あんの?」となったんですけど、「やるべきだ」と。
三木:中村さんは割とビジョンタイプで福澤さんはCOO、実務タイプで、1回Skypeで話したら対価設定仕様書がめちゃくちゃ細かいんですよ。
福澤:そうなんですか?
宇都宮:出来が良かったんです。僕の目から見ても。
三木:これはすごい人が出てきたなと。
福澤:クラウドファンディングをやって普通はお金を集めて何かを作るじゃないですか。我々の場合何かを作って提供できないので、「乗せてあげる」とか言えないので、結局返すものってシールとかありがとうの気持ちとかで、結局その残ったお金で我々の資金になるわけだから、残ったお金があまりなかったらいくら200万を集めても意味がないので、そこをきちんと計算して「残らない限りはやる意味がないね」という話だと思ってたので。
宇都宮:さすが購買。
三木:すごい購買っぽい感じだったので、「何をやってるんですか?」って言ったら「購買」って言って「あ、やっぱりそうなんだ」みたいな。トヨタ式購買ね。
福澤:おかげさまで204人の方にご支援いただきまして、でも発送作業も大変でしたよ。5人ぐらいで僕の寮の部屋に送るモノと封筒で山積みになっちゃって、それをみんなで手分けして入れてシール貼って出すという。
宇都宮:簡単に考えすぎですよね。クラウドファンディングを。
福澤:そうですね。工数見積もやったんですけど結構工数かかるんですよ。ただこのマーケティング効果を考えた時に地道にやるよりはよっぽどメディアに取り上げられる可能性があるという一点が…
宇都宮:あの当時はまだクラウドファンディング自体が始まった頃ですよね。今誰も彼もクラウドファンディングだから。
福澤:そうなんです。あとzenmonoさんの1つの特徴としてはお金だけじゃなくて仲間も集めれるという話が良かったです。
三木:仲間は?
宇都宮:エンジニアさんとか集まりましたよね。
福澤:そういう方も来ましたし、クラウドファンディングの時に途中で車いすに乗られてる平野功さんという方が「私空飛ぶ車いす(Flying Chair)作ってます」という感じで来ていただいて。その報道か何かで知っていただいたと思うんですけど。本当は僕達1分の1サイズの試作機を作ろうと思ったんです。「その作るお金が数百万は絶対いるよね、何なら200万じゃ足りないよね」と思ってたんですが、その空飛ぶ車いすを作ってる方が「もう機体ありますよ」と言っていただいて、その方も数百万投資して作ってたんですけど、その機体が一緒にやれることになったのがさらにありがたくて。
宇都宮:ノウハウもおありですもんね。
福澤:そうなんです。我々のお金でそこのモーターとかを替えたりとかそういうお金に使ったっていうところがあったりして、その時点でレバレッジというか大変ありがたい…
三木:すごいじゃないですか、zenmono!
福澤:想像できない未来を引き連れていただけるという。でもクラウドファンディングも実際は8割ぐらいは自分達の友達か友達の友達という感じだったので、必死にマーケティングをやって、それによって僕達の周りの人達がこんな活動をやっているというのを知って、そこからまた少しずつ広がっていくというのが始まったのが良かったです。
●福澤さんの自己紹介
三木:福澤さんの子供の頃の話を聞いてもいいですか?どんな感じの少年だったでしょうか?
福澤:1つはモノづくり好きなので、ミニ四駆とかラジコンとかに相当ハマって、ゲームというよりはモノ、動かす系、動く系。仕組みを知るのが好きなんです。小学校4年の時にモーターの仕組みを知ってめちゃめちゃ感動したんです。
宇都宮:電気のほうも興味はあったんですか?
福澤:回路図とか僕はそんなに詳しくないんですが、ただすごく興味はあって。将来僕の夢の1つは車がどうやってできるかというサプライチェーン全体を紐解くような博物館を作りたいなと思って。車って2万点あって部品1つ1つの工場があって、そこで1つ1つの創意工夫と想いみたいなのが沸々と出来上がって…
宇都宮:ちょうど調達部だとサプライチェーンの…
福澤:そうなんです。色んな会社さんに行ったらどこでも感動のモノづくりがあるわけです。そんなのを何も知らずに「200万高いな」って言って車乗っても安いわけです。何百万人の想いを乗せてこの車は走ってるというのを僕は調達にいて感じて、モノづくりは半端ないなと思ったんですが、幼い頃からそういうモノづくりの仕組みとか想いとかがすごい好きだなと思って。
三木:それで中高も延々とエンジニア系?
福澤:そうですね。半分はエンジニア系で、もう半分は屋外に遊びに行く系が好きだった。
三木:どんなところに?
福澤:シンプルにキャンプとか海とかアウトドア系、自然と戯れる系が好きだったので、昔から父親にドライブで奥多摩とかに連れられてニジマス釣るとかが多かったので、そういう関係で自然も好きだしモノも好きだし、まさにzenmonoさんと同じじゃないかという感じ。
三木:そういう少年時代を経て大学に入られると思うんですけど、その時の選んだ学部は?
福澤:工学部でその時迷ったんです。元々プロジェクトXが好きで出たいというか出るような仕事をやりたいと思ったんです。感動系で人々の生活をアッと変えるようなモノづくりで、だいたい20年間不屈の日々でもうダメだとか部署が廃止されるとかお金が続かないとか自殺寸前とか事故で人が死ぬとかあってからの復活なんです。そこまでいくリードタイムが長すぎて、ちょっと僕が耐えられるのかという話があって、ただそれを高校の時に進路選択で理系か文系かの時にリクルートの人に相談したら「理系から文系は行きやすいけど文系から理系は行きにくい」と言われたので、理系を選択して工学部に行って研究をやったんです。
三木:どんな研究を?
福澤:ロボットが人と将来すれ違う時に、いかに人と自然にすれ違うかという研究をやったんです。あ、あ、あっとならずに、人と人って割と普段はスムーズに人がこっちに行くんだろうなって無意識に思ってこっちに行くんですが、ロボットにそれを覚えさせて無意識にあまり意識せずにすれ違えたというアルゴリズムを搭載して実際にすれ違うという研究をやりました。
宇都宮:無意識をアルゴリズム化するってすごい難易度が高いじゃないですか。
福澤:そうなんです。実際は無意識のところを読み取るわけじゃなくて動作を見て、何らかの足の向きとか歩幅間隔で右か左かを推定してこっちに行くか、もしくは気づいてないから自分が避けようかというすごい簡単なアルゴリズムを入れて走らせたんです。
三木:それをバーチャル空間で再現した?
福澤:もちろんリアルでやって、実際にそれを搭載しない時と搭載した時でどのぐらいスムーズにすれ違うのが変わるかというのを検証してやるという実験を卒業研究でやってたんですが、プログラムのエラーがどこにあるか分からないとそれを探すのはキツイな、これが10年間続くと思うのとキツイなとだいぶ拡大解釈してしまって。僕はその時にいわゆるプロジェクト系もやってたんです。合宿を企画するとかイベントを企画するとかやってたりしてて、そっち系のほうが自分のコアスキルに近いんじゃないかなと思って、モノづくり系なんだけど事務系というところで文転就職したっていう流れなんです。
三木:珍しいね。色々拡大解釈するんですね。
福澤:入って分かったのは、別に技術者だからといって10年間耐えるわけじゃなくて意外と目先のプロジェクトを回していくのも多いから違ったんだなって気づいたんですけど、それは社会人になるまで分からないです。
三木:それでトヨタ自動車に入りました。
福澤:そうなんです。その中でも最初はマーケティング系をやろうと思ったんですが、調達が営業もあるしモノづくりもあるし経営管理もあるしトータルカバーしてて、しかも結局車って原価の7割は購入品だというのに気づいて、「あ、楽しそう」って思ってミーハー心で調達に入って。
三木:なかなか珍しいですね。調達に行きたい人ってあまりいないんですけど。
福澤:でも調達の人ってプレゼンが上手いんです。だからミーハーの人達が割とそのプレゼンを聞いた後に「調達!」って。
宇都宮:実際調達に入ると外注管理じゃないですか。外注先に出向いてとか?
福澤:最初の3年間とか特に調達部の中でもかなり異色なモノづくり系のオフィスに行って、外注さんと一緒に工程を改善したり設計を変えていったりゴリゴリ回していくといういわゆる改善系、調達の中のTPSの部署に入ったんです。
三木:そこでの体験はどうでした?
福澤:もうめっちゃ楽しかったです。調達の中ではそこの部署は浮いてたんですけど、僕は浮いてる人間なのでちょうど良かったんです。その後サラリーマン系のこっちに入った時に僕がサラリーマンに向いてないなというのに気づいたと(笑)。
三木:そうなんですか(笑)。それで何年ぐらい勤められたんですか?
福澤:7年おりました。
●大企業から起業したきっかけ
三木:7年間勤められて起業されるんですが、そのきっかけは何かあったんですか?
福澤:きっかけは僕元々サラリーマンになるのが夢だったんです。
三木:えっ?サラリーマンになるのが夢だった?
福澤:父親がサラリーマンを楽しそうにやってたんです。絶対サラリーマンになろうと思って昔から「夢ないね」って小学校の時からみんなに言われてたんです。サラリーマンになる直前の大学生ぐらいの時に全然関係ない自由な人と少しずつ出会い始めて、「社長をやっています」「何やってるんですか?」「何でもやっています」「いくつか経営しています」「好きなことやっています」とかそういう浮ついた人達と出会い始めて、最初はそれは自分と関係ない感じだったんですが、空飛ぶクルマの話もあって、そうすると結局ベンチャー系の人に会ったりするので、段々そういうヤバい人達が周りに増えてきて、しかも圧倒的に優れてるっていう感じじゃない人もやってたりするので、「あなた達ができるなら僕もできるんじゃないの」って思ったりとか…
宇都宮:拡大解釈ですね。
福澤:「何で僕はそもそも今サラリーマンのところにいるんだっけ?こっちの人間じゃなかったっけ?」って段々自分の心がこっちに行ってきて、体だけがこっちにいるみたいになってきて、早くこっちに来なきゃって思うようになったんです。僕もサラリーマンになったんですけど、自由人みたいなのが少しずつ増えてきて、徐々に「何で僕こっちじゃないんだっけ?」って思ってきて気づいたら抜けてたっていう流れです。
宇都宮:それで福澤商店は去年でしたっけ?
福澤:去年の1月に立ち上げまして。
宇都宮:(福澤商店に)なってすぐco-baでお会いしたんだ?
三木:「zenschoolどう?」って言って。
福澤:ちょっと高いなと思いつつ、とはいえ人生のためならばそんなの値段は関係ないだろうと。
三木:それで入られたわけなんです。
宇都宮:18期生で。
福澤:そうです。
●zenschoolを受講した後の変化
宇都宮:(zenschoolは)いかがでしたでしょうか?
福澤:zenschoolの良い点でもあり悪い点でもあるのが、結局何に効いてるかよく分からないっていうところなんですが、zenschoolを受講する前と後で圧倒的に違うことはあるので、たぶんそれはzenschoolのせいだろうという感じです。
三木:何が違ったんですか?
福澤:何が違うかというと素直に生きれるというかありのままに。
宇都宮:それまでは素直じゃなかったんですか?
福澤:比較的そうです。営業行ったら営業取らなきゃって思ったり。今はこっちが変に勧誘しても期待値が上がっちゃうだけなので、互いにベストな感じでやるのがいいんじゃないかなっていう感じになれたんです。だから互いに素のままがベストだと思う方と一緒にやるのがいいのかなと思えるようになったり、楽な形で生きれるようになったという…
宇都宮:心地良い?
福澤:そうですね。
三木:その気持ちの変化が今回の会社(株式会社SkyDrive)設立に?
福澤:はい。今回の会社設立も色々あったんですが、あまり過度なストレスはなくて意外とスッキリとスタートしましたし、もちろん責任は増えてますが、責任が重い、眠れないみたいな話はあまりなくて、シンプルに責任が重いからきちんとやらなきゃなとなれてるのはすごい良いことだなと思います。あとzenschoolの場合は1年間のフォローアップがあって、毎月毎月面談があるんです。
三木:毎月毎月雑談してるだけなんですけど(笑)。
福澤:(笑)。あれでまた「やべぇ、何も先月から変わってない」と思ってギアが巻かれたりとか、雑談というか空気感がまたマインドセットに…
三木:空気感を思い出すわけ?
福澤:そうなんです。ああいうのが大事なので。
宇都宮:他ではあまり味わえない感じなんですか?
福澤:そうですね。だいぶ独特ですよね。うまく日本語で言えないですけど。
宇都宮:言語化してほしいです。
福澤:でも基本的には『トゥルー・イノベーション』の通りですよね。
三木:自分の本当にやりたいこと。
福澤:フローな状態でいるとか、あまり考え過ぎないとか、考えないようにしようと思っても考えちゃうし、考えても考えちゃうので、基本的に考えちゃうんです。
宇都宮:考えないようにしようというのも考えてるんです。そこが違うというか…
福澤:そうですね。
⇒後編に続きます。
福澤知浩さん
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