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第171回MMS(2018/10/8収録)「既存建築を再構築し直して生まれ変わらせるためのあらゆることを手がける」前編 ㈱建築再構企画 佐久間悠さん

●ご挨拶と出演者紹介

 三木:マイクロモノづくりストリーミング本日も始まりました。株式会社建築再構企画の佐久間さんをお訪ねして、最近非常にリノベーションとか流行っておりますが、知らないうちに建築法を超えてしまっている等々、建築にまつわる法律のコンサルティングをされているということで、これからの日本に非常に重要なお仕事をされております。そこから建築の中でも、クリエイティビティが最近色々と危惧されているところがあって、新しい再構祭(さいこうさい)というお祭り(イベント)もされているので、そのお話も合わせて伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。

佐久間:よろしくお願いします。

 

●enmonoとの出会いについて

三木:まず佐久間さんと我々の出会いなんですが、2011年ぐらいに日本コンピュータ開発という会社さんのフェイスブックセミナーに参加して。そこはどういう経緯で来られたんですか?

佐久間:日本コンピュータ開発の社員さんと、横浜であった異業種交流会で知り合いになって、「次こういうのやるので来られませんか?」とご紹介いただいて参加させていただきました。その時に一緒にお仕事をさせてもらうことに後々なった浅井製作所の浅井英夫さんは、Facebookを上手に使ってるというご紹介をされていて、こういう人達にお話を伺えたらなと思って、その後“発電会議”とかに参加させていただき今に至ります。

三木:その時佐久間さんは、フリーランスの建築士としてちょうど東京にいらしたばかりの時でしたか?

佐久間:いえ、設計事務所に2社勤めた後に、同級生と一緒にやってた仕事で大きいのがたまたま取れて、これは副業ではやっていくのはしんどいなというので独立したんですが、あまり仕事がない状況で、顔を広げる意味で色んなセミナーに参加していた時期でした。

宇都宮:その時はまだ建築再構企画じゃなかったんですか?

佐久間:ではなかったです。今のような仕事もあまりやっていなくて、どうやったら営業できるのかみたいなことを考えていました。

三木:それでフェイスブックセミナーに?

佐久間:そうです。ランチェスターを読んだり差別化みたいなことを…

三木:色々悩まれていた時期で?

佐久間:そうです。建築の設計の仕事って飛び込み営業やってもなかなかないので、どうやって営業しようかと考えてた時期ではありました。

 

●建築再構企画の紹介

 三木:今やってらっしゃるお仕事を簡単に説明していただいていいですか?

佐久間:私たちの会社は一応設計事務所ですが、違法建築とかちゃんとした手続きを取っていない建物というのが世の中にものすごく多くて、そういう建物を是正する設計を主にやっています。国土交通省が持ってる資料としては、平成10年の建物が一番古いんですが、その時にちゃんとした検査を受けてる建物は38%しかなくて、6割強の建物が何かしらダメなところを持っています。最近リノベーションとか流行ってますけど、そういうのをやろうという物件は平成10年って比較的新しい部類で、うちにも相談に来るボリュームゾーンというのが、昭和50年60年ぐらいから平成初期ぐらいの30年選手で、そろそろテコ入れしようかという物件なので、その辺になってくると体感としては、適法なものが10%を割っている感じです。。

三木:すごいですね。

佐久間:そういうのって最近コンプライアンスがうるさくなってきてるので、銀行も融資をつけにくかったり、あとは用途変更という建築基準法上の手続きがあるんですが、例えば(いま対談している)このオフィスの2階のフロア全部を、病院にするとか保育園にするとか用途を転用したいとか、あるいは増築をしたいとかいう時には手続きがいるんです。その手続きをするためには、今の建物が適法である前提で次の手続きに移れるので、その(適法なのが)10%しかないやつを変えようと思うと、当時ちゃんとしてた、あるいはこの建物は今ちゃんとしているということを、事業者の側で証明しないと次の手続きに進めないんです。そうすると構造も含めて全部正しいことを証明しないといけないので、ちゃんとこの柱の中に鉄筋が図面どおり入ってるかということを、超音波を当てて調査したりしないとできないのです。そういったご相談を受けて、コンサルティングをして次のステップに進めるようにしたり、ちゃんと適法な状態にして銀行の融資を受けられるようにしたり、それがもし必要であれば直すような設計をするという仕事をしています。

宇都宮:それは施主の方から依頼が来るんですか?

佐久間:色々ですね。例えば保育園だったら保育園を運営したいというテナントさんから、「ちょっとオーナーの建物がダメみたいなんだけど」という場合もありますし、逆にオーナーさんから「保育園を入れたいんだけどうちの建物ちょっとダメなので」という相談を受けたり色々です。

宇都宮:ダメって気づいてなんですか?

佐久間:気づいてが多いです。でも行政に持って行って「これダメだよ」と言われて肩を落としてうちに現れる方が多いです。

宇都宮:行政に行くと分かるものなんですか?

佐久間:(開業するための)手続きがあれば分かります。

宇都宮:普通は分からないということですか?

佐久間:昔は分からなかったようです。というのは行政も縦割りで、保育の人達は保育で高齢者施設の人は高齢者施設、学校は学校みたいな割と手続きも分れてたので、今はすごくそういうことが問題視されて色々批判もあったので、行政内でも情報共有を密にするようになっていて、「この建物は本当に大丈夫か?」みたいな話が建築の部局のほうに行くと、そこで「ちゃんとした手続きしていないからそういう風に言ってくれ」みたいな話が、役所内でやり取りがされるようになっていて。

宇都宮:ビジネスしてて商業施設だとそういうことが起こり得るということなんですか?

佐久間:そうですね。

宇都宮:個人はあまり関係ないんですか?

佐久間:あります。例えば両親が今地方で施設にご入居されてるということで空き家で、「これを相続しようという状況になった時にどうしようか?」みたいな、そのままだととても貸せないというやつを、シェアハウスとか旅館にしたり、今外国人が多いので用途を変えたいといった時に問題に直面することが多いです。

宇都宮:市場が広がってますね。

佐久間:既存ストック活用みたいなのを国を挙げてやろうみたいな姿勢になってきていて、かたや空き家が1,000万戸近くあるという状況なので、今ある建物を生かそうと思うと、その辺りの法律のところがネックになってくるという状況があります。

宇都宮:そういう状況って建築士さんに相談するものなんですか?

佐久間:相談先があまりなかったんだと思うんです。

宇都宮:行政に行って指摘されて、でも行政は受け止めてもらえないんですよね?

佐久間:「ちゃんとやってね」と言われて帰って来るだけなので、今まで受け皿がなかったんだと思うんです。大きなディベロッパーさんであれば、大手設計事務所とかに相談ができたと思うんですが、5階建てぐらいの建物のオーナーって、個人だったり小さい会社さんが多いので、そういう方が相談する先がたぶん全然なかったんでしょうね。

宇都宮:今佐久間さんだけ?

佐久間:同じような仕事をされている方が何人かおられます。あまり昔はそういう仕事をする人がいなかったので。

三木:僕らと最初にお会いした頃から、今のお仕事量ってどのぐらいに増えているんですか?

佐久間:物件数でいくともう10倍ぐらいにはなっています。今相談案件ベースだけでも20物件ぐらい。

三木:今ちょっと待っていただいてる感じですか?

佐久間:そうですね。

宇都宮:面倒くさそうな仕事ですよね?

佐久間:そうなんです。だから色々調べた結果「もう諦めたほうがいいです」みたいなアドバイスもあったり。

宇都宮:あるいは投資効果がないとか建て替えないととか?

佐久間:そうですね。建て替えたほうがむしろいいんじゃないかという相談もあります。

三木:新しい建て替えのお手伝いをしますみたいになったりするんですか?

佐久間:そうです。

 

●新刊書籍『事例と図でわかる建物改修・活用のための建築法規』について

三木:そんな中で培われてきた様々なノウハウを今回こちらの本、『事例と図でわかる建築法規』。

宇都宮:重版かかったそうでおめでとうございます。

佐久間:ありがとうございます。

三木:建築の法律家、佐久間さんということで、これは今AmazonのランキングでカテゴリーNo.1。

宇都宮:売れっ子作家さん。

佐久間:いえいえ。お恥ずかしい。

三木:先ほどちょっと中を見せていただいたんですが、非常に細かいノウハウがぎっしりと書かれています。さっきビールの会社の事例があったんですが、非常に広大な施設があって、そこを買い取ってクラフトビールを作るというところで、その中に巨大なビールの醸造タンクを入れるところまでのお話が書いてあって、ちょっとそこのお話を伺ってもいいですか?

佐久間:クラフトビール会社さんだったんですが、元々の工場を本社の近くにお持ちだったんですが、借地借家の状態でした。ビールを海外にもすごくこれから売っていくというお話だったので、ビールの生産量もかなり増やしていくという状況だったんです。ところがビール工場というのは、大きいステンレスのタンクがボトルネックになるようで、それを増やさないと生産量が増やせないと。借地借家で土地や建物に余裕もなかったので、せっかくなので事業用地と建物を買ってしまおうということで…

三木:すごい資金量があったんですね。銀行がガンと融資したんですか?

佐久間:だと思います。

三木:結構業績が良かったんですかね。クラフトビールでかなり今売れているビールの会社らしいんです。

佐久間:そこを買われたのが、いわゆる事務機器メーカーさんの新入社員研修の研修所の建物が建っていて、6万平米ぐらい敷地があるんですが、敷地内にテニスコートがあったりグラウンドがあったりという大きい敷地で、今ある建物を使うのか、新たに工場を別棟に建ててしまうのか、お金とか今後の運用とかも考えたところ、建物を使っていったほうがいいだろうというところで検討を始めました。

三木:話が来た時はもうすでに土地を取得された後?

佐久間:そうですね。物を取得されてっていう…

三木:普通だとまず法律とか替えられるか調べてから…

佐久間:工場を建てる予定地だったので、その辺りのところは基本的にはクリアしていて、今ある建物をどの程度使えるかというところまでは押さえられていたので、全くダメということはあり得ないという状況だったんです。ただ事業性とかその会社さんの効率だったりとか、ブランディングというところも含めてご相談に乗りました。社長はヨーロッパのビール工場なんて倉庫をリノベーションして使っている事例をたくさんご覧になられて、日本でそれができないわけがないという強い信念をお持ちだったので、それを考えると今の建物を使っていく方法を考えたほうがいいだろうなというところで進めました。ただいわゆる教室みたいな部屋がズラーっと並んでる建物だったので、ビールのタンクを入れようと思うと全然天井高が足りないんです。

三木:ぶち抜かないと?

佐久間:2階までダーッとぶち抜いて…

三木:構造上ちょっとギリギリな感じじゃないですか?

佐久間:3層の建物だったんです。2階の床をぶち抜いて3階にも既存の工場であったタンクを持ってきて入れるということをやっていって。

三木:すごい重量ですね。

佐久間:その重量を支えるためにどっちにしても柱を足さないといけないので、壁を抜いた部分を地震の力も負担する柱をザーッと並べて入れていったんです。上の荷重を受けるのと同時に地震の揺れも負担するような柱を入れていく操作をして、元々の建物よりも耐震性は高まっています。

 三木:そのプロジェクトはどれぐらい時間が?

佐久間:2年半ぐらいかかった。

三木:すごいですね。最初にお話が来たのは人づて経由で?

佐久間:そうですね。しっかりブランディングを考えられてる会社さんで、そこのデザインとかもブランディングデザイナーさんが入られていて、それが実は大学の先輩でそのツテで。

宇都宮:京都工繊?

佐久間:京都工業繊維大学で西澤明洋さんという先輩です。

三木:僕も最近COEDOビールをよくコンビニとかで見かけますけど、印象に残りますよね。非常に良い感じで。案件としては大きいじゃないですか。来た時にどういう風に思われて?

佐久間:最初何をすればいいのかもよく分からなくて、結局どういう計画にするかというのを考えるのに1年半ぐらいかかりました。一部建物を使って一部増築をして一部の建物は全く使わないみたいな最終的にそういうスタイルになったんですが、そこに持っていくのに全部新築にするところから全部建物を使うところまで極端なパターンを5パターンぐらい考えて、タンクも外置きにするという選択肢もあって、それでいくのか建物の中に入れるのか、搬入とかフォークリフトをどう動かすかみたいなのを、色々考えた結果今の形に落ち着いた。

三木:今社員の方って何人いらっしゃるんですか?

佐久間:今3名です。

三木:フル稼働で?

佐久間:実はその頃はまだ社員が1人だったんです。

三木:ご自身だけ?

佐久間:(私)と社員と2人で。

三木:2人でチクチクチクチク議論しながら?

佐久間:色んな専門家が絡んでて、ビールのタンクはドイツの専門家が来て、ベルトコンベアーの業者さんがいたり、工事の施工会社さんとか、あとタンク搬入の鳶さんに「こういうことを今考えてるんだけど可能か?」みたいなことをバーッと詰めて。

三木:こういう案件って普通は大手ゼネコンさんがされるのを、2人の事務所に任せてもらったっていう?

佐久間:そうですね。ここともう1社不動産のほうは創造系不動産の高橋さんという、再構祭の1回目で対談をした方も僕の先輩なんです。そこの不動産屋さんも結構変わってて、設計事務所出身の人しか社員として採らない不動産屋さんで、建築家と土地から相談を受けるみたいな仕事をされてる方です。その方と2人で色々と事業性とかも含めて、どうやったらいいのかみたいなところを…

三木:膨大なプランになったんですね?

佐久間:そうなんです。

宇都宮:受け持ち範囲が本来の建築家という仕事より広い?

佐久間:そうですね。本当にその物件は、自分が設計事務所としての仕事よりも、コンサルのほうをメインにやっていたので、それだけ大きい仕事をやっているのにもかかわらず、メインの建築家がいないという不思議なプロジェクトで。

三木:設計は誰がしたんですか?

佐久間:実際最終的なプランニングというのは施工業者さんがやっています。そこに対して大きな方針だけをこうやって進めていくにはどうしたらいいか、冷蔵室をどうするかとか、ロッカーをどこにやるかとか、フォークリフトをどこに置くかとか、プラス見学者も入れたいという話だったので、衛生のラインをどこで切ったらいいかとか…

三木:すごい面白いお仕事ですね。

宇都宮:完全にオーダーメイドですよね。

佐久間:オーダーメイドですね。実はゼネコンさんに持って行って1回断られたりもしていて。

三木:そういう案件なんですね。でもこの2人の事務所ならできるだろうと信頼していただいた?

佐久間:そうです。

宇都宮:佐久間さんは請け負った理由って何かあるんですか?できそうなイメージが湧いたんですか?取り組んでみたいとか。

佐久間:色々とややこしい案件をやってきたプロセスがあって。建築って本当に複雑で色んな専門家がいて、やればやるほど自分の知らない世界が広がっていくような業界で、お受けしたら何かしらの結果は出せるんじゃないかと。

宇都宮:修行みたいな感じ?何かを得られる?

佐久間:そうですね。得られるし、何かを提供できるんじゃないかというのはありました。

三木:今までで最大の案件ですか?

佐久間:規模的には最大ですね。

三木:すごいね。もう投資効率というのも判断基準になるようなプランを提案するということですね?

佐久間:最初要望されてた全ては…例えば新入社員研修所だったので宿泊施設みたいなのもやろうと思えばあって、下に温泉があったりとかそこまで夢は広がってたんですが、今回の投資規模とか法的な規制とかを考えると、そこを稼働させるのは今回はちょっと難しいという判断をさせていただいて、その宿泊施設スペースを壁でシャッタで区切っちゃってて、消防法的にはそこは使わないという、実際に今使っていないんですが、次期の投資に回させていただいた部分とかもあります。

宇都宮:余地を残してあるということですか?

佐久間:そうですね。

三木:今この工場はもう稼働しているんですか?

佐久間:しています。

三木:良いですね。見学とか行ったらビール飲み放題。

佐久間:飲み放題なのか分からないですけど(笑)。

三木:そういった今まで培ってきたノウハウを全てここ(本)に入れて。

宇都宮:これはどういう人が読む想定なんですか?建築家さんが読むイメージなんですか?

佐久間:最初は建築家向けの本を書いていこうかみたいな話もあったんですが、この事例のCOEDOビールの社長さんのような立場の方だったり、あるいは空き家を持て余してるオーナーさん向けに書きました。最初はすごく小さな空き家をリノベーションしてシェアハウスにしたいという案件から、徐々に福祉施設、保育園、高齢者施設、障がい者支援施設みたいな福祉系の用途が規制が厳しい用途。それからオフィスや工場、ホテルといった大きな商業施設のお話しになります。

宇都宮:建物を持っててモヤモヤしている人向けなんですか?

佐久間:モヤモヤしている人とか、今手続きのところですごく手間取っている人とか。

宇都宮:マンション管理組合とか?

佐久間:そうです。

宇都宮:建築の専門家じゃない人が読むと色々参考になるかも?

佐久間:そうですね。

後編に続きます。

佐久間悠さん
https://www.facebook.com/yu.sakuma.7

WEBSITE
http://kenchiku-saikou-kikaku.com/

佐久間さん新刊
「事例と図でわかる 建物改修・活用のための建築法規」

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再構祭 第二審『ものづくりの現在(いま)』

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