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第168回MMS(2018/7/2収録)「マイクロモノづくりと出会い、ホントに作りたい本だけを企画から販売まで手がける編集者」後編 CCCメディアハウス編集 田中里枝さん

前編からの続きです。

●著書『トゥルー・イノベーション』の紹介

 三木:今回出版した『トゥルー・イノベーション』のお話を伺っていきたいと思います。この本の経緯は、一昨年の秋ぐらいから企画を持って色々動いていたんですが…

宇都宮:2016年ぐらいから、『マイクロモノづくり』の次の本を書くっていう企画書を作って色々やってて、(田中さんと)鎌倉で打ち合わせをしたことがあったんですよ。

田中:そうそう。鎌倉で1回お会いしてるかもしれないけど。

三木:それでその企画を、とある出版社の方が一応作業していただいてたんですけど、どうもその方はあまり腑に落ちないというか、半年ぐらいお付き合いしたんですけど。

宇都宮:社内企画を通せないみたいな表現をされて…

三木:自分が腑に落ちないと無理なのでみたいな、じゃあ…みたいな感じで。

宇都宮:その頃に田中さんが新しい出版社になられるっていう話を小耳に挟んで…

三木:転職されたのっていつですか?

田中:ちょうど1年前ぐらいですね。

三木:1年前ぐらいにお会いして話をして、「その前の出版社がダメになってもう1回お願いできませんか?」ということでそれで話が昨年の…

宇都宮:夏前ですよね?

田中:夏前ぐらいだったんじゃないですかね。

三木:その後、筆があまり進まず(笑)。

田中:結構寝かせましたよね。長いこと。

三木:寝かせましたね。半年ぐらい?2月か3月ぐらいまで寝かせてたんです。それでそろそろ営業から「どうなんだろう?」みたいなのがきて、「やばい」みたいな。

田中:そうそう。せっつかれて「やばい」みたいな。

田中:1回ここのオフィスに引っ越す前のオフィスで、昨年末ぐらいに「じゃあちょっとちゃんとやりましょうね」って言いながらうだうだして、4月ぐらいにここに一度ご来社いただいた時に「出すので」ってなって、そこから怒涛だったんじゃないですか?

三木:それで2ヵ月ぐらいで作った。

田中:正味実働したのは2ヵ月ぐらいですよね?フルで全員頑張ったのは。

三木:内容は、僕がリストラされて禅に救われたところから、瞑想や座禅を通じて新しいアイデアがたくさん出てくるというのを実際に体験して、有名なところではスティーブ・ジョブズさんが禅をかなり傾倒していて、彼のクリエイティビティの1つは、そういった自分の内側の声を聞く習慣を、おそらく持ってたんじゃないかというところで、彼の考え方と僕の生み出した手法が、シンクロするんじゃないかというところで、人の内側にある情熱から、どうやってプロダクトとかサービスを生み出すのかというのを本にしています。この『トゥルー・イノベーション』のトゥルーの意味なんですけど、これは自分の心に正直であるということのトゥルーで、その(田中さんとブレストした)時まだあまりアイデアがなかったんです。その時のタイトルは『禅とイノベーション』とかそんな感じで、田中さんと話をしているうちに、「本当のイノベーションとは?」みたいな話になって、「じゃあトゥルー・イノベーションどうでしょうか?」みたいな。

田中:そうですね。真実のイノベーションであり、自分の心に誠実=トゥルーなイノベーションであるっていう意味のトゥルー・イノベーション。

三木:社内会議にかけていただいて「いいんじゃないか?」みたいな。最初の社内会議はどういう反応だったんですか?

田中:最初の社内会議は、enmonoさんが考えていることを説明するのってものすごい難しいんです。「本当に好きなことを仕事にしようって色んなところで言われてはいるけど、その本当に好きなことを仕事にする術を、テクニカルにやる方法が書いた内容だ」みたいなことを言っても、あまりにも言われ過ぎてることだから、そんな話ってめっちゃ色んなところで出てるし…

三木:「そんなのいっぱいあるじゃん」みたいな?

田中:そう。「何が違うの?」みたいなことになりがちなのですごく難しいですよね。

三木:僕らはそこを具体的な方法論として、ワクワクトレジャーハンティングチャートとか、具体的にどういう瞑想をすればいいのかとか、その後出てきたアイデアをどういう風に事業化するかっていう様々な手法を、この1冊に織り込んでこざいます。

田中:本当具体的なんです。だから企画通す時はこの(ワクワクトレジャーハンティングチャートの)図を「こういうことです」って書いて、うちの長に「好きなこと何ですか?」とか言って書いてもらって、「ここです。ここにあるものを本にするっていう話です」みたいな。

三木:実際書いていく中で、僕もすごい色んなアイデアがさらに出てきて出過ぎちゃって。

田中:今度字数が多いっていうね。

 三木:基本的な考え方は、Me tooイノベーションは外から情報を集めてきてイノベーションを起こします。そうじゃなくて、人の心の中にある記憶や感情からイノベーションを起こすトゥルー・イノベーションの考えがベースになっています。要は外にある情報ってもう今はインターネットの時代なので、簡単に検索されちゃうんです。でも人の心の中にある情報って検索されないので、かつもし検索されたとしても、その人に付属している情報なので、別に外の人が見ても全然情報の重みが違うんです。その人の中にある情報は、その人にしか基本的には重みがないから、その人の心の中にある記憶とか感情から、どういう世界を創り出したいんですかということで、そこで“課題”と“問い”について、田中さんからも色々提案とかいただいた。

田中:分からないみたいな。

三木:要は課題っていうのは、一般の方のパブリックプロブレム=公共的な課題です。例えば、日本での自殺率が上がって、もっと下げるためにはどういう政策が必要とか、どういうシステムとかサービスがあればいいかとか、結局自分事にはなかなかなりにくい話なんです。一方、問いのほうは「じゃああなたはどういう世界を生み出したいんですか?」「こういう世界を生み出したい」「そのためにはこういうシステムとかサービスとかプロダクトが必要です」っていう順番なので、結局あなた自身の課題になると。そういうことでよりモチベーションが、問いのほうが大きい。

田中:パブリックプロブレムが自分事だったら、うまいこと合致してそれはそれでいいんでしょうけど、例えば待機児童の問題とか、本当にその状況にいるお母さんからしてみたらすごい問題だから、そういう人が何かするとうまくいくかもしれないけど、関係ないお役所の誰かさんとかがやってもうまくいかないかもしれない。

三木:仕事は与えられるものだから、自分で生み出すものではないからそれはしょうがないんだけども、自分自身の課題として捉えた時に、ものすごいモチベーションは出てくるわけで。そう考えると今の企業というあり方自体が、ある種これ(本)は否定をしてるんですけど、自分で会社を起こさない限りは、自分の本来やりたい仕事にならないわけで、そうすると大企業の中で「あなたはこの仕事です」っていうのは、たぶんこれから段々と弱くなっていくというか、本当に情熱がある個人とかベンチャーとかに負けてしまうっていうことが、今アメリカなどでは結構起きてるし、日本でも起きつつあることなのかなと。その大元がこの本に入ってます。

田中:そうです。

 三木:この本の中には2,500年前に仏教、あるいは1,000年前から仏教が変化して禅というものになり、その禅の考え方とモノづくり、あるいはイノベーションの起こし方をリンクした考え方を入れさせていただいてます。十牛図っていう禅の伝統的な絵があるんですけど、これは牛を飼っている少年の家から、牛が逃げ出すという話なんですけども、本来その人が持っているやりたいことが、どうしても牛だと逃げ出した場合、外に探しに行っちゃうんだけど、実は外にはなくてもう自分自身が知らないけど持ってることに気づきましょうよっていう話をしています。イノベーションって海外のスタンフォード大学のd.schoolとか、シリコンバレーとか、あるいはリーンスタートアップとかそういう手法がありますけど、本来日本が禅というものを800年かけて育て上げてきた叡智の中に、イノベーションと関連する可能性がありますよということを書いた本になります。

宇都宮:色んなイノベーション手法があるよっていう。

三木:我々常に時代を5年ぐらい先取りする傾向があるので。

田中:5年先は本だったら早すぎるのね。2年先ぐらいの感じが売れやすい。

三木:ただこの間スタンフォード大学のマインドフルネスの先生と対談(https://zenmono.jp/story/368)をした時に、彼がスタンフォードでやってるアプローチと、我々がこの中で用いている、人との対話を通じてその人に気づきをもたらすっていうのが、近いところがあると興味を持っていただいたので、可能ならばこれをスタンフォードに持ち込み、この考えをスタンフォード大学に注入すると。日本の企業はスタンフォード大学は大好きだから、そこから上から降りてくるってなると…

田中:逆輸入的な感じにして入れていく。

三木:ちょっと淡い期待を持っております。

●編集の際のツールの活用とIT度アップについて

 三木:この中にはたくさんの図表が入ってまして、僕がノートにぐちゃぐちゃって手書きをしたものを、写真でSlackっていうツールを使ってどんどん田中さんのほうに…

田中:何か分からない絵が届くんですよ。

三木:通常出版社っていうのは今まではどういうやり方で?

田中:基本マイクロソフトのワードで原稿が届いて…

三木:ファイルを作者さんが書いてそれをメールで?

田中:メールで来て、メールで受け取ったやつを見て何通かお互いメールでやり取りしてっていうような…

宇都宮:赤入れをして?

田中:赤入れもしてからメールでまた戻したりとかして、場合によっては郵送で戻したりとかしながら何回かやり取りして、それでゲラの形に最終的にしていくっていう感じですね。

三木:今回我々が使ったのは、時間がないというところもあり、Googleドキュメントっていうのを使い、あとはSlackっていう補助的なコミュニケーションツールを使い、そして打ち合わせはZoomっていうオンラインカンファレンスシステムを使って。

宇都宮:かなりIT度が上がりました?

田中:IT度めっちゃ上がりましたよ。すごい便利で、メールでいちいち「いつもお世話になっております」を書かなくていいのは超楽みたいな、「すいません、これ意味分かりません」って、一言ポンって投げておいたら基本Slackは、LINEとかのグループチャットみたいな感じですもんね。だからものすごい気軽にやって、しかもSlack微妙にいいのが既読ってつかないので、見てるけど面倒くさい時とか、ちょっとスルーしたい時にこっそり黙るみたいな。

三木:これがSlackです。こっちにメインストリームがあって、コメントがあるとこっちにつけられるということで、これはスマホのアプリとも連携しているので、メッセージが来るとピコッと、ゴールデンウイークの間でもどんどんとメッセージが…

田中:情報がアップデートされていき…でもかなりカジュアルに離れたところにいても、一緒に作業してるみたいな感じは常にありましたね。

宇都宮:ライブ感がありますよね。

田中:Googleドキュメントで編集作業を一斉にやって。

三木:ただGoogleドキュメントの問題点は、あまりにも分量が多くなると…(笑)。

田中:固まるっていう。まさかの。

三木:さすがに本1冊分の分量はちょっと難しかったかなって。

田中:写真とかも多かったりするしね。でもこんなに便利なんだと思って。

宇都宮:時代は進んでおります。

田中:全ての本のプロジェクトを全部Googleドキュメントで今やってます。

三木:すごい(笑)。

田中:プラスSlackもみんなに勧めてて、「やらせてもらっていいですか?これ1回使ったらもう抜けれないんで」って言って全部…

三木:打ち合わせもZoomでやればいいじゃない。

田中:ものすごいIT化されました。この本1冊作ったことで。

三木:時間を短縮できることでより企画に集中できたとか?

田中:そうそう。それがすごいあって、確実に作業効率が上がったんですよ。メールとか気を遣わないでいいし、あとファイル探すのとかもすごい簡単で、メール遡ったりしやすい。その分ちょっと違うことに時間を割けるようになりました。それこそ企画をやったりとか。

三木:今手掛けてるのは何冊ぐらいですか?

田中:今同時が5冊。

三木:すげぇ。そんなにやってるの?普通それぐらいなんですか?

田中:うちの会社のペースだとたぶん3冊ぐらいは進行しないときついっていう感じはあるんですけど、でもおかげさまでだいぶ先のやつまでできてます。

宇都宮:そこは働き方改革ですよね。

田中:そうそう。1人働き方改革はしました。

三木:他の同じ部署の人も使い始めてるんですか?

田中:勧めました。「便利ですよ」って言ってやってます。

 

●『トゥルー・イノベーション』についての感想

 三木:田中さんはこの本をやってみて何か感想とか?

田中『トゥルー・イノベーション』は、まさにさっき三木さんが説明した部分が私も一番好きな部分で、本づくりも一緒なんですけど、企画立てる時って外部に情報を求めてしまうんです。今これがブームになってこれがキテるとか…

宇都宮:似たような本が出ますよね?

田中:似たような本めっちゃ出るでしょ?何かしらの本がものすごいヒットしたら、「よし、あれっぽい本を作ったら今だったらネタ的にイケる!」みたいなので、ついつい外部に情報を求めがちになる世界で、それは本当にダメだなと、この本をやらせてもらってすごい思って、自分の作りたいものだけを作ろうと思いました。もう人生も短くて、そもそも何年生きてるか分からないから、もうやりたいことしかやらないみたいな。

宇都宮:対話の技術もぜひ身につけていただきたいですね。

田中:そう。それを身につけたら無敵になりますよね。

三木:この本ですごい感動だったのが、慶応大学の前野先生が泣くような文章を書いていただいたんです。すごい権威の先生が超くだけた感じで。

(解説文掲載:http://books.cccmh.co.jp/list/detail/2241/

田中:おもしろい文章ですよね。

三木:この解説文では、前野先生がなぜこの帯でにっこりしているのかということを語っていただいています。にっこりすると創造性が上がり生産性が上がりますよということを言っていただいて。

宇都宮:それは研究成果で実証されてるらしいよね。

田中:精神論じゃないですもんね。

三木:幸福な人はそうじゃない人と比べて3倍生産性が違うということは、アメリカの研究などでは実証されてるし、働き方改革っていう仕組みは重要なんだけど、どれぐらい幸福に社員が仕事をしているかっていうのが、たぶんこれからの企業の一番の差が出てくるところになりますから、単に時間的な問題だけではなくて、どれくらい職場の人間関係とか、あるいはお互いに気遣ってるのかとか、そういう幸福度、あるいはどれぐらい社員がやりたいことがやれてるか、というところでパフォーマンスが全然変わってくるかなと思いますので、そういった参考にもこれ(本)はなるんじゃないかと。

宇都宮:田中さんパフォーマンス高まってますよね。

田中:私パフォーマンス高まりましたよ。

三木:本当に?幸福度が上がってきた?

田中:幸福度が上がった。

三木:それでもう自分がやりたくない仕事はしないと?

田中:もうしない。もう絶対しない。今の会社に限らずですけど、上から降りてくる仕事って必ずあるじゃないですか。仕方なしに作る本よりは、自分で「これおもしろいな」と思ってやる本は、身の入り方も違うし頑張って売ろうとするし、それは当然そうだと思うんです。

三木:なので幸せはこの中に入ってます。あなたがどういう気持ちで働くか、そのヒントが全てここに。ぜひ。

 

●田中さんの考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

 三木:田中さんの考える○○の未来、○○は自分で入れていただいても結構なんですけども、どういう未来が田中さんの中に…

田中:田中の考える編集者の未来にしようかな。編集者の未来は、おもしろいことをどれだけ周りの人に「これめっちゃおもしろいよ」って言えるかっていう力だと思ってるので、みんなおもしろいものを頑張って見つけて、おもしろいをどんどん人に伝播させていきましょう。

宇都宮:感度も高めていく必要がありますよね。

田中:そうですね。一番大事なのは、おもしろがる能力かなと思っています。普通の人があまり「うん?」って思ってるようなことでも、「えっ?何それ?ちょっとめっちゃおもしろいんだけど」っていう風に思えるかどうかが全てだと思います。

三木:皆さんおもしろいことをいかに見つけるか、そこが編集者でございますから、常にアンテナを張って感じる力を高めていきましょう。今日は貴重なお時間どうもありがとうございました。

田中:ありがとうございました。

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