NEWガイアの夜明けで紹介された、クラウドファンディングを活用して新規事業を立ち上げるためのスクール「zenschool(ゼンスクール)」 22期新規募集(残席1名)

『トゥルー・イノベーション』刊行記念トークイベント(2018/6/8)

●全体の流れについて

三木:皆さん、今日はわざわざお越しいただきましてありがとうございます。まず冒頭私のほうからお話をさせていただいて、その後、前野先生から幸福学というものは、どういうことなのかお話しいただいて、アイサクの今井さんに、ポリゴン阿修羅を生み出した経緯というのをお話していただきたいと思います。

●株式会社enmonoの三木康司さんのトーク

~enmonoという社名の由来~

三木:簡単に自己紹介をさせていただきたいと思います。私enmonoという会社をやっておりますけども、社名の由来が人のご縁でモノづくりをするということで、“エンモノ(エン+モノ)”という社名になっています。これは私のキャラなんですけど、もう1人のキャラがこの丸い方(宇都宮茂)でございまして、こういう変なロボットが町工場に降り立って、おもしろいものを作っちゃうよということで、こういうことをやっております。

~会社の理念と事業内容~

 会社の理念が、“ワクワクものづくりで世界が元気になる”ということです。普通は世界を元気にする、とか言うんですけども、世界が元気になりたがってるので、ちょっとだけお手伝いをしますよ、ということでやっています。会社はこの左から、zenshoolという商品の企画をする学校と、真ん中がzenmonoというクラウドファンディング、そして最後がzenfactoryと言って卒業生と一緒にモノをつくるという3つの軸でやっております。

 今回、zenschoolをベースに色々活動している中で得られた知見を、この本に致しました。このように、町工場の2代目3代目の経営者が多く、非常に技術があるんですが新しいアイデアでちょっと悩んでいるので、zenschoolで新しいモノを生み出すということをやっています。私は富士通という会社におりまして、宇都宮のほうは自動車のスズキという会社におりまして、顧問で細川と藤田というこの4名でやってる会社です。2009年の11月11日からスタートしています。

~三木さんの簡単な経歴~

 私の簡単な経歴を申し上げますと、富士通という会社におりまして、その後慶応義塾大学のSFC(湘南藤沢キャンパス)というところで経営学を勉強して、博士課程の途中でITベンチャーのほうにスカウトされたんですが、9年ぐらい働いて自分では活躍しているつもりだったんですが、業績不振で給料高いほうから(肩を)トントン、という形で辞めることになりまして、その精神的なショックで軽い鬱的な感じになってしまったんですが、自宅で座禅をすることで回復して、そこでこのzenschoolというのを始めました。

~トゥルー・イノベーションとは~

 今回テーマのトゥルー・イノベーションですが、そもそもトゥルー・イノベーションとは何か、というお話をしたいと思います。定義としてはTrue Innovationとは、自分の心にTrue、“真摯”であるという意味での“トゥルー”、要するに自分の本当にやりたいことをやるという意味で、True Innovationという定義にしています。この言葉は、みんな色んなところで散々イノベーションって言ってますけど、一体イノベーションって何なんでしょうかということで、日本では“技術的革新”とよく読み替えられる、と思ってらっしゃる方が多いんですけど、この言葉を作られた方は、“新結合”といって、全く異なる価値のものを組み合わせて新たな価値を生み出すと仰ってます。また、クリステンセンというハーバード・ビジネススクールの先生も、「一見関係なさそうな事柄を結びつける思考」と仰っています。

~Me tooイノベーションとトゥルー・イノベーション~

 

 これは我々の定義なんですけども、外にある情報をガーッと集めてきて、それを組み合わせて「はい」って出すようなイノベーションのことを、“私も同じようなことをやりたい”ということで“Me tooイノベーション”と言っています。それに対して我々のアプローチは、個人の中にある感情とか記憶にアクセスをして、そこから本当に自分がやりたいことを取り出すイノベーションとして、“トゥルー・イノベーション”と呼んでいます

 これは本の中にも出てきてますが、上の赤いグラフがMe tooイノベーション。Me tooイノベーションは、外にある情報を持ってくるのでビジネスとしての立ち上がりが結構早く、要はコピーに近いもの。だけどもそのオリジナルな部分はないから、段々とイノベーションのスピードが中だるみしてしまいます。そして、トゥルー・イノベーションは、自分の中にある情報を元に開発をしますから、なかなか世の中に出てくるのは時間がかかるんだけども、ある程度の時間を過ぎると、もう指数関数的にその商品とかサービスの付加価値が伸びて、Me tooイノベーションのものを抜くというポイントがくる。それを特異点と我々は言っています。

 次に、Me tooイノベーションとトゥルー・イノベーションの対比をしてみました。トゥルー・イノベーションの言葉の定義になった、自分自身の心に対して不誠実か、それとも本当にやりたくて誠実なのか、というところをこの青いところで記してますが、それ以外にも色んな特徴があります。これはどちらを選ぶのか、というのはそれぞれの組織に応じていると思うのですが、例えばいきなりピラミッド組織型の大企業で、トゥルー・イノベーションをやろうとすると、組織がたぶん瓦解してしまうと思うんです。逆に規模の小さなベンチャー企業が、Me tooイノベーションをやっても、実はあまり効率が良くなかったりするかもしれないです。なので、組織に応じたイノベーションのやり方を選んだらいいのではないかという提案です。

~スティーブ・ジョブズと禅~

 唐突ですが、スティーブ・ジョブズさんは、禅に非常に注目されていて、実際に実践もされていました。

 このジョブズさんが2005年にスタンフォード大学で大変有名なスピーチをされました。その中で、私が強く印象に残った言葉があります。「外の情報に惑わされないであなたの心の中を聞きなさい」と。「もうあなたは自分の真心が何を言っているのか分かってるはずで、それ以外のことはもう二の次でいいです」と言っています。このような考え方をされていた方が、本当に亡くなる直前まですごいイノベーティブなプロダクトを、様々生み出したということなんですが、言ってることは確かに「分かる、分かる。そうだよね」って、聞いた方々は言うかもしれないんですが、実際どういうアプローチでそういったイノベーティブになればいいのか、というのが具体的には分かんないよねという話だと思います。

~イノベーティブになるための方法論と具体的な事例~

 でも我々はそこを方法論化しました。具体的には椅子に座って瞑想をした後に、ワクワクトレジャーハンティングチャートというものを使って、10歳の頃にあなたがワクワクしていたこと、そして自分の持ってるスキルというのを掛け合わせて、そこから生み出される商品、サービスを実際に作り出すということをやっています。

 例えば、これはあるバネ屋さんが書いたチャートなんですが、下には精密なバネを作る技術というのを書いています。この社長はレゴみたいなブロックが大好きだったりとか、手品が大好きだったりとか、そういったところから人々の笑顔というのが非常に好きだということがわかってきました。そして、ちょうどこのブロックとバネというところから生み出された商品が、この「SpLink(スプリンク)」(http://www.splinks.jp/)というのものです。これは通常の工業用のバネを、レゴブロックのようにつなぎ合わせるとそれが商品になるのではないか、ということで生み出されました。上の写真は、実際に3万個つないで龍神様を作られた作品です。

~前野先生との幸福度と創造性の研究~

 前野先生には今日いらしていただいてますが、我々の幸福と創造に関する研究を一緒にやらせていただいておりまして、前野先生も幸福度が上がると創造性が上がるということがデータで見えてきたそうです。あと先生と奥様のまどかさんで国際ポジティブサイコロジー学会のほうでも発表していただきました。今慶応義塾大学のほうで医療系のベンチャーの方にzenschoolを受けていただいて新しいモノを生み出そうとしています。

~伝えたいメッセージ~

 ここまででお伝えしたいメッセージは、スティーブ・ジョブズはすごい人だから絶対自分には無理と思わないでください。イノベーションは誰にでも起こせます。その方法論、アプローチの仕方が今までたぶんあまり分かってなかったんですが、我々の7年間開発してきたアプローチを使うと、ある程度のところまではイノベーティブなアイデア、そしてモノづくりができる可能性があります。そして、外の情報に惑わされずに、自分の心を鏡のようにして自分の中を見つめることが、非常に重要です。皆さんの心の底には、巨大な知恵が実は眠っていて、それを発掘してないだけだったんです。ですからそれをこれから一緒に掘り出していきましょう、というのが最後のメッセージになります。どうもありがとうございました。

 

●慶應義塾大学大学院の幸福学の前野先生のトーク

三木:引き続き前野先生のほうに幸福学のお話をしていただければと思います。

~前野先生の自己紹介~

前野:慶応義塾大学の前野と申します。よろしくお願いします。私の専門はこの(本の)帯のところに、“幸福学×イノベーション研究の前野先生”って書いてある通りです。実は10年前からイノベーションの研究と幸せの研究を始めました。もっと前に13年間理工学部の機械工学科でロボットの研究をしてたんですが、実際それはイノベーションを起こすということと、ニコッと笑う幸せなロボットみたいなものを作る研究でした。そういう意味ではイノベーションの研究と、幸せの研究を23年ぐらい前からやってたんです。その立場から、幸福学とイノベーションと幸せと、それから三木さんがやってる活動はどう関係するのか、ということについて、私の考えをお話ししたいと思います。

~大学のイノベーション教育と幸福度の関係~

 まずイノベーションの話なんですが、うちの大学院ではブレインストーミングとか、観察に行ったり作ってみたりすることに基づくイノベーション教育を、10年前からやってるんです。Me tooイノベーションとトゥルー・イノベーションの間ぐらいですかね。ピラミッド組織型じゃない、みんなでアイデアを出し合うことによって、世の中の人が困っている問題を解決しよう、みたいなイノベーション教育をしてきました。7割ぐらいは社会人学生なんです。結構みんな新しくおもしろいアイデアを出すわけです。「これイノベーションになるな」と思ったら、企業に戻っていってイノベーションを起こす人と起こさない人がいるんです。あるいは新規事業を起こせる人と起こさないで終わる人がいます。起こさないで終わる人はどうして終わるのかというと、ものすごい良いアイデアであっても、会社に戻って課長や部長に反対されて、「いや~事業計画立たないね」とか、「我が社のコンセプトに合わないね」とか、「市場規模ちっちゃ過ぎるね」とか、色んなこと言われて挫折して、「やっぱり無理でした」って辞めるんです。なぜアイデアはいいのにちゃんと続く人と辞める人がいるのかというと、続く人の秘密は、すごい熱意なんです。心の問題です。

 たぶん三木さんが気づいた頃と、僕は同じ頃だと思うんです。僕は実は三木さんのライバル(笑)で、トゥルー・イノベーションについて気づいてたんです。他の学生と一緒に幸せの研究もしてるじゃないですか。すると、どうも幸福度を高めてからイノベーション教育をするとうまくいくらしい、っていうことに気づいたんです。幸福度が高い状態とは、やる気があって良い仲間がいてそしてリスクを取ってやってみよう、何とかなると思いながらチャレンジする人。そういうマインド、あるいは三木さんが言ったように、本当にやりたいことっていうのを見つけて、「自分はこういうことをやりたい人だ」っていうことを理解した上で、アイデア出しをしたりすると、その人は、最後まで、どんなに反対されても強い熱意でやり抜くということに気づいていたんです。「あ、なるほど。イノベーション教育は、ただ単にブレインストーミングとかやり方を教えるだけじゃなくて、まずは心を調えて、僕の言葉で言うと幸せ度を高めておくということが大事なんだな」と思ってたんです。

~三木さんとの共同研究とzenschool

 幸せの研究の中に、アメリカの研究で、幸福な社員は不幸な社員よりも創造性が3倍高い、というデータもあるんです。幸せになっておけば、イノベーションのためのアイデアも3倍出る。3倍出るってことはもちろん、イノベーターになれるということです。また、幸せな社員は不幸せな社員よりも生産性が1.3倍高い、なんてデータもアメリカとか日本とか色んなところにあります。まずは心を調えてからアイデアを出すということが大事だ、ってことに気づいていた2015年ぐらいに、三木さんと動画を撮って対談(https://zenmono.jp/story/242)をすることがありました。それで聞いてみると、「おっ!俺の発明みたいなことをもうやってるじゃないか!おもしろい!」みたいな感じで意気投合しました。僕がやってることと一緒だ。しかも僕は気づいて教育を始めたばかりだったのに、三木さんと宇都宮さんは、「ちゃんと経営者の人達に、zenschoolっていうのをやって実績をすでに上げ始めてるんです」っておっしゃる。そこで、「ふたりは僕の専門であるイノベーションと幸せの両方をやってるので、取材させてもらって、これを創造学会とかポジティブサイコロジーの学会に一緒に出しましょう」と言って研究を開始したんです。あまりにも人手不足だったので、妻に研究をしてもらって、今妻と僕と皆さんと一緒にzenschoolの研究をしてるというのが実情なんです。

 zenschoolは、まず瞑想したりあるいは対話をして、本当に自分がやりたいことは何なのか、というのを最初に徹底的に明らかにするんです。その後に、ワクワクトレジャーハンティングチャートがあります。これもうまくできていて、本当にやりたいことと、本当にやるべきことみたいなことの掛け算をうまく見つけていくものです。すると自然にやりたいこととアイデアがうまく重なるので、それが最後までいくと実現する。僕が「よし!これはすげぇ!俺だけ知ってる秘密だ!」とか思ってたことを全部やってたんです。

 もちろん、そのことがTrue Innovationには書かれています。

 この本の表紙を皆さん見ましたか?この帯『前野先生もにっこり』。帯だったら普通は、『前野先生が幸せとイノベーションは相関があるから大推薦』とか、推薦の言葉を書くじゃないですか。ところが、「できあがりました」と三木さんからFacebookのメッセンジャーで連絡がきたので帯の案を見たら『前野先生もにっこり』とだけ書いてある。笑いました。そして、「あとがき書いてください」と言われました。これはにっこりの理由を説明しなきゃと思って、書いたわけです。ぜひ、最初にあとがきを読んでください。おもしろいから。最初にあとがきを読むと全体像が分かる。なぜ前野先生はにっこりしてるのかっていうのが書いてあるんです。

(あとがき掲載サイト:https://www.zenschool.jp/trueinnovation

 今お話ししたように、本当のイノベーションっていうのは、心からやりたいことをやることだっていうことを書いています。

~前野先生の心の研究~

 三木さんとはもう1つ接点があります。僕は元々イノベーションと幸せの研究をしてます、と言いましたが、その前は心とは何なのかという研究を、2000年ぐらいからやってたんです。心の哲学という分野で、「心は何のためにあるのか」「心は死んだらどうなるのか」「生まれる前はどうだったのか」というような研究をしていました。これは元々、ロボットの心を作ろうというところから始まって、人間の心、特に意識について研究した結果です。我々は意識を持っていて、たとえば、叩かれると痛いじゃないですか。いくら今「AIがすごい」と言っても、叩かれて本当に痛いと感じるAIはできてないんです。叩かれると痛がるロボットはできています。でもこれは嘘で、皮膚に刺激を受けたら痛いふりをして痛いと言うとか、あるいは怒った顔をするといったようなプログラムがあって、その通りに痛いふりをしてるだけなんです。しかし、人間の方は本当に痛いと感じるわけです。これがまだロボットに全然できてない、人間の心のクオリアっていうやつなんです。心の意識の質感。この研究をしていたんです。

 その結論は「私達人間には心はない」です。ちょっと「えっ?」って思うかもしれないですけど。『脳はなぜ心を作ったのか』(http://amzn.asia/cppFpEm)という本に書きました。「心は幻想である」と。心はあるように感じます。今の瞬間「よし!次はこれを喋ろう」とか、自由意志で意思決定するような気がするじゃないですか。この自由意志とは、自由な意志。何者からも自由な心の中の重要なもののような気がします。しかし、どうも脳に電極を刺して測ってみるとないんです。ないというか、脳の運動準備電位という、筋肉を動かそうとする無意識的な指令が先に起きていて、その後で意識上の意思決定が起きているという証拠があるんです。つまり、私達が色々と決めた瞬間に本当の決定はなくて、それより前に脳が決めているんです。ということは心はあるようでないようなもの。あるようだけども嘘みたいなもの。ロボットとそんな変わらない。ロボットも「痛い」と言うけれど痛いふりをしているだけなんですが、私達もそれと同じようなもので、痛いと感じますがこれは幻想みたいなもの。後づけで感じているだけのもの。こういうことが、2003年頃にやった研究結果だったんです。

~心の研究から幸せの研究へ~

 私は、「心はないんだ」って気づいた時にものすごく幸せになったんです。だって心がないわけだから「お前はすでに死んでいる」です。もう最初から死んでいるわけです。だって心がないんですから。

 我々は死んでるのに生きてるってことは、ものすごい得じゃないですか。本当はないものが生まれている。生きてると思うから死ぬのが怖いとかもっと金持ちになりたいとか色々思うんだけど、実は、元々ゼロなものが、すごい宇宙の偶然で、あるかのような幻想になって、またないゼロに戻っていくだけ。そう考えるとすごく幸せな気分になったんです。悟りの境地ってこういう感じなんだろうなって。もう何もないっていうか、宇宙の一部として私がいること自体が素晴らしい、ラッキー、みたいに思ったんです。

~幸福学とイノベーション~

 だから三木さんがやってる、瞑想とか座禅とかを元に心を調えたところから発想するとか、自分の本質をつかむというのも、空に近づくことだと思うんです。そういうことによってこそ、本来の本当のやるべきことが見つかるんじゃないか。日本は和の国っていうじゃないですか。平和、調和の和ですよ。だから生かされたことを大切にしてその中で我々ができることをやっていく。できることをやっていくとイノベーションにつながると思うんです。スティーブ・ジョブズも禅に興味を持って非常にシンプルな製品を作った。これも、東洋と西洋が統合された本質的な幸せとか、無とかいうところに近づいた人だからできたんだと思うんです。

~幸福学入門~

 幸福学の話も少し。幸せとは何かというと、今までの文脈でいうと、無です。欲があるから不幸になるわけです。幸福学で分かってることのひとつに、利他的な人は幸せで利己的な人は不幸であるという明確な結果があります。我欲というものがある。悟りから遠い人ほど我欲がありますから不幸なわけです。我欲がないとどうなるかというと、自分は世界と共にあるわけです。世界と共にあるなら世界のみんなが喜ぶイノベーションを起こそう、ということに自然につながっていく。西洋のhappyという言葉は語源がhappenと同じです。何かが起きて幸せという感じ。一方、東洋流の禅とか瞑想、zenschoolにつながるような幸せの究極は、何もない静かな幸せということじゃないかなと思います。別の言葉でいうと、幸せとは愛です。自分を愛し世界を愛する。西洋流のキリスト教の言葉でいうとLoveだと思うんですけど、仏教からいうと、自分がないわけですから、この素晴らしい世界の一部として生まれてきたこと自体を愛するというか、それ自体が幸せ。ありのままです。この境地に至ることが、心のイノベーションだと思うんです。本当の、イノベーション。

 以上、zenschoolと、僕の立場と、幸せと仏教と禅とイノベーションの関係について述べました。どうもありがとうございました。

 

●株式会社アイサクのメタル仏師の今井祐二さんのトーク

三木:今トゥルー・イノベーションの話と、そして前野先生の幸福学のお話がありましたので、ではそういった幸せな状態になると、どのようなものがそこから生み出されるのか、というお話を今井さんのほうにしていただければと思います。

~今井さんの自己紹介~

今井:豊田市から来ました今井と申します。enmonoさんでzenschoolというのを受けて、僕はある意味実験台みたいなものですので、その実験がまだ途中なんですが、どういった状態にあるのかっていうのを、僕のほうから報告したいなと思います。

~アルミでできたポリゴン阿修羅~

 まずあちらに置いてある阿修羅なんですが、アルミで作ってありまして、ペーパークラフトの手法でアルミ板を使って作りました。ペーパークラフトって普通は紙で作るんですが、アルミの板でそれをやってみたら、アルミなので強度が出て非常に大きなものを作れるということに気づきました。阿修羅ですが、奈良の興福寺に阿修羅像というものがあるんですが、それをモデルにしてまして、実物と同じ大きさで作ってあります。この阿修羅像がどうやってできたのかっていう経緯を、説明させていただきたいなと思います。

~株式会社アイサクの紹介~

 まず私の会社ですが、株式会社アイサク(http://www.aisaku.jp)と言いまして豊田市にあります。社員数は64名ぐらいで、大型プレスの自動化装置というのをメインに行っております。その大型プレスの自動化装置は、車のボディを打つプレスの機械の前段階に、ブランク材といいまして、鉄の薄板を重ねたものを、1枚1枚人が投入する作業が大変ですので、その作業を自動化するためのニッチな機械を作っております。もう1点プレスも多少作っておりまして、ナックルリンクプレスと言いまして、これもちょっと特殊なやつですのであんまり台数は出ないんですが、こういったこともやっている会社です。全く阿修羅像と関係ないです。

~enmonoとの出会いとzenschool受講のきっかけ~

今井:まずenmonoさんとの出会いなんですが、豊田市がzenschoolというのを誘致して、そこに募集がかかりまして、5名定員ということで6名応募で1人落ちるということだったので非常に緊張したのを覚えています。事前に資料をいただいたんですが、全く読んでも意味が分からないというのが正直な感じです。面接官の1人が市の職員の人と、三木さんも実際に来られまして、ちょっとただならぬオーラを感じてこの人は何者なんだっていう。じゃあ何でそんなコースを受けるのかっていう話になっちゃうんですけど。

 zenschoolを受けるきっかけは、私自分で趣味である蒔ストーブとか、ペレタイザーといって木の粉を燃料化するようなものに、個人的に興味を持ってまして、会社の空いた時間などで、そういうことを1人で進めてたというのもありまして、zenschoolの概念に一致する部分も、この部分にはあります。レッドオーシャンになっちゃうんですけど、技術面の問題よりも製品化する進め方がやってて全然自分でもイメージがつかないと。モノを作るのは、調べればいくらでも情報が出てきますので何とでもなるんですが、それを販売につなげるとなるとどういった手法でやればいいのか分からなくて、そんな時にzenschoolの話をいただいて、その資料の中に事業計画・販売までのノウハウが学べるようなことは理解できたので、まさしくいいタイミングだなと思って、社長のほうからも声がかかって「ぜひ行かせてください」とすぐ即答しました。

zenschoolを受講しての変化~

 やった結果なんですが、事業計画・販売までノウハウが実際本当に手に取るように分かりました。実際最初に資料をもらった時は、何のことだか分からなかったことが終わった後にはすごい理解できてました。その結果今までできなかったことができるようになったその1例としまして、SNSで情報発信したり展示会や出展、あと商標登録も今まだ出願中なんですがこういったことができるようになりました。あと仲間が増えました。zenschoolの卒業生がたくさんいらっしゃるので、発表会などに参加すると様々な業種の方と知り合えます。例えば富山の梶川さん(https://zenmono.jp/story/361)の町工場に作品を飾っていただけるところもありまして(FACTORY ART MUSEUM TOYAMA)、これもzenschoolから出たアイデアですけど、そこに阿修羅像が1体は今飾ってあります。もう1つ三越本店での展示販売というのもzenschool13期生の平宮さん(https://zenmono.jp/story/346)から誘っていただいて、実際売れてはいないんですけど展示販売はしました。こんなことは、zenschoolを受講していなければやれないことですので、本当にすごい経験になりました。まだ始めて本当に半年とかですので、後々には、プレスリリースとかクラウドファンディングといったことも、挑戦していきたいなと考えております。

zenschoolでのワクワクトレジャーハンティング~

 先ほど三木さんのほうから、ワクワクトレジャーハンティングっていうのがあったんですが、私の場合は会社の得意な分野として組み立てがありまして、それに私の10歳の頃を思い浮かべるってあったと思うんですが、私の場合は小学校の高学年から中学生の2、3年生ぐらいまで仏像が非常に好きで、友達にもう1人好きな子がいて2人で京都、奈良に行ったりして実際そういった趣味が昔あって、それ以降は全然もう忘れちゃってまして、実際瞑想をして10歳の頃を考えた時に仏像っていうのがパッと出てきまして。全然自分の中で忘れてしまってたものが出てきて、仏像と組み立てが得意っていうことで、まずは廃材で阿修羅像を作ってみたらどうだっていう話にまとまりまして、実際社に持ち帰ってやったところ、廃材っていってもすごい色んな種類があるのでなかなか試行錯誤しても思ったようにいかなくて。ふと考えたらペーパークラフトがパッと思い浮かんで、ちょっとこれでやってみたらいいんじゃないかということで試してみたら、非常に良かったのでこの手法でやってみようということになりました。

~ポリゴン阿修羅の制作~

 ポリゴンって多角形の組み合わせなんですが、光が当たると乱反射してミラーボールのようにきれいだったり、あと光を当てたりすると、色んな色も出たりして非常にきれいだったりするので、そういった使い方もできるなと思いました。

 1作目にまず作ろうと思ったのは、中学校の頃に行って、本当に大好きだった興福寺の阿修羅像を選びました。

 苦労としては、実際ペーパークラフトで阿修羅像があったので、ペーパークラフトでやろうというヒントがあったんです。なのでその図面を利用すればちょうどいいな、ということでやったはいいんですが、いざ商品として表に出そうとした時に、断っておかないとまずいなと思いまして、このペーパークラフトのメーカーにメールで、「できれば商品化まで進めさせてもらいたいんですが」という、弁理士のほうと相談して打ってみたんですが、「商用利用はしないでほしい」という回答でしたので、そこでもう切り替えて、一から図面を作れば問題ないだろう、ということでオリジナルの図面を、僕ちょっと図面までは書けないので、そういった業者を探すところから始めて実際モノができるまで8ヶ月くらいかかりました。

 最初は仕事と全然関係ないことですので、社員の目がちょっと怖いなっていうのがあって、残業とか朝早く会社に行ってこそこそやってたんですが、やっていくうちに少しずつ興味を皆さんが持ち出して、逆に「次は何を作るの?」とか「次はどこで展示するの?」とかそういった質問を投げかけてきてくれるので、非常にうれしいことです。もう一つ苦労としては、最初に選んだのが阿修羅像で、手が6本あって顔も3つあるので、もう非常にリピート作業が多くて修行みたいな感じになってきて。本当に瞑想みたいに無の状態になってくるっていうか、だからもう次から作るのは簡単なのかなと思います。部品点数的には500点ぐらいありましたので、それを1つ1つ切ってくっつけてってやってるので、製作期間としては2ヶ月ぐらいかかっています。

 楽しさは、見た方から「本当に何でこんなコツコツしたことを、何か、ちまちま-ちまちま、とよくできるね」と、変わった人扱いとかされたこともあるんですが、逆に僕は面倒くさいほどできた時に感動がありますし、達成感は非常に感じます。展示会は名古屋で年に2回クリエーターズマーケットっていうのがありまして、こういうクリエーター系の展示する会に去年の12月に出したんですが、通る人が皆絶対に見てくれて、口元が”にやっ”としてくれるので、色々説明せずにパッと見て「どうですか?」っていう作品っていうのも、世の中にあってもいいのかなと自分自身感じております。

 そして、これがenmonoさんの実験の1つの検証なんですが、ちょっと実家に帰って、中学校の仏像好きだった頃の写真か何かないかなと思って探したら、これも忘れちゃってたんですが油絵ですね。僕が中学校2年生の時に、油絵で東大寺の南大門の仁王像を描いたのが出てきまして、しかも僕油絵なんて確か1回きりで、友達に油絵セットを借りてきて描いたなって思い出して、実際これも誰に見せるわけでもなく、自分が好きだからやってたことでして、本当にその頃の気持ちって、純粋に誰かのためにやるとかそういうものじゃなかったんだなってつくづくこれを見て思いました。

~豊田市の製造業とマイクロモノづくり~

 豊田市の製造業っていう観点なんですが、自動車関連企業ばっかりの都市になりますので、本当にリーマンショックの時はもう皆困って苦労したんですが、今はもう忘れちゃってるなっていうのが実際ありまして、会社が体力あるうちに現在の本業の効率化するのはもちろんのこと、新製品の開発というのを絶対やっていかないと、僕自身もまずいなとつくづく感じております。

 マイクロモノづくり(https://www.amazon.co.jp/dp/4886960286)について僕が感じたことなんですが、特に下請けと呼ばれる企業には、新規開発は苦手で難しい部分であっても、逆にこれを我が社含めて進めていかないと生き残っていけないのかなと。自動車産業ばっかりにくっついていっても、ちょっと危機感を持っています。私はこの阿修羅というのを作ったんですが、実際三越さんで販売展示しても売れてないんですが、売れなくても実際に会社の宣伝になってるという部分もありまして、ホームページのアクセス数も非常に上がったりしています。僕の中のモチベーションも、これをやるこの楽しみがあることによって、本業のほうもより効率よくこなして、これをやるというルーティンもできてきてましたので。

~日本の製造業に対する想いについて~

 最後に日本の製造業に対する想いで最近感じることとして、日本には素晴らしいモノづくりの力、技術はあるんですが、その作り手の気持ち、こだわりがかつてより薄くなってきているんじゃないかなって感じます。たくさんの想い、こだわりを商品に込める、使う人への想い、使いやすさ、美しさ、楽しさ、こういったことを込めていきたい、込めないといけないなと個人的に思います。ユーザーが、たくさんの想いを感じられるような商品を作りたいと思います。弊社の今後について僕の個人的な想いでもあるんですが、ちょっと立場的にも管理する側になってきて、僕みたいな起業家じゃないですけど、この阿修羅で事業計画とかそういったことを学んで、ある意味会社の中でもこの阿修羅に関しては社長なわけでして、こういったことを他の社員もできるような会社にしたいなと。いっぱい社長がいるような会社、そういった魅力もある何か他と違った会社にしていきたいなという想いがありますので、またちょっとzenschoolさんのほうに送り込んでいこうかなと考えております。以上です。ありがとうございました。

三木:はい、どうもありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「禅的」対話で社員の意識を変えたトゥルー・イノベーション
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