NEWガイアの夜明けで紹介された、クラウドファンディングを活用して新規事業を立ち上げるためのスクール「zenschool(ゼンスクール)」 22期新規募集(残席1名)

第163回MMS(2018/4/6収録)「哲学科出身の哲学者がエンジニアとして飛び込んだ製造業について語る」前編 (有)イージー・エンジニアリング 取締役 野末雅寛さん

●ご挨拶と出演者紹介

 三木:マイクロモノづくりストリーミング第163回、本日は富山県にあります(有)イージー・エンジニアリングさんのほうにお邪魔して、zenschool卒業生の野末さんに哲学カフェとか3Dプリンターを今色々作られているということで、そういうお話も中心に聞いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

野末:よろしくお願いします。

 

●enmonoとの出会いについて

三木:我々enmonoと野末さんの出会いってどんな感じでしたっけ?

宇都宮:最初zenmonoに問い合わせが来たんですよ。2015年12月に。

野末:ええ。そうですね。

三木:どういうメッセージでしたっけ?

野末:その直前までは仕事がものすごい受注があってポンと受注が下がった時があって、その時に今まで忙しくてやりたかったことがほとんどできなかったんですけど、前向きに考えてやりたいことが色々できるなと思った時に3Dプリンターやりたいなと思って、やってるうちに結構こいつの出来が良かったので、これをもとにビジネスを展開できないかなということで色々調べてると、enmonoさん…

宇都宮:クラウドファンディングの仕組みとか?

野末:そうですね。検索するとenmonoさんであったりzenschoolであったりの取り組みが一番おもしろそうだなと思って問い合わせをしたんです。

三木:どの辺がおもしろそうに見えた感じなんですか?

野末:ワクワク起点はおもしろそうだなと思って。

三木:他の講座とかないんですか?ワクワクしたいっていうのは。

野末:なくもないんでしょうけど、自分の内なる源泉から内観することによって、ビジネスの種を見るアプローチが他にはないおもしろいところだなと思いましたね。

三木:元々内観とか興味があったんですか?

野末:そうですね。私自身が元々哲学科の出身ということもあり、物を考えるのはすごく好きだったので、しかも対象論理というと難しい言葉ですけど、客観的に見ることも大事なんですけど、主観的に内観ということで自分の中を掘り下げるというアプローチがすごくおもしろいなと思って。しかも主観的になるとビジネスはまた客観的な一面もありますから、そのバランスをどうすればいいのかなと悩んでる時に、ただ独りよがりになってもダメなので主観と客観のバランスを取りながらビジネスを展開していきたいなと思った時に、今のzenschoolやenmonoさんのアプローチが一番自分に合ってるのかなと思って問い合わせをしました。

三木:私は哲学が専門ではないんですが、哲学ってどっちかと言うと内観的に見る客観的なものなのかなという印象があるんですけど。

野末:両方ありますね。

三木:そうなんですね。

野末:よく対象論理と自覚論理という言い方をしますけど、要は主観を掘り下げるアプローチと客観を掘り下げるアプローチと西洋哲学でも両方ありますね。

 

●製造業に飛び込んだきっかけ

三木:野末さん元々大学で哲学を専攻されていていきなりなぜ製造業に?

野末:大学院は中退…挫折というか、最初は哲学の研究者になりたくて大学院に進んだんですけど、大学院の惨状を見るにつれて…

三木:惨状!?

野末:惨状という言い方をしたら業界の方に失礼に当たるかと思うんですけど、それでは食べていけないというか大変だなと思って。

三木:某京都大学でも惨状だったんですね。

野末:そうですね。だからざっくり言うとちゃんと(哲学の研究者として)就職できる人が3分の1ぐらい、もう3分の1が就職する人、もう3分の1が非常勤講師という結構大変でした。

三木:就職ってどういうところにみんな行ってるんですか?

野末:就職はマスコミかお役所ですね。そういうのはおもしろくないなと思って、大学院京大行って何かダメだなと思ってドロップアウトしたのはもう25歳とかでしたから、ちょうどその時期はまだ就職氷河期でしたから。

三木:ドクター何年目で?

野末:私はもう修士1年でドロップアウトしちゃったんです。

三木:もう何か続けてもみたいな感じなんですか?

野末:そうですね。精神的にもちょっと参った面もあって両方ですね。そういう生活の面と精神的な面と両方相まってこれはダメだなと思って。

三木:他の学生さんとかどんな感じだったんですか?

野末:私の身の回りの人は割と就職うまくいったほうなのかな?それでもみんながみんな研究者として就職したわけじゃないので、お役所に勤めた人とか塾の先生になった人とか、研究者として就職するのはドクター出てから何年も非常勤やったりとか結構皆さん苦労されてたので、それが嫌だなおもしろくないなと思ってもう修論も書かずにドロップアウトして。

三木:家に戻って来たっていう?

野末:そうですね。その後京都で4、5年ほど塾の先生をやりながらプラプラしてたんですけど、それも何かおもしろくないなと思って、こっち(富山)帰って来てそれで今父と一緒にこの仕事を始めました。父がちょうど会社を定年退職だったのでそのタイミングで、父はもう生粋のエンジニアでその経験をもとに何かおもしろいことしたいなというので、私もせっかく帰って来たし何かおもしろいことできたらいいなと思ってこの仕事を父と一緒に立ち上げたという感じですね。

 

●(有)イージー・エンジニアリングの紹介

三木:実際に戻って来られた時はどういうお仕事がメインだったんですか?

野末:会社としては最初は機械設計から始まって、「設計だけじゃなくて機械も作ってよ」ということで機械のモノづくりもするようになって、自動機・省力化機械全般を今やるようになってます。

三木:それは何年ぐらい前ですか?戻って来られたのは。

野末:戻って来たのは2004年だったのでもう14年前です。

三木:全然哲学からモノづくりって違うじゃないですか。どのぐらい修行というか…

 野末:設計っていうのは意外とハードルが高くなかったですけど、モノづくりするようになって理論と現物が全然合わないという、むしろそういう文系理系の壁よりも理論と実際のギャップにすごい苦労しましたね。設計した時に全然動いてくれないという…

宇都宮:公差とか出ますからね。

野末:そうですね。

三木:そのギャップで色々悩んだのはどれぐらい?

野末:それは最近まで悩んでました。やっと3、4年ぐらい前からそのギャップに慣れてきたというか…

三木:こう設計すればこうなるなみたいなのが何となく分かってきた?

野末:そうですね。公差よりも設計して機械として動かしてみると予想もしないことが次から次と起こるんですよ。

宇都宮:CADでシミュレーションできると言っても現実は違うもんね。配線があったりとかエアチューブがあったりとかそこまでたぶん再現してないですもんね。

野末:3DCADを使って設計もしてるんですけど、3DCAD使ってだいぶよくなりましたけど、それでもやっぱり予想もしないことが次から次と起こるので、それへの対応というかこんなに現物と理論って隔たりがあるのかっていうショックのほうが大きかったですね。

宇都宮:お父様もそういう知見はあんまりなかったんですか?

野末:父はむしろ大専門家で、父はむしろそういうのはへっちゃらっていうか…

宇都宮:でも教えてもらえなかったんですか?

野末:教えてはもらったんですけど、やっぱり実感として…

宇都宮:理屈が先行しちゃうわけですね?

野末:そうです。

三木:哲学っていうのは頭の中の世界のことで、モノづくりはリアルな物質の世界、そこをジャンプするのは結構大変なんですか?

宇都宮:時間かかりますよね。体感としてっていうのは。

野末:そうです。あとは現場のおっちゃんの言うことが理解できなかったというか…

宇都宮:感覚的な部分が多いからね。

野末:現場のおっちゃんは感覚で物を言うので現場の専門用語も色々ありますし、最初もう外国語聞いてるような感じ。ノコでハックソー(金ノコ)ってあるんですけど、「ハクソ、ハクソ」って言うんです。ハクソって何だろうなとかそういうことから始まって、現場の専門用語を学んで現場のおっちゃんの言うことも理解してっていうのに慣れるほうが大変。理屈はむしろそんなに難しくはなかったですけど。

宇都宮:でも分かると逆に感覚的なほうが早く伝わるし、分かってしまえば理屈なんてどうでもいいっていう風になって。

野末:そうなんです。そういうことが受け入れられるようになったのはほんの数年前ですね。

宇都宮:時間かかりました?

野末:かかりましたね。それが本当の技能の習得っていうことなのかもしれないですけど、むしろ理屈はそんなに苦痛じゃなかったんですけど。

宇都宮:そっちがむしろ得意だったっていうことですね。

三木:現実が得意じゃない?

野末:ええ。

 

●3Dプリンターの開発と需要について

三木:それから3Dプリンターに興味を示されたのがいつぐらいですか?

野末:2015年の末ぐらいで、その前年ぐらいがメーカーズブームですよね。その時は結構冷ややかに見てたんですけど。

宇都宮:2012年に本が出ましたよね。

野末:その頃はヤマダ電機で売ってるやつのしょぼいやつしか出ないでしょって結構冷ややかな目で見てたので、ただそうは言ってもこの機械っていうのは試作がすごくたくさん発生して試作コストを減らしたいなっていうのが前からの課題で、それで3Dプリンターをやって試作コストを減らしたいなという想いはずっと持ってて。

三木:会社にどっかから買ってきたっていうこと?

野末:買ったらおもしろくないなと思って、機械屋さんなんだから機械自分で作りたいなとずっと思ってて。

三木:それでこちらのものをちょっと説明してもらっていいですか?

野末:3Dプリンターでも色んな方式があるんですけど、こちらは光硬化型の3Dプリンターでこれのキットを最初買ったんです。組み立て前のキットを買って自分で組み立ててこのプロジェクターを付けて、このプロジェクターの光を使って一層ずつ固めていくという…

三木:その液はどこから?材料はどこから入っていくんですか?

野末:材料はここにシャーレを入れてトトトっと入れて、余計な光が入って来ないようにこれを被せてプロジェクターの光で…本当はやる時暗室にしてるんです。暗室って言ってもそんな厳密な暗室じゃないですけど蛍光灯の光ぐらいは消してカーテンして一層ずつ固めていくっていう。ミラーが斜面になってて、ここに垂直に光を当ててシャーレに液体を入れてあるやつが一層ずつ持ち上げると固まっていくという。

三木:でも下から光を当てると全部固まっちゃわないですか?この光がコントロールされてるってことですか?

野末:そうですね。

三木:そのプロジェクターの画面みたいな感じで動くんですか?

野末:そうです。断面図を一層ずつピカッと当てて固めて上げてピカッと当てて固めて上げて…

三木:そういうことね。それでこれ(3Dプリンター)で作ったのがこれですね?すごい精度が…

野末:これは100分の5ミリの層を積み上げて作ったやつですね。

三木:このプロジェクターかなりの光の強さが必要ですね。よく考えたものですね。

野末:このキットを作った人はすごいなと思いましたね。

三木:何人が考えたんですか?

野末:アメリカ人じゃないですかね。リトルRPっていう名前のラピッド・プロトタイピングでRPだと思うんですけど。

三木:これは何か特許化されてるのかな?

野末:特許はないんじゃないですか?

三木:プロジェクターで作るみたいな。

野末:オープンソースだと思いますよ。これを使って何か展開できないかなっていうのが最初の問い合わせのきっかけですね。

三木:なるほどね。その後この3Dプリンターは自社の中でどういう風な展開をして?

野末:ちょっと今まさに生産中で動いてる最中なんですけど、ヤマダ電機でも売られてるようなパターンの積層式の一番よく見かけるタイプもやって、あれが今うちの部品試作の主力になってます。いきなり金属を切削する前にあれで一応検証してみるっていう。

三木:それはもうオーダーメイドで作ったんですか?

 野末:そうですね。それも積層式のキットを中国から2万円ぐらいで仕入れて自分で組み立てて理屈が理解できたので、今度完全に自分で設計して2号機を作ったっていう感じです。

三木:意外とオーダーメイドの3Dプリンターってニーズがあるんですか?

野末:ありますね。

三木:大きさとかなんですか?

野末:そうですね。サイズもすごい重要な要素でサイズと材料ですね。よく言われるのはエンプラ=エンジニアリングプラスチック。よくあるのは「POM(ポリアセタール)とかPP(ポリプロピレン)とかそういうので作れるようになるといいね」「塩ビとかで複雑な形状が成型できるようになるといいね」っていう引合いがあるんです。あと「ゴムで成型できるといいね」とか。

宇都宮:でも材料が必要じゃないですか。3Dプリンター用の。繊維にするのか液体にするのかは分からないけど、そっちは材料メーカーか何かを巻き込まないと…

野末:そうなんです。ところがそれも非常に良い話になって材料メーカーさんはすごい熱心ですね。私もオーダーメイドで独自のエンプラで3Dプリンターやるってなったら材料屋さん巻き込まないといけないから大変かなと思ってたんですが材料屋さんは親切ですね。むしろそういう3Dプリンターというネタだと協力的ですね。

三木:1回できたらそれを横展開したいからでしょうね?

野末:そうそう。材料屋さんはそうしたいんでしょうね。

宇都宮:色んな素材があるじゃないですか。柔らかい素材もあれば固いのとか耐熱もあれば透明度とか色々…

野末:それはこれから盛り上がっていくネタになるんじゃないですかね。水面下ではものすごい期待されてますね。

三木:「こんなおもしろい素材を使いたいよ」っていうのはあるんですか?

野末:1つ代表的な例を言うと、これまで夢物語みたいなものですけど、今金型を使って成型しているような部品を、ダイレクトで3Dプリンターで作れるようになりたいっていう…

三木:それはプラスチック?

野末:プラスチックですね。エンプラ。エンプラも色んな種類があるんですけど。

宇都宮:射出じゃなくって?

野末:射出じゃなくとあるエンプラを…

宇都宮:射出には射出の特性があるじゃないですか。その機械特性を実現するための3Dプリンターってことですか?

野末:要は多品種小ロットを3Dプリンターで生産したいという。それは大変じゃないかなと思うんですけど、その開発過程でエンプラの3Dプリンターを作れるので、それだけでも十分画期的なんじゃないかなと思いますね。

宇都宮:金属系の3Dプリンターは航空企業とか使い始めてますけど、樹脂はそう聞かないですよね。

野末:まだですね。今金属の3Dプリンターがペイするのは航空業界だけだと思います。機械本体があまりにも高すぎるので。

三木:1億円ぐらいしますよね?

野末:そうです。減価償却回収できるのは航空部品だけでしょうね。

三木:お客さんは一般の3Dプリンターじゃなかなかやりにくいんですか?

野末:一般の3Dプリンターだと材料が限られている。ABSとPLA(ポリ乳酸)ぐらいしかできない。一般的な3Dプリンターだとすごく安いですけど材料がショボいので…

宇都宮:製品にはならないということですか?試作としては使えるけど。

野末:試作としては使えるけど製品にはならない。

宇都宮:耐久性の問題とか意匠性の問題とかそういう辺り?

野末:そうですね。耐久性と意匠性両方でしょうね。あと精度と。

三木:お問い合わせがあるのはこの北陸エリア?

野末:北陸とは限らないですね。関東からも問い合わせはありますね。

宇都宮:どういうツテで?

野末:それこそzenschool経由でもありますし、私はFacebookで色々情報発信してますのでFacebook経由で色々引合いはあります。

三木:日本中にそういう特殊3Dプリンターのニーズは結構あるかな?

野末:ありますね。

宇都宮:日本以外はどうなんですか?海外からはまだそんな…

野末:海外から問い合わせはないですね。ただ3Dプリンターで言うと海外のほうが進んでますね。日本は結構遅れてますね。ただ水面下での期待は日本でもすごく高いです。ところが日本の3Dプリンターを扱ってる人っていうのは、結構おもちゃ志向になっちゃうので、全然日本国内のニーズには応えてないだろうなというのは思います。

宇都宮:この前ラトビア製の3Dプリンターとか買ってませんでした?

野末:そうなんですよ。来ました。

三木:どんな感じですか?ラトビア製は。

野末:ラトビア製はまだちょっと運用してないんですけど結構すごいですね。いわゆるゲンコツロボット(ファナック株式会社)方式、パラレルリンクで背が高いんです。だから結構これぐらいのモノが作れちゃいますね。

宇都宮:そうなんですか?Z方向が高い…

野末:Z方向もすごい高いですね。

三木:この三角方式?こういうやつ?

野末:デルタ式っていうやつですね。あれだとスピードも速いし。

宇都宮:まだ来ただけですか?

野末:来ただけです。早く使いたいんです。

後編に続きます。

野末雅寛さん
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イージー・エンジニアリングWEBSITE
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