
第158回MMS「AI時代に必要とされる税理士業を目指す」前編 むさしの税理士法人 代表社員 奥村 太久実さん
●ご挨拶と出演者紹介
宇都宮:本日は第158回MMS、収録日は12月28日という年末の慌ただしい時期を収録に来ております。本日のMCはいつもの三木さんではなくてenmonoの宇都宮が行います。三木さんは今回カメラ担当ですので声だけの出演ということで。
三木:はい。
宇都宮:本日のゲストは、私の高校の先輩でもあるむさしの税理士法人の奥村さんです。
奥村:奥村です。よろしくお願い致します。
●奥村さんの自己紹介とむさしの税理士法人の紹介
宇都宮:むさしの税理士法人や奥村さん自身の自己紹介をお願いしたいと思います。
奥村:むさしの税理士法人の代表をしております奥村と申します。
宇都宮:こちらは吉祥寺ですよね。
奥村:ここは吉祥寺の本店で今収録をしていただいております。
宇都宮:すごく良い天気で後ろに富士山が眺めるようなロケーションの良い場所で働いておられます。
奥村:ここは富士山がとてもキレイに見えまして、今午前中ですから青空の下で真っ白な雪をかぶった富士山ですが、夕方は富士山が黒いシルエットでとってもキレイなんです。
宇都宮:税理士の相談があればぜひ来ていただければ。
奥村:ぜひお越しください。私は昭和37年生まれで55歳なんですが、大学を卒業して銀行員を10年ほどやっておりました。銀行を退職致しましていくつか考えることがございまして、税理士になろうと思い立ちまして、そこから勉強を…
宇都宮:銀行を出てからなんですか?
奥村:そうなんです。税理士というのは国家試験に合格しないと、資格が取れないものなんです。当然結婚もして子供もおりましたので、仕事をしながら家庭を持って、勉強して合格するという道のりを経て今日に至ります。
三木:退職された時は何歳ですか?
奥村:退職した時が34歳ですね。まだ子供も小さくて、しかも3人も子供がおりますので普通で考えると無謀な…資格を持っていればまだ転身するということはあったと思うんですが。
宇都宮:20年ぐらい前ですかね?
奥村:今から約20年になりますね。96年に銀行を辞めたということになります。そこから勉強を始めてこの道に入ったんですけども、結構簡単に考えておりまして、私は試験が得意だったので2年ぐらい、長くても3年ぐらいで合格するかなと。
宇都宮:奥村さんもっと計算高いきっちりした人のように思ってたんですが、結構ポンと行っちゃうタイプなんですか?
奥村:行き当たりばったりなんです。
宇都宮:詳しく知ってる人はご存じなんですか?そういう性格は。やっちゃったかみたいな。
奥村:どっちなんでしょうかね?人間って両面性があると思うので、その時の環境等により色んな決断をすると思うんですが、実は私が勤めてた銀行というのは最終的に経営破綻をして、非常にその頃から業務環境が厳しくなって、そういった環境もあったんじゃないかなと思います。今からだとなかなかそういう思い切った決断は、難しいだろうなと思うんですが。
宇都宮:資格を取って税理士、最初は個人事業主か何か?
奥村:はい。個人で税理士の開業をしました。ただ2、3年で合格すると思ってたのが結果的には8年かかったんです。最終的に合格したのが2004年。それで事務所を開いたのが2005年だったと思います。
宇都宮:むさしの税理士法人?
奥村:最初は個人でその事務所を開業致しました。私の家が東京の国立にありますので、家の近くで事務所を開きまして、たまたまこちらのむさしの税理士法人の共同代表の静間という税理士から声がかかりまして、「一緒に税理士法人を作らないか?」と。
宇都宮:共同創業の方からお声がけいただいた?
奥村:そうですね。それでちょうど10年前、2007年に税理士法人を作りました。
宇都宮:個人とまた違うものですか?
奥村:法人組織になりますので、例えば個人の場合ですと個人に何かあって、極端に言えば亡くなった場合、その仕事というのは誰か別の人を個人的に見つけて引き継いでいかなきゃいけないんですけど、法人になりますとそれが法人内での引き継ぎになるので、永続性という観点から法人のほうが色んな意味でお客さんとの関係は安定すると思います。従業員からしましても個人に雇われているというよりは、法人の職員であるというほうが何となく身分もあるし安定するし安心感もあるんじゃないかなと思います。
宇都宮:最初声をかけられた時はどういう感想を持たれたんですか?
奥村:やはりある程度は規模を拡大しないとビジネスとしてやっておりますので…
宇都宮:奥村さん自身は拡大しようというのは最初から思ってたんですか?
奥村:はい。1人でやってるとやはり限界もありますので、当時私と従業員2人の3人でやっておりましたので、大きくなってはきてたんですけどスピードも遅いですし、さらにお客さんもたくさんほしいなと思ってたところでしたので、一緒に2人の力でやっていけば、それぞれの異なった経験やバックグラウンド、能力も生かせますので。
宇都宮:割とマッチしたんですね。そのタイミングというのも。
奥村:2人ともバックグラウンドがかなり違うところがありまして、私は銀行員をやってましたし、パートナーのほうは地元密着の個人の税理士事務所をもう30年近くやっていて非常に地域に密着した人脈のある人で、私はどちらかと言うとテクニック的なファイナンス系の色んな題材とかを料理するのが割と得意でしたので、そういう意味では非常にうまいペアリングでやってこれたかなと思っています。
宇都宮:その時はもう吉祥寺で?
奥村:吉祥寺で開業致しました。
宇都宮:それから10年?
奥村:そうですね。今年で気がつけばもう10年ですね。丸9年経過して10年目に入ったところです。
三木:我々もちょうど9年目なので1年違いですね。
宇都宮:僕ら2009年に創業してるんですよ。その頃にお会いしてるんですもんね。
奥村:そうですね。
宇都宮:僕の東京のOBのテニスの会で川端さんの会に行って奥村さんがいらっしゃって。その後僕ら起業したということを奥村さんに一度か二度お話しさせてもらったりしてましたね。
奥村:同じ頃ですね。そういう意味では。
●M&Aされたご経験について
宇都宮:その後10年間税理士事務所というのは色んな変化はあったんですか?
奥村:基本的には少しずつ大きくなってきました。
宇都宮:大きくというのは社員さんが増えてお客さんも増えてという感じ?
奥村:社員の数もお客さんの数も増えてますし、売上規模も大きくなってきて毎年ちょっとずつです。こういう業界ですからあまり急拡大しても意味はないと思ってますので、少しずつ大きくしていきたいなと。実はパートナーと一緒にこれを立ち上げたわけなんですが、元々お互いが個人事務所を持っていましたので、ある種の合併、M&Aをやったというのがこの法人設立のきっかけになって、実は去年2人の税理士さん、1人が2016年でもう1人が2017年、これも大きさで言えばM&Aなんですけども、私どもの事務所にジョインしていただいて、1人の方は実はその後すぐに亡くなってしまったんですが、そちらの事務所を引き継いで、それからもう1名の方の事務所も今年引き継ぎまして、実は今新宿事務所というのを作りまして、その方にそちらをお任せしているという次第ですので、設立10年を経て拠点がこちらと新宿と2拠点、従業員としては今約20名という体制でやっております。
宇都宮:M&Aというかジョインすると良いこともあるし大変なこともあると思うんですけどどうですか?
奥村:あちらのほうからすればもう歳も取られて、意外とこれは体力がいる仕事でもありますので、もう辞めたいなということをお考えだったようなんです。
宇都宮:事業の承継もあって?
奥村:全部任せたいと。お客さんもいらっしゃるし従業員もいますので…
宇都宮:畳むんではなくて何か承継できる方法はないかみたいな。
奥村:そうですね。誰かに任せたいということだったと思うんです。人づてで少し相談があって、「じゃあ私どもでやりましょうか」と。お金の問題というよりかはそれぞれが会ってお話をしてお互いにこの人ならいいかなというのを確認し合って「やりましょう」というお話をさせていただきました。
宇都宮:そこの話し合いの結果が決断に至るんですか?
奥村:そうですね。
宇都宮:合わないという時も中にはあったりするわけですか?
奥村:そういうケースも中にはあると思います。
宇都宮:実際に一緒になって場所も2拠点になるとどうですか?やっぱり広がりますか?
奥村:我々の仕事は例えば人がいれば仕事が増えるわけでもなく、何か広告宣伝を一生懸命やれば仕事が取れるわけでも決してないので、お客さんと職員の動きを見ながらちょっとずつ増やしていくことになると思うので、M&Aをすると単純に合算で1+1=2ということは成立しますが、それを2以上に持っていくというのはまだまだこれからの仕事かなと思っています。
宇都宮:何か今考えておられますか?
奥村:例えば吉祥寺で今対応しているクライアントを、場所がここ(新宿)のほうが近いので新宿のほうに少し移して、向こうのほうでもう少し近い関係で見てもらおうかということをやってみたりしています。
宇都宮:エリアを少し合わせるという?
奥村:そうですね。逆にあちらのクライアントで少し難しい案件とか、難しいテーマのクライアントに関してはこちらのほうで対応することもやってますので、ぼちぼちそういった色んな意味でのシナジー効果が出てきてるかなという感じはしています。
宇都宮:来年(2018年)はそれをもう少し加速させるという?
奥村:そうですね、はい。
●税理士というお仕事について
宇都宮:税理士のお仕事というのは基本お客さんの顧問になってという?僕らも詳しく知らないんですけど。
奥村:税理士というのは国家資格で法律がありまして、法律で専門的に税理士しか認められていない業務というのがあります。それは簡単に言いますと税金の計算を代行するということです。お客さんのために税金の計算をしてあげてそれで対価をいただくのは税理士にしか認められていない仕事なんです。突き詰めればそれが税理士の仕事だろうということになります。
宇都宮:それだけではないと?
奥村:お客さんの数字を全て預かるということですので、すごくお客様の中に、色んな法人の方でも個人の方でも深く知ってしまうわけなんです。必然的に色んな相談事が私どものほうに来るようになって、こちらも数字を見てると気になることが出てきたりして、例えば「これはどうなんですか?」という話をする。そうすると税金計算の分野に留まらず、広く言えば経営全般まで話が広がっていくことが頻繁に起こりますので、そういう意味では経営全般に関しての相談役という役目なのかなと思っています。
宇都宮:最初税金の相談だけだったのが徐々に範囲が広がるというか…
奥村:そうですね。最近は税金のところだけじゃなくもっといろんな相談をしたいので、例えば今の税理士さんだと物足りなくて色んな人を探してて、たまたま私どもに辿り着いて紹介で来られたというケースも結構あります。
宇都宮:そうするとむさしの税理士法人さんは結構受け止められる範囲が広がっている?
奥村:広いと思います。
宇都宮:税金だけじゃなくて経営相談に近いことも場合によっては?
奥村:ありますね。たまたま私が元銀行にいたということもあるので、一般の企業の方とか銀行というとものすごく敷居が高くて、どういう風に対応したらいいのか分からないという方が多いようなんですけども、それは私どもほうで「○○にすればいいですよ」というアドバイスはできるので、そういった仕事は結構あります。資金繰りをサポートするようなところですね。銀行との折衝を私どもがお客さんと一緒にやらせていただくケースは意外とあります。
宇都宮:最近こういう相談があったけどちょっと難しいなというのもあったりするんですか?
奥村:難しいのは色々あります。今世の中で非常に問題になっているのは事業承継です。これはたぶんenmonoさんは製造業によく接触されているのでお分かりだと思います。これはもう製造業に関わらず日本全国で、ちょうど戦後創業されたような会社が今代替わりの時期になっていて…
宇都宮:新聞とかでもよく言ってますね。どんどん事業が黒字だけど(会社が)なくなると。
奥村:黒字だけど継ぐ人がいないとか、後継者がいないわけなんです。例えば子供がいるんだけど別の仕事をやっているケース、それから従業員はいるんだけども「今の社長を見てたらとても大変そうだからそんなの俺はやりたくない」という人もいるでしょうし、そういうケースも含めて事業承継というのは非常に今難しくなっていて、その相談というのは意外に多いですね。
宇都宮:でも回答しづらいじゃないですか?選択肢も限られる…
奥村:色んな問題があって、大きく分けて2つ問題があるんです。非常に良い会社というのは事業承継が難しい面があって、なぜ難しいかというと株式を承継する時に税金がいっぱいかかるというのが問題になっているケースがあります。例えば先代の財産がほとんど会社の株しかない。だけどその株の評価がものすごい高くなっている。業績が良い会社で何十年も長くやってくるとものすごく高くなっている。だけど上場会社じゃないから株を売ってお金にするということができない。そうすると例えば後継者のお子さんが引き継いだ時に多額の相続税がかかってしまうけれども実は財産の大部分が会社の株なんです。キャッシュにするのが非常に難しいケースですとか、テクニックは色々実はあるんですけども…
三木:一回減資をするとかですか?
奥村:会社で買い取ってもらって相続した後でそのお金を作って納めるとか色んな方法があるんですけども…
宇都宮:単に業績が良くて黒字だからって良いことばかりじゃないっていうことですね。
奥村:それが1つと、あとは誰が承継するかということになってきます。後継者が決まっている場合はむしろ稀なケースで、後継者が決まっていないあるいは子供が何人か会社に入っているが、どれが後継者かまだ決めてないというケース、そういう場合は誰に株を持たせればいいのかというのも決まらないわけなんです。後者の事例の応用編が後継者が決まっていない、そもそもいないとか、誰が後継者か決められないケースというのはあります。財産の問題と人の問題が常にセットになっています。
宇都宮:どっちも厄介ですよね。そういう相談をされることが?
奥村:あります。税理士というと財産の税金の問題がクローズアップされるんですけども、問題としては両方になってくるので、そうするとあるケースでは後継者がいないというので「探すのをお手伝いしましょう」と。もちろん我々は探す能力がないので我々のネットワークを使って、例えば人材紹介会社の人を頼って「良い人いませんか?」という仲介的なことをやってみたり、事業承継というのが一番我々として難易度が高い仕事にはなってきます。
宇都宮:これからどんどん増えますよね?奥村さんたちの今お客さんたちも当然年齢が上がってきますし。
奥村:そうなんです。潜在的にはものすごい数のお客さんがそこがテーマになってくるだろうなと思います。事業承継というのは一面の問題ではなくて総合力が我々としても問われて、銀行との関係、人の問題、税金の問題が入ってきます。たぶん我々の一番難易度が高いテーマが事業承継で、逆に我々が一番そこをやらなきゃいけないところかなと思っています。当然M&Aという話がそこに入ってくるわけで、本当に後継者がいなくてどうしようもないということになると「会社を誰かに売りましょう。会社の株を買ってもらおう」というのが必要になってくる。そうすると相手探しを専門にやっている会社を紹介して間に入って、またその相手との交渉の仲介をやってあげるとか色んなアドバイスを差し上げたりします。
宇都宮:奥村さん自身もいわゆるM&Aみたいなことを経験されてるので、そういう経験上お話できたりしますか?
奥村:多少なりとも根拠のある説明ができるかなと思っています。
宇都宮:新宿の方も事業承継してほしくて相談されてっていうのがあって、たぶん業界が違っても同じですもんね。
奥村:その時は従業員の面倒を見てほしいというのがまず要望だったんです。よくM&Aというのはお客さんだけもらって従業員はもういらないと、その後でも従業員はリストラしてとかいうこともどうやら世の中にはあるようですけども、中小企業というのは比較的そういうドライな経営というよりは…
宇都宮:雇用を守って、地域密着で余計そうなる…
奥村:要望としてとにかく従業員を何とか引き継いでくれないかという話は結構あるんじゃないかなという気がします。
宇都宮:その要望も聞き入れて実際一緒になったということですよね?そこは気を遣った感じですか?
奥村:そこは結構気を遣いました。
宇都宮:でも場所が離れてるとなかなか意思の疎通も…
奥村:そうですね。私は行き来を結構しますけど、従業員同士のコミュニケーションというのが必要だなと思ったので、前回enmonoさんにお願いした研修も一緒に合同研修という形で新宿の人もちゃんと来てたんです。それから忘年会も一緒にやろうとか研修も一緒にやろうということで、できるだけ一緒に従業員が集まる機会を作るようにしています。
⇒後編に続きます。
奥村太久実さん
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