NEW「幸福学×イノベーション」トークイベント~『トゥルー・イノベーション』6/13刊行 幸福学の前野教授等を迎え、出版記念イベントも6/8開催~

マイクロモノづくりを支援する弁護士さん

~オープンソース化するモノづくりのこれからを語る~

シティライツ法律事務所 水野 祐

宇都宮:まずは、自己紹介をお願いします。

水野さん:弁護士をやっております。去年12月まで、日比谷にある法律事務所に勤めていました。今年の1月に独立し、enmonoさんともご縁があり、顧問契約をさせていただいています。クリエイティブ系、モノづくり系やIT系の企業さんなどの法律面での相談、契約や戦略のアドバイスをしています。クリエイターを無料法律相談などでサポートするNPO団体、Arts and Lawの代表もやっています。モノづくり系ですと、FabLab Japanのメンバーでもあります。そこでは、これからのモノづくりの法的環境について議論しています。特許庁に登録して特許や意匠を取る方法は、権利化までに時間やお金がかかります。今のビジネススピードについていけず、ペイできないのです。逆にオープンにすることによって競争を取り入れて、より良いものにしていくという考え方が広まってきています。特許も本来はオープンな制度で、20年クローズドした後は、万人に使ってもらえるように公開することが重要だったんですけれど。

宇都宮:今は、大企業が戦うための武器として使っていますね。持っている特許のクロスライセンスをするとか、本末転倒に近い。

水野さん:おっしゃる通りです。ちょっと付加したものを出すなど、さまざまな方法で発明技術を守るクローズドの方向へ行くばかり。でも最近は、オープンな試みについて興味を持たれている大企業さんも増えています。大企業の方が、オープンイノベーションとかオープンソースに対して、危機感が強いですよ。ROSというロボット系のオープンソフトウェアが、中国やアメリカなどですごい勢いで広まっているそうです。ヨーローッパなんかは、EUが企業にソフトウェア開発の助成金を出すほどなのに、日本は各々の企業努力に任されてしまっているだけなのです。

 

宇都宮:ロボット言語が各企業ごとに違いますよね。日本だけ置いてかれる。ロボットといっても、ハードウェアだけでなくソフトの部分もあって、ソフトの中でもデジタル部分は、オープンソースとなるとそこだけLinuxで流通してしまいます。

 

水野さん:Linuxがないと進まないプロジェクトが、どれだけあるか。

 

宇都宮:ハードウェアのコントローラーも、そうなってきていますよね。数値制御のNCもオープンソースがあるし、組み込み型のArduinoもそうだし。

 

水野さん:どこをクローズドして、どこをオープンにして攻めていくのか。エキサイティングな時代になっているのかな、と思います。

 

宇都宮:オープンにしたら、経営判断になってきますよね。それだけオープンソースはどんどん進んでいくし、ハードウェアもオープンソースが進むと思います。以前は図面でしたが、今は3次元モデルが流通しやすくなりました。3次元プリンターが安くなるのと精度が上がってくるのとで、コピーができるようになるでしょう。そうなると、材料や組み付けのノウハウなど、デジタル化できないところに価値が出てくるのでは。価値がある効率よくできないところは、すぐお金にならないので、そこをどう乗り切るか。

 

水野さん:この話は熱くなって、時間を忘れてしまうので、zenmonoの話をしましょうか。zenmonoの利用規約は、ユーモアを加えて、できるだけ読んでもらえる内容にしようと心がけましたよね。そう言うと、お二人から「漫画にしよう」というアイデアが出て。

 

宇都宮:私達のアイコンから吹き出しが出ている利用規約をつくりました。皆さん、利用規約を読まないでしょう。

 

水野さん:漫画調にしている規約もそうですが、何よりも第31条が前代未聞です。

宇都宮:最後に宣言しているんですよね。「本規約に同意したメンバーは、ワクワクしてモノづくりすることを誓うものとします。さあ、一緒に世界を元気にしましょう。」と。zenmonoの会員になるということは、「ワクワクすることを誓いました」ということになるのです。

水野さん:法的には問題はありませんし、私も一緒に作業していて楽しく、勉強になりました。

 

宇都宮:クラウドファンディングでは、お金を投じてもプロジェクトが成功しない限りはモノが生み出されない、ということを理解してほしくて。プレイヤーの方にも、まじめにモノづくりをする義務を負うことを重視してもらいたくて、利用規約について水野さんと話し合ったわけです。

 

水野さん:インターネットを使う側のリテラシーとして、利用規約を必ず読む時代になってくると思います。

 

宇都宮:我々も時代とともに規約を変えていきますし、読まれた方から意見をいただきながら改訂をしていきたいと考えています。

 

水野さん:製造物責任についての規定や、インターネット上にアイデアを上げてしまった時に特許の要件である新規性が喪失する可能性について、規約でカバーしているのも特徴ですよね。

 

宇都宮:マイクロモノづくりは、開発から量産、販売まで、必要なプロセスがたくさんあります。zenmonoにモノづくり系のコアな情報をどんどん掲載していって、「ここに来れば、いろんなリソースが集まっている」と言われるサイトにしたいのです。

 

水野さん:zenmonoはクラウドファンディングがサービスの軸にはなっているんですけれど、サービスのコアは、クラウドファンディング以外のところにあると、お手伝いをしていて感じました。

 

宇都宮:サービスなどは真似できても、enmonoや水野さんがzenmonoに注ぎ込んだ精神は、真似できないと思うんですよね。zenmonoは、「面白いことをしよう」とモノづくりに関わる人が増えるといいなという狙いでやっています。お客さんではなく参加者であり、お金を払うのではなく参加費に近くて。皆がいずれ、プレイヤーになっていって。

 

三木:成功したプレイヤーが次はパトロンになり、サポーターもプレイヤーになっていくという。

宇都宮:未来を考えれば、プレイヤーしか食べていけないと思うんですよ。一人一人が、依存ではない稼ぎができるようになっていかないといけない。

 

水野さん:なるほど。デザイナーやモノづくりメーカーが自給自足をするためのサービスなんですね。農家が畑を持つような。

 

三木:リアルなイベントも、年2回、開催予定です。プレイヤーやパトロン、サポーターの方が集まるオフ会のような、苦労話などを共有していく、新たな出会いの場にしたいと考えています。

水野さん:モノづくりのクラウドファンディングが、実際、モノに触れられない点についてはどのようにお考えですか。

 

三木:触れられないモノをいかに表現していくか、という訓練をモノづくりの人がやっていかないと、広まらないんです。その練習の場となるかな、と。

 

宇都宮:成功事例を増やしていって、それを見てもらって、誰にでもできるんだということを知ってもらいたいです。誰かのアイデアの下請けとなってしまうのではなく、まず、自分で生み出したモノを世の中に出してみてほしい。エンドユーザーが見えてくると、BtoBで提案力が増えるんです。

 

水野さん:BtoCを経験した後のBtoBは、強力なんですね。

 

宇都宮:その代わり、BtoCで揉まれるのはすごくプライドが傷つくし、すごくへこむ。それでもやる覚悟があるか。マイクロモノづくり経営革新講座では、覚悟を問うているんですよ。

水野さん:三木さんも宇都宮さんも、普段はニコニコされていますが、道場(講座)では厳しそうですね。

 

宇都宮:ニコニコ、ワクワクしながらやっていますよ。楽しくないと、厳しさに耐えられないでしょう。

 

水野さん:一度、伺わせてください。僕も、経営者になったので。

 

宇都宮:ぜひ。最後に、水野さんが考える日本のモノづくりの未来について語っていただけますか。

 

水野さん:一つは、排他的独占的なクローズドな知財運用ではなく、オープンな知財戦略や活用が、これからのモノづくりに必要になってくるのではないかと考えています。もう一つは、高齢化社会や不況のなかで、既存の財産や蓄積されているリソースを、ストック社会で運用していかなければならない。価値に変えていかなければならない、ということです。それが、日本の国力に繋がるのではないかと思います。

 

宇都宮:価値をいったんお金に変えてなければいけないというわけではなく、価値と価値を繋げてもいいですし、シェアするのもいいですね。

 

水野さん:価値の基準が増えていくなかで、権利に対するマインドを転換することによって、ビジネスチャンスが生まれることもあります。初音ミクやくまモン、Arduinoなどが、わかりやすい例です。所有権や著作権にしがみついている考えを一度解きほぐして、流動化して利活用していくのが、これからのモノづくりに必要なのではないかと思っています。

宇都宮:ありがとうございました。

’13/6/14 第58回MMS放送(ゲスト:シティライツ法律事務所 水野様)

https://www.youtube.com/watch?v=Sgqb5fcVqWM

 

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