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第136回MMS放送 「鎌倉で新たな提案をする尺八演奏家のご主人&手作りのモノづくりの可能性を追求する奥様」 尺八演奏家 工藤煉山・由希子ご夫妻

●enmonoとの出会い
enmono三木    はい、ということでマイクロモノづくりストリーミング本日も始まりました。本日は第136回、2016年9月3日の収録になります。本日は今、素晴らしいお着物を着られております工藤夫妻に来ていただきまして、ここは私の自宅なんですが、こちらの方で禅とそれぞれのご活動についてお話を伺いたいと思います。本日はよろしくお願いします。

工藤煉山    よろしくお願いいたします。

工藤由希子    お願いします。

※ご夫妻のため今回はこれ以降、下のお名前で表記いたします。

三木    煉山さんの方はこちらにありますプロフェッショナルの尺八演奏者ということで今売り出し中ということで。

煉山    はい。

三木    奥様の方は前の方にありますお着物の生地ですけども、これは洋裁というんですかね、和裁というんですかね。

由希子    うーん(笑)。

三木    着るもののデザインをされているということで。お二人と我々の出会いは、私が禅2.0という禅のイベントを来年鎌倉でちょうど1年後企画しておりますけども、そのイベントの準備委員会でお二人にお会いして……というところが出会いのきっかけになります。
三木    お一人ずつ今やっていらっしゃることを簡単にプレゼンテーションお願いできますでしょうか?

煉山    はい。尺八の演奏家として鎌倉中心に都内、全国で演奏しているんですけども、今特に力を入れているのは、意外に呼吸をちゃんとできる人が少ないということで――毎月第2木曜日、原宿で「呼吸と尺八」というイベントを行っています。
煉山    あとは子どもにも尺八を教えたいなということで、この塩ビ管なんですけど、3歳から尺八が吹けるようにできるという――大抵早くても10歳くらいなんですけど――これを使うと3歳から尺八が勉強できるっていうのを工房の人と開発しまして、これを今全国的に広めたいなと思って活動を起こそうと思っているところです。

三木    子どもの頃から尺八演奏というのはなかなかない発想なんですけども、それはどういうところから?

煉山    やっぱり10歳11歳になってしまうと、いろんな価値観がついてきてしまうので、その価値観がつかないうちに呼吸法とか日本の文化に触れるということがすごく大切なことなんじゃないかなと思って、今まさに取り組んでいるところです。

三木    なるほど、ありがとうございます。それでは奥様の方、よろしいでしょうか?

●お裁縫のチクチクって響き、いいですよね
由希子    はい。工藤由希子です。私は普段は企業のデザイナーをしてるんです。

三木    服飾の……。

由希子    服飾のデザインと洋服のデザインをしていて、何年もやっていると由希子村ができるほどの服を作っているんですね。1シーズン何万枚。

三木    由希子村。

由希子    1万枚とか1シーズンで作ったら、それが合わさっていったらすごい村ができちゃうくらい服を作っているんですけど、いったいその服はどこに行ってどうなっているんだろう?
由希子    見えないところで作られて、見えない人が着て、消費されて廃棄されて……ちょっとアウトレット覗いてみると、「あー、墓場を見てしまった」みたいなね。

三木    ああ、自分のデザインしたものが……。

由希子    いっぱいあるとか、そういう中に何年もいる間にすごく原点に戻りたくなって。ただシンプルに針と布さえあればチクチクできるのがやりたいなーと思って、どんどんチクチクし始めたら、どんどんチクチクし始めて、最近ではワークショップをやり始めたり。
由希子    昼休みとかにチクチクしてるんですけど。

三木    作られたものを紹介していただいてよろしいですか?

由希子    はい、まずこれは帯なんですけど、全部手縫いなんですね。4メートルあって、全部で8メートルを手縫いでいくんですけど、この部分も全部手縫い。

三木    これ、元々はバッグの端切れというか……。

由希子    そうですね。元々はこれ私の小さい頃に着ていたものの生地なんです。母が3年前に亡くなったんですけど、こういうやりかけのパッチワークを遺していったんですね。これ全部手縫いでできてるんですけど。これも私が小さい頃着ていた着物の生地。

三木    ハート型。

由希子    そう、ハート型。で、これはもったいないなぁと思って、まずこれをいったんほかの生地と剥いで帯にしたものがこれ。
由希子    ネパールに行った時にネパール織っていうのがあって、素敵だなぁと思って、生地を買ってきて、それでできた帯。

三木    今、煉山さんがされている帯も。

由希子    これは龍のイメージ。

三木    龍の鱗のような。

煉山    ドラゴン帯ですね。

由希子    これは8メートルで、これはひたすらワーって感じで。ただ単純に、シンプルにチクチクチクチク。
由希子    ちょっとクレイジーなのがこの布巾なんですけど、後ろとかワーって感じなんですけども、ただもう無心で、余計なことを考えずに。

三木    マインドフルな感じで。

由希子    そう。売れるとかそういう問題じゃないし、これが上手だとか下手だとかそういうものでもないし、ただただ行く。

三木    自分の世界、ゾーンに入っているわけですね。

由希子    できれば新しい布じゃなくて、もう使ってしまっている布とか、あるものでやりたくて。買うことはほぼないんですね。

三木    巾着みたいのもありましたよね。

由希子    これは日本酒のイベントに……。

煉山    日本橋にある日本酒利き歩きのイベントで作ったんです。

由希子    参加させていただいていて、利き歩きのおちょこを入れて首に提げて、中に布巾が入っていて、(おちょこを)拭きながら。これもかなり小さい、こういうこれくらいの小さいもの(端切れ)も捨てないでとっておいて、全部繋げて。もうゴミみたいなものもとってあるんです。

由希子    あとは今度のワークショップでブックカバー。こういう感じで生地を。

三木    ちょっと見せていただいてもいいですか?

由希子    はい。

三木    かわいい。これをワークショップでやる。

enmono宇都宮    意外と手芸という範疇。

由希子    そうですね。いわゆる手芸です。裁縫? 私は和裁のプロでもなんでもない、ただのデザイナーで裁縫が好きでというところから来てるんですけど、すべての原点は実はこの中にある、この汚い生地なんです。

三木    すべての原点?

由希子    そうなんです。この汚いバラ色(柄)の生地――昔綺麗だったんですけど――幼稚園の時、実家の裏が布団屋さんでそこに生地が売っていて、この生地が売っていてすごくかわいくて。
由希子    どうしても欲しいって買ってもらって、その後に幼稚園の布団とかに色々なって。

三木    それは誰に……?

由希子    母にお願いして。自分が留学する時に母がこのバッグを作ってくれたんです。で、開けたらあの布団の生地だったんですよ。「えー、あったの? まだ」と思って。
由希子    よく見たらこの(表の)生地が私が初めて作ったワンピースの生地だったんですね。「わー、これはすごい。こういうことか!」と思って。

三木    想いが繋がっていくんですね。

由希子    そうですね。なんかこう、こういうものなんだと。

三木    布の中に人々の想いが繋がって作品ができていくという。

宇都宮    ミシンとかではなく手縫いなんですか?

由希子    そう、手縫いなんです。これもチクチク。色々調べたら日本ってこういう小さい生地を近所から集めて……100枚集めて百徳着物、子どもの幸福を願う服とかそういう想いが入った生地を人からどんどん集めて作るとか。古い布で禅の袈裟を作ることもあるとか知ってきて、なんか無意識的にそういうのが好きなんだなと思って。

宇都宮    お母さんも作られてて、それを真似て育ったんでしょうか?

由希子    そうなんですよ。ここら辺も母の手縫いでやったものなんですけど、これも私のワンピースなんですよ。今思うと。
由希子    これも亡くなってから出てきて。

三木    これは素晴らしいですね。ジーンズですか?

由希子    ジーンズでよく考えると、私この色のオーバーオール持ってたなって。

三木    これはすごいですね。ジーンズをこういう風にしたんだ。これはお母様が?

由希子    母が作ったんですね。

煉山    これ裏見ると本当にジーンズだね。

由希子    すごいです。

三木    表はこんなに綺麗なのに。

由希子    ここら辺がインスピレーションになって、私も見えないところでモノを作ってる場合じゃないと。手元で作ろうと思って。

三木    まさにマイクロモノづくりだ。

由希子    会社にいる時はそういう大量生産のものを作るけど、自分でやる時は手元でやりたいなと思って。

三木    今のお話すごく面白くて、大きなメーカーにいるエンジニアとかが、そういう大量生産はちょっと疲れちゃったみたいな人が結構増えてきて。

由希子    ああ~……。

三木    自分の作りたいものを作りたいということで今ファブラボとかそういうところで、手作りに近いものをどんどん作っているんですね。それに近いと思います。

由希子    かなり一緒ですね。モノが違うだけで、そうです。一緒です。

宇都宮    作りたい人同士が作ったものを見せ合うイベントもあったりとか。

三木    デザフェスとかご存じですか?

由希子    あ、知ってます~。デザインフェスタとか学生の頃出てました。あれもどんどん大きくなってきて、しかも出るものもすごくクオリティが高くて。

宇都宮    販売もされますしね。

由希子    そうですね。

●禅と尺八
三木    お二人がやっていることは違うことなんですけど、その中心にある想いというのは、僕はなんとなく近いものがあるのかなと思います。僕はそれが禅的なものだと感じますがいかがですか?

煉山    やっぱり禅だと思いますね。尺八を吹いていると――教えていてもなんですけど――ただ単にこれを1日1時間練習したからといって、うまくなるような楽器ではなくて、やっぱり日頃の姿勢とか呼吸とか、もっと言うとこういう人との接し方とか、すべてが音になるので、そこがもう禅的だなと思っていて。
煉山    自分は昔、本当は怒りっぽかっただとか。

三木    そうなんですか? 意外な(笑)。すごく温和な感じですけども。

煉山    すごく本当は几帳面で、しかもせっかちで、っていう性格だったんですけど、そうするとそれが音に出ちゃうんですよ。これはマズいなぁと思って、性格も穏やかに過ごしたいなと思っていたら、嫁と出会い結婚して、今はだいぶ嫁の影響で穏やかに生きられるようになったんです。

三木    そうなんですか。素晴らしいですね。奥様と一緒にいらっしゃってなにが穏やかになるポイントだったんですか?

由希子    いやぁ、私は全然怒んないんです。

煉山    なにをやっても怒らないです。神のような。

由希子    仏ですよ。怒ったことないです。きっと私に怒られた人っていないかもしれない。プンプンしたこともない。溜めこんでるんです。

煉山    いや、溜めこんでないでしょ。

由希子    忘れちゃうのかな。

煉山    怒らない、いつもボーッとしてられる、その柔らかな感じ、アンニュイな感じとか、まさに嫁を見ていると禅だなと思います。それでやっぱり普段仕事をしているとイライラすることもあるじゃないですか。それはかえってよくないと。なので、尺八だけの練習に限らず、やっぱり人との接し方とか、ものの考え方とか、もうすべて禅的な考え方に直そう、しようと思って。

三木    それはいつぐらいから?

煉山    2~3年前ですね。

三木    ご結婚されたのは?

煉山    2~3年前だよね?

由希子    うん。

三木    2~3年前(笑)。

煉山    アバウトな(笑)。今年で3年目。2年ちょっとですね。

三木    じゃあ、結婚が煉山さんの人生を大きく変えた。

煉山    変えましたね。その頃やっていたのは、人に受けがいいとかいう音楽もやってたんですけど、どうしてもそれって長続きしなかったんですよ。頼まれてもそれ一発で消えたりとか。向こうからも「聞きやすい音楽でお願いします」って言われて「わかりました」って引き受けるんですけど、それも長く続かなくて。

煉山    その頃ちょうど某ホテルで一人で演奏してくださいっていう仕事を頼まれまして、尺八1本で30分吹いて30分休むっていうのを2時から6時くらいまでやってるんですよ。

三木    それはお客さんに対して?

煉山    ロビーでの演奏なんです。それを最初、無理ですってお断りしたんです。そういった尺八1本で長い間吹くっていう演奏とか曲がなかったので、一般的にもないのでお断りしたんですけど、どうしてもって言われて引き受けて、自分でも曲を作りながらやってるんですけど、まさにそれがいいきっかけになって。
煉山    ロビーなのでお客さんは友人知人を待っている人とか、食事を楽しんでいる人とかで、全然こっちを見ないわけですよ。なんですけど、聞いている人はやっぱりいて、また、ちゃんとオープンマインドで演奏すると聞いていなかった人も聞くようになる。感動して拍手をいただけるっていうのが、「あ、これだな」と思ったんです。


煉山    今まで、「聞かせてやろう」とまでは言わないですけど、「これが尺八だ」とか「どうだ!」というのをやってたんですけど、一歩引いてもう空気の中にいるような。

三木    自我がない感じの、空気のような尺八。

煉山    そこが自分に向いていたというか。自分のパーソナリティと合致して、今に至っているような感じですね。それからは一人で演奏する機会がなぜか増えたりとか、不思議なんですけどどこに行っても「一人でお願いします」と。ちょっと寂しいですけどね。友達ほしいなと思ってるんですけど(笑)。

三木    ちょっとそれに似た話があって、欧米の方が座禅とか瞑想の道に入って、真面目だからすごい一所懸命悟りの道を切り拓こうと思ってやるんです。だから途中まですごい勢いで瞑想・座禅が進化するらしいんですが、ある一定の段階に達したところでそれ以上、上に行けなくなる段階が来る。
三木    特に欧米の方が多いらしいです。『アップデートする仏教』という本を書いている山下良道さんのお話で、欧米人の考え方って「I have ~」とか主語が私なんです。「私は瞑想やってここまで到達する」「私」「私」っていうのがあまりにも強いから、エゴを超えられない。だから欧米人はそこで頭打ちになる。

煉山    なるほど。

三木    日本語って主語がなくてもよくて、最初は「私」が悟ろうと思っているけども、瞑想をやっていると段々主語がない、「私」がない、青空になっていくような考え方へと超えていける。結構アジア人はその先に行ける人が多いそうです。

煉山    まさに演奏していてそれをすごく感じますね。やっぱり自分も演奏していると本当に「無」の状態なので。

三木    マインドフルなゾーンに入ってるんですね。

煉山    まぁたまーに「あー、早く終わってビール飲みたいな」とかありますけど、日頃は真剣に吹いていて。

宇都宮    それも音に出るんですかね。

煉山    ビール飲みたいっていうのが、みんなジュルってなるかもしれないですけどね。

enmono    (笑)。

煉山    でもまぁ、普段はちゃんと集中して、それも修行なんですけど、演奏しているので。自分が穏やかな演奏をしていると、聞いている方々も穏やかになっていくのを感じるんですよね。それが一番大切だなと思っています。
煉山    盛り上がろうと思ったらみんな盛り上がるのと一緒で、今ショウビズみたいなので盛り上がる音楽っていうのが結構多くなって来ているんですけど、意外にシーンとした中でジワジワ味わう音楽っていうのも、ひとつこれからいいんじゃないかなと思っていて。
煉山    そこら辺も尺八を聞いていただこうというよりは、みんなでリラックスして穏やかになって、という。嫁のオーラを感じて僕が穏やかになったような、そんなことをやりたいなという風に思ってますね。

三木    とってもわかります。なんというか、今スポーツなんかでもマインドフルランニングだとかマインドフルトレイルランニングだとか、マインドフルと組み合わせたアクティビティというのが結構増えていて、競ったりするのはそろそろいいという人たちが増えてきてるんですよね。もう疲れちゃってるんです。
三木    だからアクティビティはオリジナルのままなんだけど、そこにちょっと瞑想を組み入れたりとか。この尺八も音楽を聞きながら同時にリラックスというかマインドフルになっていくという、半分瞑想状態で。

煉山    そうですね。

●今の社会人、特にサラリーマンは呼吸が浅い

三木    ワークショップの中でもやられてましたよね?

煉山    先程話した「呼吸と尺八」という月の第2週の木曜日にやっているもので、今の社会人っていうとちょっとアレですけど、サラリーマンって、尺八を教えると呼吸が浅くて、尺八を教える前に呼吸からどうしようかっていうのを伝えないといけなくて、「あ、そうか。今の働いている人は呼吸が浅いんだ」ということで、まず呼吸法から教えて――で、「ちょっと待てよ」と。「呼吸を教えたらそのまま座禅的なことができるじゃないか」と。
煉山    尺八って歩きながらで聞くよりも、じっくり聞いてもらった方が、息遣いとか音以外のものが伝わるような気がして、呼吸法をお伝えしてリラックスした後にマインドフルネスをしながら尺八を聞いていただくというイベントをしていますね。

三木    素晴らしいですね。

煉山    これが終わると結構みんなすっきりして。なかなかみんな逆に帰ってくれないという(笑)。

三木    私もこないだ参加させていただいて、瞑想しながら尺八の生演奏を聞くというとても心地よいワークショップでした。
三木    さっき今の現代人は呼吸が浅いとおっしゃっていましたけど、たまたま先々週かな、ある大企業の方から相談を受けて、気持ち的に不安になっちゃってるとかヤバイというので、一回横須賀の禅のお寺にお連れしたんですよ。
三木    私が瞑想とか座禅を教えるより、プロの方がいいからお連れして、その和尚さんもおっしゃってたんですけど、今の現代の方は深い呼吸ができない。だからそういう呼吸をするように身体をほぐしてから座ってください。座っている間も深い呼吸をできるように心がけてくださいと。
三木    そのお連れした大企業の方は最初の10分くらい呼吸ができなくて、どうしたらいいですかと和尚さんに教えていただく中で段々と本来の呼吸に目覚めて。3回目くらいで姿勢もできて、呼吸もできてきたので、(現代の人は深い呼吸を)忘れているんだなと。
三木    仕事している時って息とか止まってるんですよね。

煉山    あと、呼吸筋というのがあって、例えば背中がガッチガチになってしまうと横隔膜が下がらないとか、そういった問題もあって、自分のワークショップもまず身体をほぐすことからやって、それからですね。

●龍声
三木    今日はせっかく尺八を持ってきていただいておりますので、ぜひ煉山さんに一曲、龍にちなんだ曲を演奏お願いできないでしょうか?

煉山    はい。よろしくお願いします。

※演奏

三木    お疲れさまでした。ありがとうございます。

宇都宮    素晴らしい演奏で。

三木    「龍声」という曲で、龍の息遣い。

宇都宮    龍の声で「龍声」なんですか?

煉山    そうです。

三木    初めてこの曲を聞かせていただいたのが最初の出会いでしたね。去年の春くらい。鈴木さんのイベントで。

宇都宮    あ、お茶の水の? 「禅と経営」っていうすごいテーマの。

一同    (笑)。

三木    演奏している時ってどういう気持ちなんですか?

煉山    なにもないですね。本当になにもないです。オートマティック。考えると失敗しますね。ふと我に返って、あと1小節先なんだったっけ? となっちゃうともうダメなので。

宇都宮    曲の上では曲調とかあるはずじゃないですか。でも考えてはないということですか?

煉山    もうインプットされている感じですね。

宇都宮    じゃあ「龍声」となるとスイッチが入って……。

煉山    ポチッと。あとは演奏されるみたいな。

宇都宮    で、次の曲になると……。

煉山    またポチッと。

宇都宮    そうなんだ(笑)。

煉山    そんな感じですね~。

三木    いわゆるマインドフルな感じなんですかね。

煉山    もうマインドフルですね。曲よりは遠くで鳴っている音を聞いて、それに自分の身体を合わせていくみたいな。

三木    響きって、音の反響みたいなのって重要なんですかね。

煉山    重要ですね。

※尺八を吹く。2種類の吹き方。

煉山    音幅が違いますよね? 今ちょっと大げさにやりましたけど、部屋に合った音に調整していくっていうのをリハーサルでまずやって、またお客さんが入ると変わるので、段々順繰り順繰り。どっちかというと曲というより自分はそっち側にポイントを持っていってますね。

宇都宮    外の音の聞こえに反応してるということですか?

煉山    というよりは反響とか、人が入ると反響が減るので、そこでやっぱり吹き心地が変わるんですよ。これが不思議とすごく変わるんです。
煉山    尺八の場合、それが顕著に出るので、そこの調整をしないでやっちゃうと、演奏ボロボロになってしまうんです。

三木    どういう風に調整するんですか?

煉山    音を出していくだけで調節ができます。

宇都宮    呼吸の仕方とか?

煉山    どちらかというと口の(形の)作り方とか。微妙な匙加減で、音の幅の出し方によって変わってくるんですよ。響かないようにするには音の密度を高めて当たりを強くする。力を抜くとか、そういった匙加減がとっても必要になってくるので。

三木    それを会場に入って、お客さんが入ってきたりして、ちょっと音を出してみて反響を確かめるんですね。エコーみたいな。

煉山    そうですね。あとは歩いて一番響くポイントを探してっていうのをやりますね。どんな部屋でもやります。

三木    今日の響きはいかがでしたか。

煉山    最高でした。

一同    (笑)。

●音楽の受け止め方には国民性がある
三木    海外の人の前でも演奏するんですか?

煉山    そうですね。まず、自分が大学を卒業してから、この狭い日本が嫌になり、ロンドンに――1年間だけなんですけど――行っていたので、その時にたくさん。

三木    演奏するために行ったんですか?

煉山    演奏するため、もあります。一つはその当時は逃げ出したかった。邦楽の世界の狭いところから逃げたかったっていう。で、海外から日本を見たい。日本の文化を見たいっていうので、最初尺八はストリートで演奏してたんですよ。

三木    ロンドンの路上で。

煉山    はい。地下鉄の通路とかで。

宇都宮    怒られたりしなかったですか?

煉山    怒られたことはなかったですね。

三木    どんな感じでした?

煉山    ロンドンのお婆さんが急に横に座ったんですよ。ベンチのところで座りながらやってた時に。お婆さんがずっと隣に座っていて、「あー、どうしようかなぁ……」と思ってたんですけど、終わったら「すごく心に響きました」というので1パウンド、ちゃりんって入れてくれたことは今でもすごく覚えています。

三木    ストリートでやっていて、それからなにかありましたか?

煉山    ありましたね。ストリートでやっていたら、急にジャズピアニストの方に声をかけられて、自宅まで招かれて、ホームパーティで演奏をし、っていうのもありましたし。
煉山    あと、知ってる人は知ってるんですけど、アジアのスーパーがあるんですよ。そこで演奏をお願いして、演奏してたんですよ。そしたらガーって外国人が近づいてきて、日本語で「僕も尺八やってたんです」って。

enmono    (笑)。

煉山    「えっ!?」って思ったら、なんとその習っていた師匠が、僕の師匠の師匠に習ってたという、まぁ狭い世の中だなぁという。で、友達になり今でも続いているんですけど。
煉山    あとはその伝手というか繋がりで太鼓の人と知り合って、BBCとかオーケストラと一緒に演奏するところまで発展したという。
煉山    でも、ずっとはいられないなと思ったんですよ。演奏者は日本から呼ばれてくる方がほとんどだったので、自分もちゃんと戻って地に足を着けた演奏をしなければいけないなというのがありましたね。
煉山    帰る前に1ヶ月間バックパッカーでギリシャまでまわって。

宇都宮    ヨーロッパを?

煉山    ヨーロッパをまわって路上でパフォーマンスしてきたという。

三木    反応はちょっとずつ違いました?

煉山    ドイツとか、しっとり系――と言っていいのかわかりませんけど――そういうところでは受けがいいんですけど、イタリアみたいなラテン系の血が流れているところは「おーっ↑ ああぁ……↓」みたいな(笑)。

宇都宮    寒い地域がいいんですかね。

煉山    寒い地域はよかったですね。じっくりと聞いてくれて。

宇都宮    じゃあ北欧とかがよかったかもしれないですね。

煉山    そこまで辿り着かなかったですけど。面白かったですね。地域性がすごくあります。ロンドンではクラブで吹いたこともあったんですけど、意外と反応よかったですね。

三木    みんな静かに聞いてくれたんですか?

煉山    いや、その時はズンタッ ズンタッ ズンタッ ズンタッ パオォォー! みたいな(笑)。

三木    1年間ロンドンにいて、バックパッカーをやって戻ってこられた後はどんな?

煉山    それからは結構四苦八苦しましたね。なにやっても人が来ないんですよ。

宇都宮    演奏会とか。

煉山    自分で作曲家に頼んで結構シンセサイザーとかを使って聞きやすいように作ったんですけど、まったく人来なかったですね。悩みに悩んでました。
煉山    だから今の形ができあがったのは本当に3年くらい前ですね。

三木    尺八一本でいくと決めたのはこの3年くらいですか?

煉山    ずっとは思っていたんですけど――小学校の頃から思っていたんですけど――小学校の色紙で僕は尺八になるっていうのが出てきましたので。
煉山    でもやっぱりこういうスタイルで行こうというのを決めたのは本当に3年くらい前。さらに言うと、これでいいんだと思ったのは去年くらいですね。
煉山    やっぱり自信を持って演奏はしているんですけど、このスタイルでいいのかなぁというのは常に、どんな方でも考えるのかもしれないですけど。

●鎌倉で暮らすようになって得たもの

煉山    あとはこの鎌倉には嫁と一緒に来たわけですけど。

三木    どのくらいですか?

煉山    今年で3年。結婚と同時に来たので。前々から鎌倉に来たいねという話をしていたんです。

三木    鎌倉に越してきてなにかありました?

煉山    ありましたね。一つは嫁みたいな方たちがたくさんいるので。

由希子    私みたいな?

煉山    もう小さいことは気にしないみたいな、穏やかおおらか。あとは一番よかったのは三木さんともそうなんですけど、そういった同じ考え方をしている方々が多く住んでいたというのがすごくよかったと思います。
煉山    そこで自分のマインドも「あ、やっぱり鎌倉に来てよかったんだ」という想いになったので。

三木    東京ではそういう人にはあまり……。

煉山    ん~。出会えなかったですね。

三木    コンサートとかに行くと、そういう尺八が好きな人がたくさんいると思いますけど。

煉山    ……そうですねぇ……。

三木    だけどちょっとアレなんですね。自分のライフスタイルとは違う。

煉山    なんか一緒じゃなかったですね。今はもうガッチリ合ってます。鎌倉って歴史があるので、そういったものがまた文化を育てるとか、モノづくりを育てるんじゃないのかなと思っているので、そういう意味で鎌倉というところが、すごく人もいいし……というところで(奥様に向けて)なにか話すことはありますか?

由希子    ちょっと妄想してました。

三木    どういう妄想を(笑)。

由希子    いや、この茶色の糸開けてないなぁ。茶色の生地ってないんだぁみたいな全然関係ないことを。

一同    (笑)。

煉山    こうやって癒やされています。

●これからの日本の○○
三木    はい。まだまだお話は尽きないですが、いつも皆さんに最後の質問をしておりまして、これからの日本の○○について。

由希子    おぉ!

煉山    ああ……。

三木    その○○は自分で入れていただくんですが、まず煉山さん。

煉山    僕からですか。○○について……。

三木    こういう風になったらいいなぁという想いですね。

煉山    尺八とは関係なくなっちゃうんですけど、「これからの日本の呼吸」。

三木    いいですね。

煉山    特にサラリーマンの方は呼吸が本当に浅いので、尺八もそうなんですけど、まず自分が呼吸の伝道師になりたいなと。呼吸の仕方をちゃんと伝え、できるようにどんどんしていけば、皆さん穏やかな性格になって、オラオラ系の上司もオラオラ系にならなくなると。

宇都宮    もしかして寡黙な人は呼吸が深いんですか?

煉山    え~、結構深いと思いますよ。呼吸ができれば人が変わり、社会が変わる。なので優しい日本を目指して呼吸を伝えていきたいと思っています。
煉山    子どももですね。最近子どもも呼吸が浅いんです。皆さんしっかり呼吸をしましょう、ということですね。

三木    ありがとうございます。では奥様。

由希子    じゃあ、「これからの日本のモノづくりについて」。禅じゃないけど今がわかるモノづくりをやっていかないと、下手でも上手くてもいいんだと思うんです。そのアーティストが有名でも有名でなくても。今がわかるものをやっていかないと、どんどんクリエイティビティというのが減衰していくような気がして。
由希子    今までって世界に誇る伝統技術がいっぱい日本にあったんですけど、それが職人だけじゃなくて普通に一般の人もこういうものをなにか作れる人種だったろうに、もうできないと思う。それがちょっともったいないなと思って。


由希子    ブランド志向ではない、もうちょっとパーソナルなもの作って、自分たちで使えるように……。

煉山    お祖母ちゃんとかお母さんが自分の持ち物を作ってくれたよね。

由希子    今でもある。パーソナルで、かつオリジナリティのある。

三木    大企業の作るものはみんな似通ってきていますから。

由希子    そう。ブランドロゴを取ったらどこのものかわからない、そういうモノづくりになってきて。私自身も企業でデザイナーをやっていて、これはクリエイティブは死んでるなと思いながらやっていて……。

宇都宮    クオリティコントロールの観点からすると同じものでなければいけないし、クリエイターからするともっとバラツキがあった方がいいよねという……。

由希子    モノの均一感はあっていいと思うんですけど、それしかないものとしてみんな生きていくのが危ないなと思っています。こういうもの(パーソナル・オリジナルなもの)がある上で、大量生産品があるって意識しながら生きていかないと、なんかこうプラスティックワールドになるんじゃないかなと。
由希子    そんな感じで。

三木    ありがとうございます。というわけで、本日はマインドフルなお二人に来ていただいて、本当にしっとりとした気持ちになりました。どうもありがとうございました。

煉山    ありがとうございました。


 



▼工藤煉山さん
https://www.facebook.com/lenzankudo.officialwebsite/

▼工藤由希子さん
https://www.facebook.com/yukiko.kudo.sarume/

▼WEBSITE
http://www.lenzankudo.com/

 

 

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