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第131回MMS放送「大学教授とベンチャー企業経営の傍ら、手作りの東風笛(こちぶえ・竹製の笛)でアレンジ曲の演奏を楽しむ」前編 東京理科大学薬学部生命創薬科学科 和田猛教授

●大学で創薬の研究をしつつ、ベンチャーを創業し、笛も作って演奏する
enmono三木    はい、ということで第131回マイクロモノづくりストリーミング本日も始まりました。司会は株式会社enmono三木でございます。本日は東京理科大学にお邪魔しまして、和田先生の研究室で色々と楽しいお話をさせていただければと思います。和田先生、よろしくお願いします。

和田    こんにちは。東京理科大学薬学部の和田と申します。よろしくお願いします。私は東京理科大学の薬学部で有機化学というものを教えておりまして、研究の方は薬を作る研究をしています。大学で教授をやっているだけではなくて、ベンチャーの取締役もやらせていただいておりまして、それだけじゃなくて趣味の方では自作の竹笛を作って演奏するというような、そういう活動もさせていただいております。今日はその辺の話をさせていただきたいと思います。

三木    よろしくお願いします。あと、いつもの声の出演で――。

enmono宇都宮    はい、宇都宮です。声だけよろしくお願いします。

三木    そもそも和田先生と初めてお会いしたのが、HYEP(ヒュープ)コンサートというものがありまして、我々のzenschoolの卒業生がオーガナイズしている――大学の先生とか町工場の方とか、色んな方が参加されたコンサートでして、その中で東風笛(こちぶえ)というあまり聞いたことがない笛で演奏されるという方が登場されて、東風笛というから和風な笛なのかなと思っておりましたら、いきなりバッハの曲とかバロック風の演奏を非常に巧みにされる方が出てきて、非常に驚きまして、なんと後で聞きましたら、このお手元にある笛も全部ご自身で手作りで作られたという。

三木    しかもこの東風笛という名前もご自身で考えられたということで。そういったマイクロモノづくりもしつつ、実は大学でも創薬の研究をされていたりとか、ベンチャー企業の創業者であったりとか色々な面を持たれている和田先生に非常に興味を持ちまして、ちょっと私酔っ払って行ったんですけども(笑)。

宇都宮    かなり回ってましたよね。

三木    すごい感動しましたと言ってですね。ぜひお話を聞かせてくださいというところから始まったのが今日の――。

宇都宮    すみません、酔っ払いで。

和田    いえいえいえ、お世話になります(笑)。

三木    まずは先生のお仕事のことを色々伺っていきたいと思います。創薬といっても色々な分野があると思うんですけども、どういうカテゴリーの薬の研究なんですか?

和田    皆さんお薬っていうと、日頃飲まれている風邪薬とかを想像されると思いますけど、私が作っている薬はちょっと新しいタイプの薬でして、DNAやRNAいわゆる核酸と言われる生体分子を――。

三木    こちらにモデルがあります。

和田    そうですね。これはDNAの二重螺旋構造のモデル、こちらはRNAのモデルなんですけども、こういう核酸を素材にしたお薬を作るという、そういう研究をしてます。今まで世の中に出ている薬の大部分というのは、身体の中にあるタンパク質に小さい分子が結合することによって薬として働くんですけども、我々が開発している薬は遺伝子の本体であるDNA、それからRNAという分子が合成されるんですけども、そこに核酸の誘導体が結合することで遺伝子の発現を抑える、まったく新しい作用機序の薬です。

三木    今までの薬の概念を超えた新しいものという理解でよろしいでしょうか?

和田    はい、そうですね。まだ世の中に出ている薬って、たった3品目しかないんですけど、これからどんどん出てくるんじゃないかと期待しております。

宇都宮    効能・効果が違ってくるということでしょうか?

和田    今までのお薬は身体の中にすでにあるもの(タンパク質)に対して働きかけるんですけども、我々の薬はそのタンパク質にもし問題があった時に――それは病気になっちゃうわけで――そのタンパク質が身体の中に合成されないように……。

宇都宮    根本的に治癒させる。

和田    タンパク質の設計図に働きかけて、そのタンパク質を作らないようにしてしまうという、そういう新しいお薬です。

宇都宮    設計変更しちゃうということでしょうか。

和田    変更というか、それをストップするというかですね。悪性の遺伝子が実際に発現しないようにストップしてしまうようなお薬です。

三木    そうすると遺伝子的な欠陥が予めわかっている方がいれば、それを使うことで癌にならないとか?

和田    そうです。今までお薬というのは結構標的としている分子以外にも作用して副作用を起こすわけですが、我々の薬は遺伝情報に対して作用しますから、そういう副作用は非常に少ない。人によってどういう遺伝子を持っているかというのは、ヒトゲノム計画でもうわかっていますので、生命の設計図がわかれば薬自体も原理的には設計できる。

宇都宮    人によって違うということですか?

和田    人によって違うものにも対応ができます。

三木    先生はどれくらいこの研究をされてきたんですか?

和田    私、実はずっと同じ分野の研究をしておりまして、大学4年生の時から今までずっと関連する研究を続けています。もう30年以上になりますかね。というと歳がバレてしまいますが(笑)。

宇都宮    第一人者という感じでしょうか?

和田    この分野では一応そうですね。そう言っていただいていいのかな。

 

●ごく短期間でNASDAQに上場した創薬ベンチャー

三木    なるほど。ベンチャー起ちあげのお話も伺いたいんですけども、最初東京大学でベンチャーを起ちあげられたと。

和田    4年前まで東京大学にいたわけですけども、研究室で開発した核酸を合成する技術を元にして薬を作るという、一番元になる技術を開発していました。その内容は学術誌に論文で発表するんですけども、それを読んだハーバード大学の先生から「ぜひ一緒に創薬ベンチャーを起ちあげよう」というお話があったんですね。

和田    だけど残念ながらその時、特許が国際特許になっていなくて日本の国内でしか権利が確保できていなかったんですよ。で、「困ったなぁ」といったんそのお話は流れてしまったんですが、「だったら国際特許になるような新しい技術をベンチャーで開発すればいじゃないか」というところからベンチャーの起ちあげが始まったということですね。

三木    今までずっと研究をされていた中で、ベンチャーといっても結構色々経営のことをやらないといけないので、そういう戸惑いとかありませんでした?

和田    そういう経営に関してはまったくの素人で、それはサポートしてくださる方がたくさんいらっしゃったので、私自身は一番大事な技術的な面で貢献をする形で参画していきました。

三木    なるほど。ハーバード大学からオファーがあったことに最初驚きはありましたか?

和田    非常に著名な先生からお声がかかったので、「よく論文を読んでくれたなぁ……」と。色んなタイミングも大事でして、ベンチャーを起ちあげようにもそれをやる人材がいるんですよね。ちょうど私の研究室を卒業して、博士号を取ったあとに理研でポスドクをやっていた人がちょうど帰ってきてくれて、起ちあげに参画してくれたんです。

和田    千葉県の施設でベンチャーが誕生したわけですけども、ちょうどその1年後にハーバード大学のボストンの方でも姉妹ベンチャーが起ちあがりまして、そちらの方も我々の合成技術を使った創薬の研究を始めようということで、ちょうどウチの研究室を卒業してドクターを取った学生がもう一人アメリカへ渡って、そちらのベンチャーの起ちあげにも携わったと。

三木    なるほど、同時に二つが起ちあがったと。

和田    そうですね。しばらく日本は日本、アメリカはアメリカで研究を続けて、それぞれ国際特許も取得して、そろそろ一緒に手を組みましょうということで合併して、今のウェーブ・ライフ・サイエンシズ(WaVe Life Sciences)というベンチャーになったわけです。

三木    上場されたのは今年でしたっけ?

和田    上場したのは去年の11月なんですけど、アメリカのNASDAQに上場しまして、日本の大学発ベンチャーでこれだけ短期間に、しかもNASDAQに上場したというのは多分初めてのケースだと思います。

三木    創業して何年目くらいで?

和田    ウェーブ・ライフ・サイエンシズが起ちあがったのが2013年ですから、2年ちょっとです。

三木    すごいですね。NASDAQに上場するというのは結構ハードルが高いと思うんですけど、成果がどんどん出ていた感じなんですかね。特許の出願とか。

和田    そうですね。特許も出願いたしましたし、研究自体も非常に成果が上がってまいりまして、色んな投資家の方々も注目して投資をしていただいて、資金的にも人材的にも色々経験のある方が集まってくださいまして、首尾よく上場ということになりました。

三木    おめでとうございます。

和田    ありがとうございます。創薬研究の方も順調に進んでいて、大手の製薬メーカーともコラボレーションが順調に進んでいるんですけども、特にアメリカの製薬メーカーとコラボレーションが進んでまして、今年の5月5日にファイザーと共同研究契約が締結されて、これは非常に大きな契約でして、かなりファイザーさんも本気で我々と手を組んで

三木    研究開発の業務委託のような形なんですか?

和田    そうですね、はい。新しい薬を世に出そうという形で一所懸命がんばっています。

 

●凝り性な性格から生まれたオリジナルの笛

三木    なるほど。そういう研究をされている方がなぜ笛に行ったのかというお話をそろそろ。

和田    なるほど、そろそろ笛の方に話がいくわけですけども、笛は中学1年の時から銀のフルートを吹いておりまして、どんなジャンルの笛を吹いていたかというと、バッハとかヘンデルとかバロック音楽が非常に好きだったんですね。

三木    どの辺がバロックの良さなんですか?

和田    まず聴いていて非常に心地よいというのがあります。色んなジャンルの音楽がある中でも私の感性に一番フィットする曲でよかったし、演奏していても非常に心地よい。だけど結構難しいので練習のし甲斐がある。仕上がればそれだけ喜びが大きいというのがあります。

和田    そういう意味でバロック音楽、特にバッハが非常に好きで銀のフルートを一所懸命練習していたんですけども、バッハの時代にこの銀のフルートは存在していなかったんです。あの時代はどんなフルートだったかというと、木でできたフルートでたった一個キーがついているだけのバロックフルート――トラヴェルソというんですけども、そういう楽器で、それを想定してバッハは作曲していたわけですし、そういう楽器で演奏されていたわけですね。

和田    じゃあできればバッハが想定していた楽器を使って演奏したいなと思ったわけです。その当時、木のフルートなんて滅多に手に入らないし、なかなかできない。ちょうど中学校というと音楽の時間にリコーダーをやってたんです。リコーダーというのはバロック時代のリコーダーとそれほど形が変わっていないので、バッハやヘンデルが想定していた音とほとんど同じような音で音楽が奏でられる。

和田    そこで私はヘンデルのリコーダーソナタをリコーダーで一所懸命吹いていたんですけど、「あ、これいいな」と、段々銀のフルートよりもリコーダーの方へ興味が移っていって、それからずっとリコーダーを吹いていたんですよ。でも、リコーダーのレパートリーもだいたい吹き尽くしたとなると、リコーダー以外の曲を――例えばバッハだったら、バッハのヴァイオリンの曲をリコーダーで吹きたいなと思ったわけですね。だけど、リコーダーというのは音域が非常に狭いのでリコーダー用に編曲しちゃうとすごくこぢんまりまとまって吹いててストレスが……。

和田    で、ある時、このリコーダー(縦笛)なんだけども、これを横笛にしたら、どんな音が出るんだろうか。楽器としてどんな性能になるんだろうかという風に思いまして、最初のコンセプトとして、リコーダーの指使いで横笛を作ってみようという風に思いました。その時に「素材をなににしようか」ということなんですが、まず目の前にあったのが竹箒です。

一同    竹箒(笑)。

和田    竹箒を見て、なんだか太さといい節の間隔といい、孔を開けたらいいフルートになるんじゃないかなぁと思って、それを試作したものを今日持ってきたんですけども――。

宇都宮    その当時の?

和田    その当時、竹箒をちょん切って作った笛なんですね。リコーダーと同じように指が七つ、後ろに指孔が空いてるんですけど、あんまり性能がよくなくてガッカリしました。

三木    ちょっと吹いてみていただけますか?

和田    あ、これをですか(笑)。

※演奏

和田    ちょっとかすれた味のある音なんですけども、色々やっていくうちに今のフルートの構造を見て随分違うなと。今のフルートはこの指の孔がもっともっと大きかったり、私たちはすでにモダンフルートというものを知っているので、しかもバロックフルートも知っている。両方をハイブリッドの感じで作っていったらどうなるのかと色んな試行錯誤をして、今まで竹で200本以上フルートを作っているんですけど(笑)。

 

三木・宇都宮    (笑)。

 

和田    2005年から(フルート)製作の研究を始めているんですが、段々進化していったわけですね。比較していただくとわかるんですが、指の孔が段々段々大きくなっていって、孔の位置も変わってくるんですけど、、例えば後ろに孔が開いていない。リコーダー(縦笛)は高音を出すために後ろに孔を開けて、ここを指で少しだけ隙間を開けることによって高い音を出すんですけど、横笛っていうのは倍音特性っていうんですけど、同じ指使いで1オクターブ上の音を非常に出しやすい性質を持つことに気がつきまして。

三木    どうやって出すんですか?

和田    例えばですね。

※演奏

和田    という形で同じ指使いで、唇の感じだけで倍音――高い音を出すことができると。で、孔の大きさとか位置を色々研究しまして、独自のデザインで独自の指使いの笛ができあがったと。竹笛なので音的には和のテイストになるんですね。だけど吹きたいのはバッハの曲とかバロック音楽という西洋音楽だったわけです。かなり満足のいく性能の楽器ができたので、自己満足で終わっているのはもったいないかな。ちょとと世に披露しようという形でwebサイトとか起ちあげて、「東風笛(こちぶえ)」という名前もつけて公開をしました。

三木    東の風の笛。

和田    はい。東の風の笛と書くんですけども、なぜ東の風の笛かというと、日本といったらFar Eastと言われますよね。そういう東の果ての日本で、日本の竹で作られたこの笛で西洋音楽を吹くと。西洋から見たら東の方から風に乗ってそういう音が聞こえてくる。で、東風笛って名前をつけたんですよ。

和田    一応インターナショナルに英語版のwebサイトも作っていて、そこにKochi-Bueってローマ字で書くのもなにかなと。じゃあイングリッシュネームをつけよう。じゃあどんな名前にしようかなと思った時に、ギリシャ神話に東の風を司る神様がいて、アイオロスっていう神様なんですけども、そこから名前をいただいて、英名はアイオロス・フルートという名前をつけました。

三木    かっこいい。

和田    まったくの自己満足なんですけども、そういう日本の竹を使った、西洋音楽を奏でる笛という形で開発をしました。

三木    すごいですね。結構もうバージョンが上がってきて……。

和田    はい、もう200本以上作って色んなのがあって、これ元々は自分で竹を切り出しに行って。

三木    そこまでやるんですね。

和田    そこからまずやるんですね。切ったばかりの時は青い竹じゃないですか。そのまますぐ孔を開けて笛にしちゃうと段々乾燥していって音程が狂っちゃうので、まずは切り出したあと3年間乾燥させます。そのあとに炭火の上で焙ってちょっと硬くして、それから孔を開けていくんですね。

三木    尺八と一緒ですね。

和田    そうですね。その辺の竹笛の製作技術に関しては尺八の製法であるとか、篠笛の製法であるとか、それを徹底的に研究して。

三木    ああ、なるほど。

和田    これにはモノづくりのノウハウが詰まっているんですね。普通この竹笛って乾燥するとすぐ割れちゃうんですけど、私の竹笛は200本作ったけど割れたものは1本もないんです。

三木    それはなぜでしょうか。

和田    まずは乾燥する段階で割れちゃうものは割れちゃうんです。それをセレクションをして生き残ったものに孔を開けるわけですけど、そのあと仕上げに油を塗ったりするんですね。そこがまた大事なところで。あ、これ言っちゃうと企業秘密的なところもあるんですが、別に特許化しても売れないのでここで公開してしまいますけども、今流行りのエゴマ油とか亜麻仁油ってあるじゃないですか。

和田    あれには抗酸化作用があって、皆さん身体にいいからってサラダにかけて食べたりしますね。あの油を塗るんです。あの油は古来ワニスと言われていて、家具とか木製品に塗って、しばらくすると固まるんですね。身体の中で抗酸化作用があるっていうのは、身体の中に活性酸素と反応してそれを消去するという働きがあるんですが、これを例えば木とか竹に塗っておくと、空気中の酸素と反応して化学反応が起こって、重合して固まるんですよ。

三木    おお……。

和田    なので、乾燥した竹にこの油を塗ると染みこんで中で固まるんですね。そうすると非常に丈夫になって割れなくなる。

宇都宮    音質も変わるんですか?

和田    変わります。非常にいい音になります。そういう竹の加工法であったり、塗る油であったり、それにもサイエンスというか化学の知識が詰まっているという。

宇都宮    趣味のレベルを超えてますよね。

和田    科学者なので。毎週週末になるとこういう笛の研究を。

三木    どういうところで研究されているんですか?

宇都宮    ここですか?

和田    いえいえいえいえ、自宅のベランダでやるわけですけども、非常に家族の顰蹙を買いながらやっています。今となっては演奏に耐えうる笛がたくさんできましたので、そんなに頻繁に笛を作ることはないですけど、それでも1年に1回は竹を切り出しに行って乾燥をさせるということはずっとやっています。

三木    モノづくりにもすごく情熱があるように思えますけど、小さい頃からモノづくりが好きだったんですか?

和田    好きですね。大好きでしたね。工作とかもそうですけど、なんでも自分で作るのが好きで、あと絵を描くのも好きで。実は私の父親が絵描きだったので、そういうところもあったのかなと。なので、芸術的な血が流れてるのかなと(笑)。

三木    こういう笛を作られて、今度は編曲までご自身で。

和田    そうなんですよ。ここにも非常なこだわりがありまして。バッハの曲が好きだということがありましたので、バッハの曲を編曲するわけです。今日はその編曲した楽譜を持ってきましたが、楽譜はバッハの筆跡を真似て書いています。

三木    すごいですね……。

和田    バッハの曲を編曲する時は、バッハの自筆譜の書き方を踏襲して書くという。

三木    こちらにバッハの――。

和田    お手本にしているというか、私のバイブルというべきものがあるんですけど。

三木    このような筆跡を研究して。

和田    で、この楽譜を書く――カリグラフィーというペンの習字みたいのがあるんですけど、それ用の特別なペンを使って編曲した楽譜まで書くということをしています。

三木    すごい集中力ですね。この細かさは。

和田    どんなに疲れていても、どんなに時間がなくても、こういうことはやるんですね。

三木    レオナルド・ダ・ヴィンチも色々な絵を描いたりとか設計をしたりとか同時に科学者でもあったという感じなんですけども、先生もレオナルド・ダ・ヴィンチという感じですよね。

和田    ははははっ、そうですか。

宇都宮    ルネッサンス。

和田    ああ~、いいかもしれないですね。

三木    不思議な感じですね。先生の中では多分一つの繋がりがあるんじゃないですか?

和田    区別がないというか。音楽もサイエンスも区別がないし、笛を研究というか開発する時の頭の使い方と、普段サイエンスで使っている頭の使い方はまったく同じですし。逆に音楽をやっている時というのは、本当にそれに集中します。演奏している時っていうのは頭空っぽになって、音楽のことだけに集中しますから完全にリセットされる――。

三木    リフレッシュ。

和田    リフレッシュですね。なので、こういうクリエイティブな仕事をする上では音楽っていうのは非常にいいんじゃないかなと思います。

宇都宮    切り換えになるという感じですか?

和田    そうですね。気分転換。すごくいい気分転換です。

三木    演奏室みたいなものはあるんですか?

和田    いや、ないですよ(笑)。自分の部屋でピーピー吹いています。

三木    じゃあ練習も自分の部屋で?

和田    であったり、車の中で練習したりしますよね。

三木    音が洩れないように。

和田    はい。あとは、東大にいた当時は前に大きな公園があったので、その公園で吹いてました。公園の四阿で練習をするみたいな。自転車で通勤して、まずそこで吹いてクールダウンしてからラボに行って研究をする。

宇都宮    こちらもだいぶ環境がいいですよね。川沿いですし。

和田    非常にいい環境です。まだこちらのキャンパスで演奏活動というのはやってないんですけど、年3回くらいコンサートを企画してやったりしていまして、東京大学の柏図書館というところでワクワクミニコンサートというのをずっとやってまして、もう18回くらいやっています。それのプロデューサーというか世話人をやらせていただいて、今年は11月か12月にコンサートをやる予定です。そこで必ず自分でこの笛で演奏して披露するということをしています。

三木    同僚の方は聴きにいらっしゃいますか?

和田    あんまり来てくれないですね、残念なことに(笑)。

三木    あ、そうなんですか。でも海外のサイエンスをやる方って結構音楽をやる方って多いと思いますね。

和田    そうですね。だから例えば海外の学会とかのバンケットとかで演奏する機会もありますよね。

三木    すごいですね。それは結構好評なんじゃないですか?

和田    自分の口頭発表があるじゃないですか。その最後にちょっと笛の紹介をして、「じゃあバンケットでコンサートをやるから」という形で。演奏した後はサイエンスの質問じゃなくて、今回みたいに笛の質問ばかり来るようになってしまうっていうこともありましたけど(笑)。

三木    国際学会ってやっぱりコミュニケーションの機会なので、東風笛は印象づけるのにすごく効果がありますよね。笛の先生っていう感じで。

和田    そんな感じですね。

 

●研究も笛づくりもモノづくりという意味では一緒

三木    ちなみに先生の研究室って今何名くらい学生さんがいらっしゃるんですか?

和田    だいたい20名くらいの学生さんがいます。

三木    このような(DNA、RNAのモデルを指して)研究をされている。

和田    そうですね。色んな研究テーマがあります。核酸を使った研究だけではなくて、「糖」ですね。糖鎖。お砂糖を繋げていくような研究であるとか、アミノ酸、ペプチドを繋げていく研究であるとか。「核酸」「糖」「ペプチド」という三つの生体高分子に関係する有機合成をラボではやっています。

三木    実際に生成するんですね。ラボの中で。

和田    そうですね。合成して、生成して、できればお薬になったりとか、お薬を安定化する分子であったりとか、薬を身体の中の特定の臓器に運ぶための分子であったりとか、薬と関連するような機能性の人工生体分子っていうのを作る研究ですね。

三木    卒業生の方々はどういう分野に行かれるんですか?

和田    製薬メーカーだけではなくて、化学メーカーですね。幅広い業種で社会に出て活躍しています。

三木    なるほど。でも面白いですね。音楽と研究とモノづくりと。

和田    研究も、音楽の笛づくりも、モノづくりなので非常に共通しています。我々が大学でやっている研究というのは有機合成ということなので、フラスコの中で自由自在にモノを作る。原子と原子の組み合わせを色々変えて、望みの形、望みの性質、望みの機能を持つような分子をデザインして作るっていう、非常に楽しいモノづくりの世界です。

三木    素晴らしいです。

宇都宮    仮説を立ててそれを検証していくという感じなんですか?

和田    そうですね。研究は必ずそういうプロセスを踏みます。でもね、その仮説を立てるわけですけども、なかなかその通りにうまくいかないんですね。そこをうまくいくようになるために、学生さんたちが日夜、汗水垂らして実験、研究をしているということで。私はそれを励ます役です。

宇都宮    精神的な面もありますよね。基本的には失敗続きになるわけですから。

和田    例えば論文を見たり教科書を見たりすると、非常にうまくいくようなイメージがあるんですけども、そこに至るまではどれだけ大変な下積みの研究があるかということですよね。

宇都宮    気分転換が必要だと思いますが、そういうのは人それぞれしているんですか?

和田    研究室としてはみんなで集まってスポーツをやったりとか、コンパをやったりとか、そういうのも非常に大事ですよね。研究は厳しくコンパは楽しくというのをキャッチフレーズにしていますけども。楽しくやれたらいいなという風に思っています。

三木    一緒に演奏してくれるような学生さんはいないんですか?

和田    そうですね。学生さんを駆り出してコンサートのお手伝いをしてもらったり、実際に演奏してもらったりとか、そういうこともしてもらっています。

三木    学生さんはなにを演奏されるんですか?

和田    今年はピアノを演奏する学生さんがいて、活躍してもらいました。

宇都宮    ピアノと笛で。

和田    それぞれ独奏だったんですけども、学生さんの演奏を聴く機会もなかなかないので、そういうところで聴くと「あ、この子はこういう面も持ってたんだ」っていうか、逆に学生さんたちも「あ、先生はこういう趣味も持ってたんだ」ていう風に驚くかもしれないんですけど。そういうコミュニケーションもね、お互いを知る上で非常に大事だなと思っています。

後編へ続きます。

 https://zenmono.jp/story/285



 

和田 猛教授

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WEBSITE

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