NEWガイアの夜明けで紹介された、クラウドファンディングを活用して新規事業を立ち上げるためのスクール「zenschool(ゼンスクール)」 22期新規募集(残席1名)

第129回MMS放送 「デジタル製造技術と日本伝統技術を融合したデザイン手法によって、即時的に・誰でも・簡単に・低コストで魅力的な空間を創出することのできる仕組みを提供」後編 VUILD 代表取締役 秋吉浩気さん

前編からの続きです。

 https://zenmono.jp/story/273

●場づくりにはいろんな立場の人が参加できる多様性が重要
enmono(三木)   ワークショップやってる時の写真ってあります?

秋吉         あります。これは下の部屋で本当は30人くらいしか入れないんですけど、初日80人くらい来てしまって。

enmono   おお、すごい。

秋吉         休憩の時はこんな感じになって。

enmono(宇都宮)   ぎゅうぎゅう。

秋吉         プロトタイピング風景はこんな感じです。

enmono   来る方たちはどんな方たちなんですか?

秋吉         毎回テーマが違って、初回はテーマが「暮らしと街とお仕事」、2回目は「街を見る」。異なるスケールで同じ場所を見る、これくらいの半径何メートル以内の視点なのか、もしくは東京都っていう視点で蒲田を見るのか、そういう観点から街とか建築とかを。水野さんの回が「多拠点性」みたいなかなりややこしいものでした。

enmono(宇都宮)   どういう集客をしたんですか?

秋吉         Facebookイベントページを作ったら、初めて会う人が結構色々、なぜか食いついてきてくれたり、あとはレクチャラーの知り合いとか、そういう感じですね。基本的には「アイデアちょうだい」だし、ソーシャルキャピタル力をちょっとくださいっていうことで、レクチャラーの知り合いが基本的には来るので、そうするとそこからまた分岐して。

enmono(宇都宮)   年齢層は近いんですか?

秋吉         近いかもしれないですね。

enmono(宇都宮)   20代とか30代。

秋吉         30代が多いかもしれないです。

enmono(宇都宮)   この近辺の方?

秋吉         いや、この近辺の方は2割くらいです。

enmono(宇都宮)   じゃあみんな都内。

秋吉         都内・近県ですね。

enmono(宇都宮)   どこかの企業にお勤めの方が来る感じですか? それともデザイナーとか個人で。

秋吉         毎回テーマが違って変わりますけど、この写真を見ると……区議会議員の方とか、レクチャラーの教授の方とか、教授の学生の方とか、メーカーの方も来てたりとか。

enmono   Facebookページを作るだけでそんなに人が来るもんなんですかね。

秋吉         なんか来ましたね(笑)。

enmono   僕らも毎回集客苦労するけど。

enmono(宇都宮)   こちらはおっさんが多いですよ(笑)。

秋吉         ほかの工房とか見てると、ファブラボとかメーカースペースってやっぱり、言葉は悪いかもしれませんけどおじさんとか作る人・エンジニアリングの人が集まっちゃうと、そこにもう入れなくなっちゃうという場面はいくつも見てきたので、そこは丁寧に言葉を選んでいるつもりです。写真の選び方もそうだし、子どもも来るし、女性も来るし、という多様性のバランスは実は裏側で設計はしたいと思っていて。

enmono(宇都宮)   そこは結構重要ですよね。

秋吉         かなり重要だと思っていて、そうしないと多分社会的な意味でこういう場所って普及していかないと思うんです。やっぱりここら辺を歩いている方を一日見ていると、男性は仕事に行っているので、主婦の方とか子ども連れの女性、おばちゃん、おじちゃんとかなので、そういう人たちにできるだけ参加してもらいたくて。
秋吉         今手伝いにきてくれている子たちも含めて、割と多様に子どももそうだし、おじさんもそうだし、バランスよく皆さんに来てもらっているってことは、色々な世代や立場に刺さっているのかなと思っていて。

enmono   素晴らしい。そこら辺は我々がまったく持っていない部分です。

 

●ShopBotの現場拝見
enmono   せっかくこちらにお邪魔しているので、1階のShopBotが動いているところを見学させていただきたいと思います。ShopBotはどの辺が自分の中でハマったんですか?

秋吉         思ったことがすぐできることですね。普通大工さんに言ったってできないことができる。プログラムに図面を読ませると、勝手に出てくる。
秋吉         基本的に今の建築とかデザインの業界って、コストとか諸々の状況によって例えば「この梁はこの形でこれくらいしかやれません」とか、かなり合理化されちゃっていて、そこにデザインが入ろうとするとコストとの兼ね合いになるんですけど、ShoBotの場合はそもそも直線切ろうが曲線切ろうが同コスト。時間も金額も同じになってくると、合理的かデザイン的かというのは関係のない話になってくるので、そうすると初めてデザインの話に入ってこられる。これが平べったくても曲面であっても等価なので、そういう状況に入ってこられるのが面白いなと。

enmono   イメージしたものが具体的なモノとして――。

秋吉         すぐできるところですね。それをしかも外注するわけでもなく、自分で全部。これとかも大工さんだったらどれくらいの嵌まり具合というのをやってたんですけど、そのデータをShopBotで最初からセットしておけばこれくらいの嵌まり具合になるという最初のテストピースを切って、最後に加工すると本当にその嵌まり具合になる。そういうのを自分で操作できる。この幅を変えたいとなると、今までだったらすごい色んなプロセスを経ることになるんですけど、データだったらパラメータをピッと変えるだけで全部変わるとか。そういう状況は面白いなと。

enmono   厚みはどれくらいまで可能なんですか?

秋吉         あそこに今ぶっ刺さってるのが90ミリなんですけど。あと刃物が大体今ついてるので100くらいまでいけます。この機械のタイプだと150ミリまで可動域があるんですけど、刃物次第で削れる高さが決まってくるので。

enmono   本格的な建築にも使えそうですね。

秋吉         これが現在12台になりました。1台だと1日でこれくらいしかできないんですけど、12台でネットワーキングして分散処理すると1日で理想とする家の大きさが建つとか――そういうのは目指しているところです。

enmono(宇都宮)   データは共有できますもんね。

秋吉         そうです。同じShopBotのデータで、木材さえ同じ状況のものを用意できれば。

秋吉         そういうことが可能になってくるので、

秋吉         部材単位で言うと、接合部で切っているので、このくらいの大きさだとヤマトとかでも送れます。それを挿して(繋げて)いくと大きなものになる。そういう接合部と全体の設計をやっているかなりニッチな設計者ではあるんですけど、でもこういうの(ShopBot)があるからこそ、初めてそういう状況になるので。

enmono(宇都宮)   このフチとかも手で作ると結構面倒だけどデータとしてあれば。

秋吉         こういうのですね(サンプルを提示)。嵌まり具合をどうするかとか。これは松なんですけど、それぞれ材種によってどれくらいの嵌まり具合なのかも全然変わってくるので、

enmono(宇都宮)   日本の伝統的な木工と近いですよね。釘を使わない時代もあったから。

秋吉         昔は大工さんの中で経験的に不文律となっていたのものを、1980年代くらいに東大の建築の学者さんが「20パターンくらいある」と言語化・文法化した人がいて。田中浩也研の先輩が文法化されたものをモデル化、今はロフトワークのヒダクマとかがもしかしたらやってるかもしれないんですけど、その趨りみたいなものが実は20年くらい前にあって。

enmono(宇都宮)   そういうのがあるとデータ化しやすいですよね。

秋吉         そうですね。そこで問題になってくるのが、実際に作ったものの強度とか、今までプレカットという領域で工業生産に入っていたラインのものだと、どれくらいの材種で、どれくらいの乾燥率で、どれくらいの幅でといった、多様なパラメータに一個一個対応していると生産のラインに乗っていかないので、今は単にこれが形としてだけ残っていて最後金物で留めちゃうとかアセンブリのガイドとして起こっているのが今のプレカットの産業なので。

enmono(宇都宮)   国の耐震基準も金物使わないとダメとかありますからね。大工さんに言わせると実は金物使わない方が強度を持たせられるとか。それって数値化できない部分もあるんじゃないですかね。

秋吉         今、一所懸命その構造を解いている人たちがいて、徐々に実現というか。科学的に解明されてきているので。

enmono(宇都宮)   金属はJISがあるけど、木工はないじゃないですか。基準というものが。

秋吉         その辺のどっちが良いというのは僕は気にしていないので、併用してやっていく感じですね。ただ、これだと分解・解体が割とすぐにできるので、そうすると増築もできるし、逆に言うと減築もすぐにできる。

enmono   これ1台でおいくらぐらいするんですか?

秋吉         この大きさで込み込みで350万くらいです。

enmono   思ったよりも高くない。

秋吉         キットで届いて、あとは自分たちで――我々が監修というか指導をしますけど――組み立てて、配線して、というのを自分たちで。

enmono   工務店とかに入れると……。

秋吉         そうですね。工務店に入れてちょっとした家具とか造作とか、設計者がこだわるワンポイントとかに対応できるようになってくると面白いなと思っていて。例えばそれで空いている時間とかウチがサービスで出すプロダクトとかをずっと生産しておいて、それを売るとか。それで利益を得るとか。同じシステムで動いていると助け合うことができるので。

enmono(宇都宮)   機械の稼働率が上がればチャージが下がりますからね。償却も進むし。

enmono   やっぱり現場感があっていいですね。ありがとうございました。

 

●シェアオフィスも拝見


秋吉         毎回イベントでやった内容を文字起こしして、新聞としてこう……。

enmono   我々と一緒ですね。我々もenmono新聞というのを作っています。

秋吉         毎回フォーマットは同じで、表には顔が載っていて、裏が文面。1年経ったらこれをポスターってバーッと。

enmono   誰が編集とかしているんですか?

秋吉         基本的には僕の知り合いというか学生のインターンというか。あとはレイアウトとか、どういう方向性でやるのかっていうのは一応僕が編集長でやっているので。

enmono   センスいいですね。

秋吉         センスというかもうシステム化してしまっていて、この間合いで撮って、ここに画像を入れて、編集もこのラインに文字を流す。だからデザインに時間をかけないシステムになっています。

enmono   これは何部くらい刷るんですか?

秋吉         参加者分です。参加した方にお渡ししますが、結構刷ってる回もありますね。

秋吉         ここのオフィスの家具もShopBotで作って。ここに入居している設計者・デザイナーがそれぞれ担当を決めて作っていて、この机がすごい面白くて、このシェアオフィスのメンバーで東京芸大で助手をされている方の設計です。テーブルの脚だけ(外して)スタッキングできるようになっていて。

enmono   独特の形ですね。見たことない……。

enmono(宇都宮)   釘とか使ってないですもんね。バラせるんですよね。強度ありそうです。

秋吉         これはよくできています。

秋吉         一応防音室の構造になっているので、そんなに(隣の工房の)音は気にならないです。今のところ苦情も一回もないです。この窓から――。

enmono   動いているのが見える。

秋吉         ShopBotを使うと廃材がすごく出るんですけど、それらは全部銭湯へ持っていっていて。

enmono   ああ(笑)。それは面白いですね。銭湯は近くにあるんですか?

秋吉         東京で一番多いらしくて。

enmono(宇都宮)   たくさんありますよね。蒲田は。

秋吉         移動圏内にいくつもあります。

 

●2年目は「こういう風にしたい」に取り組んでいく
enmono   今、1階を拝見させていただいて、すごくモノづくりというかコミュニティづくりをしっかりされているなと感じました。最初から意図的にそういう風にしていこうという考えでやられていたんですか?

秋吉         モノを作って、工房の中で完結しているだけだと、社会という枠では評価されない。だとしたら作ったモノを社会とか街の中でどう評価されるのか、どう馴染ませるのか、どういう風にモノを社会全体で作っていくのかということに割と興味があります。

秋吉         色んな方にヒアリングしていくと――下町ボブスレーとかもそうですけど――ああいうのをなんでやってるのかという原点を確認したところ、この辺の町工場の人って墨田区とは違って部品とか全体の中の一部を作っているので、その全体そのものは社会としてどういう風に貢献しているのか日常生活の中で目に見えてわかりにくい。

秋吉         例えば墨田区だったら洋服とか靴とか作っていて、それって日々の中で身につけているものなので、自分が作ったものは社会の中でこういう風に使われているというのは実感として得やすいと思うんですけど、(蒲田の人たちには)それがギャップとしてあるそうです。

秋吉         住空間を作っている側からすると、そういう技術を例えば机に使うとか椅子に使うとか、公園のベンチに使う、遊具に使うとかいうことになってくると、そういう技術って転用先というか実際に使うものを見つけるのは割とデザイナーの役割だと思っています。
秋吉         そのギャップを埋める方法として、ワークショップ等の方法はアリだなと思っていて、カマタブリッヂのブリッヂは「ものすごく離れた社会と、部品をどうブリッヂさせるのか」というコンセプトから決まっています。

enmono   運用開始から1年でしたっけ?

秋吉         1年ですね。

enmono   じゃあ、だいぶその輪というかコミュニティも広がってきている感じですか?

秋吉         一応(笑)。ある程度。カマタブリッヂは直接関わってはいないですけど、私が所属している大学が主催したイベントで学生に120人集まってもらって、商店街とか蒲田エリアの空間をよくするにはどうすればいいかという提案をやって、その時に大田区さんに椅子を貸してもらったりとか、このあたりの観光協会の会長さんに建物一棟借りたり(工事をとめてもらって)、そういうこの辺の地域のことを考えている人たちがものすごくいっぱいいらっしゃって、その人たちの協力を得ることができて、ちょっとした繋がりが徐々にできてきたので、割と目指してるヴィジョンは同じなんだなと。
秋吉         色んなワークショップで色んなアイデアちょうだいイベントをして出てきた成果と、そこにその過程で巻きこまれた――というとアレですけど、巻きこまれてくださった皆さんと一緒に2年目は「じゃあ何をするのか」というところに、ようやく今来ているんじゃないかなと思います。

enmono   すごく自然な感じですね。最初から補助金とかが絡むと「やらなきゃいけない」ってなりますけど、自然発生的にこう――当然ビジネスとしても考えてやってらっしゃると思うんですけど、盛り上がってきているから行政も少し手伝ってもいいよという流れ? だから最初からがっつり行政とやらなかったことが自然の流れになっていて。

enmono(宇都宮)   イニシアティブとれますもんね。

秋吉         ああ、そうかもしれないですね。

enmono   そういう意味で成功しつつある事例のように僕は思います。多くの行政系のヤツがお金がなくなると終わっちゃうのを見ると非常に(成功の)可能性が高いのかなと。

秋吉         多分ファブラボは、ある種プロボノ的なお金にならない話なので、そういう状況ってそれだけだと成り立たないのでほかにビジネスモデルが必要で、僕の場合だとシェアオフィスだし、それぞれ本職があってプラスアルファの余剰を思いっきり出すという感じだと思うので、その流れでは一応はうまくいっていると思うので、特に問題もなくやってるって感じですかね。

enmono   素晴らしいです。最初は本当に勘違いしていて面目ありません。

秋吉         行政の方は多分ここに興味がない、知らないと思います。

enmono   この番組を見たら興味を持ってくれると思います。

enmono(宇都宮)   別に、ウェルカムなんですよね?

秋吉         ウェルカムですよ。ウェルカムだし、こちら側からも多分嫌がられてるけどメールを送りまくったりしているんで。

enmono   そうなんですね(笑)。僕らも多分同じ感じだと思います。

秋吉         多分「これをやるんだ」という明確な意思表示をこっちがして、そこの部分でどういう風な協力をしていただきたいのかというのを示さないと向こうも対応しづらいと思うので。なので、2年目の7月の1周年のイベントでは、それを明確に示して、そのヴィジョンのためにこういう人に集まって欲しいという風に、外部の人じゃなく。1年目は割と外部の人に、広告的な意味で、レクチャラーのアイデアももらいつつ、レクチャラーの持っている社会資本というか知り合いを呼んでもらっていたんですけど、2年目はそういう広告的な活動はちょっと減らして、本質的な「こういう風にしたい」っていうところをやりたいなと思います。

enmono(宇都宮)   ここらの町工場さんの加工技術とのコラボレーションの可能性も今後は。

秋吉         そうですね。それは本当にやりたいですね。プロジェクトとして「これ作ります!」という時に一緒にやってもらうというのが正しいと思うので、それはこっちが投げるという感じですね。

 

●日本の暮らしの未来
enmono   お話はまだ尽きないんですが、そろそろお時間の方が迫ってまいりました。一番最後に皆さんにしている質問がありまして、日本の○○の未来について。○○はご自身で入れていただくという感じなんですけども。なにか○○に入れたいことってあります?

秋吉         やっぱりモチベーションとして「建てる」行為とか「住む」行為っていうのは、実は語源的に同じで、原始的には同じことだったのが今は分離してきていて、「住むこと」と「建ててもらうこと」というのを昔ハイデッカーという哲学者が述べたんですけど、なんか今は実感なく家を選んで、ある程度の「あなたのためにカスタマイズできます」と言いつつ、全然融通の利かないものとか、それを本当に「建てる」と言っていいのか、「住む」って本当にそういうことなの? ということを問いただしたくて、一応会社のVUILDっていう名前は「V」ってヴァイタルとかリヴィングとかの「生きる」っていう意味と、「BUILD」って元々はそういう語源から来ているので、もう一回くっつけてやろうという社名なんです。だから建てることと住むことを一緒にした時にどんな未来が待っているのかというところをプロトタイピングしたいというか。そういう意味合いですね。

enmono(宇都宮)   分離しちゃってますもんね。

秋吉         そうです。完全に分離しちゃってるところが。

enmono(宇都宮)   ファブラボも「作る」ことと利用者をもっと近づけていくという意味では近い。

秋吉         そういう建物とか住空間とか場を目指していきたいので。

enmono(宇都宮)   建物も一つの建物と考えずに都市とかもう少し広範囲な――。

秋吉         モノだけだと成り立たないので、こういうワークショップとかを含めたコトをどうやって作っていくかっていう。

enmono   日本の建て方と住み方を変える。

秋吉         暮らしとかですかね。そしてその暮らしを作る住空間をどうやって変えるのかっていうのがミッションというか。

enmono   とてもワクワクするお話、ありがとうございました。私はモノづくりの方なので建築とは少し遠かったんですけど、建築でもワクワクした新しいことが起きているなぁと感じました。

秋吉         ありがとうございます。

enmono   自分でもなんか作ってみたいなと思います。ありがとうございました。



▼秋吉浩気さん
https://www.facebook.com/akiyoshi.koki

▼WEBSITE
http://vuild.co.jp/

 

 

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