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第127回MMS放送 「クラウドファンディングをきっかけに業務拡大し売上倍増のエンジニアリング企業」【後編】 有限会社ケイ・ピー・ディ 代表取締役 加藤木一明さん

前編からの続きです。
 
https://zenmono.jp/story/269

●基板設計者はマルチプレーヤーであることが求められる

加藤木       CADは図研さんの一筋で全部やってます。

enmono   図研さんのは使いやすいですか?

加藤木       使い慣れて使いやすいのと、唯一日本語のCADメーカーなので。私たちの道具――道具というとアレですけど――侍でいうと刀に当たる、自分の身体の一部になっているツールなので、やっぱり使い慣れたものがいいです。
加藤木       その図研さんがなくなってしまうと――なくならないとは思うんですけど――メンターさんとか海外の半導体に強い会社さんのCADになって、ちょっと独特なんですね。やっぱり日本のメーカーさんがいいなと。

enmono(宇都宮)   今はメーカーさんたちが無料に近い海外製CADとかを入れてるじゃないですか。

加藤木       はい、ありますね。結構コンサルティングでいただくデータもフリーのものがほとんどで。それはそれで基板業界に入りやすくなるのでいいんですけど。

enmono(宇都宮)   限界がありますからね。そこそこはできても。

加藤木       若い方は大歓迎なんですけども、基板設計を知らない方がやるので、設計ができるといってもピンからキリまでになってしまっています。割と基板設計を軽く考えてしまっているところがあります。

enmono   舐めるなよと。
enmono(宇都宮)   最後、筐体に入らないとか、無理するとノイズが発生したりとか、熱持ったりとか。

加藤木       こういう時はこういう風にしなきゃいけないというのも、やっぱり経験で。なかなか基板設計は紙に描けないところがあって、ノウハウが実は結構あるんですよね。

enmono(宇都宮)   パーツの実装のレイアウトも含まれるんですか?

加藤木       部品の配置から全部。

enmono(宇都宮)   そこも基板設計に入っているんですね。

加藤木       基板設計ってこの黒いところの下(下流工程)、製造とか部品実装とか組み立てとか、それで出荷となるので、基板設計って形にする最初の段階で、設計で言うと最後の段階になるんです。ところが基板設計者ってどういうことをやっているかというと、電気屋さん、メカ屋さん、デザイナーさんといった方たちとやり取りをしています。

enmono(宇都宮)   コーディネーター。

加藤木       そうですね。この基板設計という職種の人たちが減ってしまうといいものが作れなくなってしまう。品質で言うとノイズや熱設計という課題が今は出てきていまして、すごく高温になるんですね。部品の配置を出口の穴の開いている部分のそばに置くとか。あとは基板の総数を減らせば減らすほど基板は安くなる。そういうノウハウとか経験って、フリーの(無料またはそれに近い)CADをやられる方は持っていない。

加藤木       ただ、すごく優秀な方たちがやっているので数年後は追い抜かれちゃうんじゃないかなという危機感はありますけど。そうならないためにこういうことを考えてコーディネートをやりくりできるマルチプレーヤーのポジションに基板設計者がなっていかないと間に合わないなっていうのは感じてまして。

enmono   後工程の製造では基板の加工もあれば実装もある。

加藤木       基板設計を中国でやることもあるんですけど、グチャグチャになっちゃってダメだとウチに戻ってきちゃうんです。全然違うものになっちゃってるんで、やり直してくれみたいな感じで。(今はそういう状態ですけど)価格競争に入って、マルチプレーヤーを育てられる体制を目指さずにいると、すぐに中国とか、優秀なベンチャーに、たとえ今はフリーCADなどでやっているとしても追い越されちゃうと思うんですね。


加藤木       モノづくりとしては、具現化をする大事なポジションなので、なんとか最後の砦として残していこうと。

enmono   ここは残さないといけないと。

加藤木       そうです。潤滑剤じゃないですけど、昔S社さんの中に入った時、メカ屋さんと電気屋さんの仲が悪くて、私経由でやり取りするようなこともあって、

enmono   プロデューサーみたいな感じですよね。

加藤木       そういうこともしていかないといけないなと。できるポジションですしね。

 

●セミナーで得たもの
enmono   後半は基板設計に夢中だった加藤木さんがその後どうなったのか、というお話を引き続きお願いできればと思います。

加藤木       リーマンショック、東日本大震災、タイの洪水などがあって、すごく大変な状態になって、月の売上がゼロになったりとか自分自身も給料を削ったりとか、十何年やっていて最低売上になってしまって。タイの洪水の時は月で9割減になったりとか、年間ですといい時に比べて8割~7割減っているような状態だったの で、色々動きつつやったのが異業種交流会とかネットで調べた経営セミナーに……。

enmono   我々の経営セミナーですか。

加藤木       enmonoさんとは別のちょっと堅い感じの。経営計画書を作って、ここがダメだよと言われたり。

enmono(宇都宮)   必要ですけどね、そういうのも。

加藤木       そうですね。色々聞いていてコレ大事だなってすごく思うんですけど。

enmono(宇都宮)   そればかりだとツラくなるのでバランスは必要だなと思います。

加藤木       仰るとおりで、大事なのはわかるんですけど、実際それができないからこういうセミナーへ行くので。セミナーへ行くと理念がないのはダメだとか、その時は大事だ大事だと思って帰るんですけど、でもできないなぁと思って。
加藤木       理念どうやって作ればいいんだっていうところまでは踏みこんでないんですよね。

enmono   すぐに売上を上げなきゃいけないのに、理念どうのこうのと言われてどう思いました?

加藤木       そこに時間割けないっていうことですよね。呪文を考えてもおなかいっぱいになりませんからね。

enmono   そんな経営セミナー等に行っていた加藤木さんが、我々のセミナーへ来て最初はどう思われたんでしょうか?

加藤木       こっちの(それまで行っていた)セミナーは実践じゃないなと。教科書の話を聞いているだけで、「ん~、いい話だな」と思って。本田宗一郎さんとかの話を聞いて、「うん、やってみよう」と思うんですけど、実際頭の中で感心するだけでした。
加藤木       enmonoさんのセミナーは身体を動かして、苦しんで(笑)。

enmono(宇都宮)   苦しみましたか?(笑)

加藤木       いや、苦しみましたね。なかなか出てこないじゃないですか。もうカチカチ頭で。

enmono   その時は10回やってたんですよね。今は4回になってますけど。相当時間かけてやってましたよね。

加藤木       その当時は座禅もなくて。

enmono   ひたすら禅問答で。

加藤木       お話を聞いて、次までにこれをやってきなさいという感じで、搾り出せなくて「うーん……」って。あの時に思ったのは、出ないんですけどやっぱり手を動かし てモノを作ってみるとはっきりする。実際にモノなので、いいか悪いかはっきり出るので、ダメなサンプルはいっぱい出たんですけど、「じゃあどうしようか」 という話になるので、全然進んでないようで、ほかの人に比べると進んでるんじゃないかなと。

enmono   進んでましたよね。ほかの人もなかなか作れなかったですから。

加藤木       実際にenmonoさんのセミナーを受けてない人から見ると、さらに進んでいたんじゃないかと思います。

enmono   普通の人はセミナー受けて「あー、おしまい」みたいな。

加藤木       飲んで、乾杯して、おいしかったねで終わっちゃうんですけど。

enmono(宇都宮)   基本僕らノンアルですからね。

加藤木       本当に搾りだした感があるので、その経験が今活きてますね。

 

●知ってもらうための活動・製品も

加藤木       それで搾りだしたのが、マイクロモノづくりとして結実したhealing leafで。クラウドファンディングを通して資金を集めたペンダントというか――。

enmono   基板のアクセサリーですね。

加藤木       こんな栞にしてもらったり。基板というのは美しいというのを皆さんに伝えたくてこういう商品になりました。

enmono(宇都宮)   最初は光るヤツを作って、デザフェスに出たら反応が違った。最初、加藤木さん自身は(現在の形に)注目していなかったんじゃないですか?

加藤木       そうですね。どっちかというとLED光らせる方がメインだったので。デザフェスに作っていったちっちゃいキーホルダーだったりペンダントが意外にも好評で全部捌けてしまったみたいな結果があって。

enmono(宇都宮)   お客さんの目線と加藤木さんの目線が最初違っていたのが合ってきたということですね。

加藤木       あれはすごくいい勉強になりました。

enmono(宇都宮)   ああいう展示販売みたいなことは初めてだったんですか?

加藤木       基板自体はお客様のためのものなので、それを展示会に出すというのは御法度で、「あいつあんなの出してるぞ」となってしまいます。お客様の許可がいただければできるんですけど。

enmono(宇都宮)   普通は許可出さないですからね。守秘義務ですから。

加藤木       そういうことも聞かないですからね。「見せていいですか? 展示会出していいですか?」なんて。そういう感じだったので展示会自体がもう経験なくて。

enmono(宇都宮)   あのデザフェスが初めて。

加藤木       緊張しましたね。

 

●今に活きる経験となったクラウドファンディング
enmono   その後クラウドファンディングを体験することになるのですが、実際にやられてみてどうでしたか?

加藤木       よかったですね。楽しかったです。

enmono   あまりツラさはなく?

加藤木       いや、ツラかったですよ(笑)。

enmono   (笑)。

加藤木       ツラかったけど、今思うと楽しかったという。あと、あの経験があったので、お尻を決めてなにをやらなければいけないか。できないことをできるって言うのではなく、できることはなにか。できないことはしょうがないと割り切って、「じゃあ、なにをやるか」と考えるようになったので、できないことはどっかに頼も うと割り切れるようになりましたね。
加藤木       あの経験は今にも活きていますね。
加藤木       今は自社でブースを借りて展示会をするようにもなりました。クラウドファンディングで展示できるモノ自体もできるようになりました。


enmono   企業理念もクラウドファンディングを通して生みだされたということなんですが。

加藤木       最終的に終わった後に振り返って、「自分がやったことってなんだろうな」「どういうことで喜ばれてるかな」と考えてみたら、「プリント基板の可能性を拡げて未来に繋げる」ことをやっているんだと。経営セミナーではできなかった理念が、クラウドファンディングの中でやっていることを振り返って自然と出てきま した。

enmono   自分の体験を通してじゃないと企業理念は出てこない。
enmono(宇都宮)   今は未来に繋がらない仕事はやらない?

加藤木       丁寧にお断りしていますね。

enmono   素晴らしい、理念通りのアクション。未来に繋げるということで、こういうものも生みだされてこれ(手ぬぐい)も基板の可能性を拡げる一つのアクションということで。あとこちらも(加藤木さんが着ている服)。

加藤木       Tシャツもそうですね。私たちのいつも設計しているCADの画面に近い形で、皆さんに基板を知っていただくことも未来に繋がると思っていますので。小さい基板で見えないところを拡大して見せるっていう。

enmono   こういうことが基板の未来を繋ぐお仕事ということですね。(知ってもらうことが目的ならば)別に本物の基板を作らなくてもいい。

enmono(宇都宮)   子どもたちに知ってもらわないと未来に繋がらないですからね。

加藤木       やっぱり見ていないと興味も持たないですし、見ていただいて面白いねと思ってくれる若い方たちが増えてくれれば。実際よくメディアとかで出ている基板があって、こんなんじゃないはずなんです。なんか違うねというのを気づいてもらえると。

enmono   こっちが本物ですよね。


enmono   この企業理念もクラウドファンディングをやったことで出てきて、先程お話しされてましたけど、お仕事の幅も広がったということで、当初お二人でやっていたお仕事が今は……。

加藤木       私含めて5人でやっています。

enmono   売上も……。

加藤木       売上もそうですね、人が増えるんで当然。

enmono   一番低い時と比べるとどのくらいになったんでしょうか? 何パーセントくらい……。

加藤木       ……4……400パーセントくらいですかね。そんなこと言っていいのかわからないんですけど。

enmono   約4倍に上がられたということで。

加藤木       悪い時から比べるとそうですね。非常にいい結果で。

enmono   そういう結果はなにがもたらしたものだと思っていますか?

加藤木       昔と比べて考えが柔らかくなったという気がしますね。まだまだ固いんですけども。行動して、クラウドファンディングなり色んなことを実践して、学んで経験になって、それでまた新しくチャレンジする。
加藤木       売上が結構上がっていても安心はしていなくて。でも、そういうことをやっていれば大丈夫かなと。基板を絡めたモノづくりを続けたいなと思います。

 

●日本の基板産業の未来
enmono   まだまだお話を伺いたいのですが、そろそろお時間の関係で最後の質問です。皆さんに伺っているのですが、日本の○○の未来、多分今回は基板産業の未来ですね。これについて加藤木さんが考えていることがあれば、熱い想いを語っていただきたいなと思います。

加藤木       今の問題としてはやっぱり若い人がいないんですね。日本の基板設計で「この基板ができる人」というと大体40代後半とか50代とか、下手すると60代とか。

enmono(宇都宮)   学校とかでは教えないんですか?

加藤木       学校はないんですよね。プリント基板配線技師とかの技能講座はあるんですけど、実際の学校というのはないです。

enmono(宇都宮)   アートワークをやるような人がいないということですか。

加藤木       はい。

enmono   加藤木さんはどこで勉強されたんですか?

加藤木       もうほんとに一般的な電気の勉強ですね。高校までなので。普通に高校でオームの法則とかやったくらいで、基板の設計というのはないんですね。

enmono(宇都宮)   会社に入って、その中で。

加藤木       そうです。怖い上司に後ろから蹴っ飛ばされながら、「教わるんじゃねぇ、盗むんだ」みたいな。

enmono(宇都宮)   職人ですね。

加藤木       ほんとそうですね。できあがるものは人それぞれ違うので、職人なんですよ。

加藤木       昔は「電源の基板をやらせたらこの人がピカイチだ」「デジカメやらせたらあの人だ。業界では有名だよ」という人がいたんです。スタープレイヤーと言われる方たちがいて。今は40代50代の人たちが多いので、(スター)がいないんですよね。また、基板にそこまで求められなくなってきた。困ってないのかもしれないですね。

 

enmono   ソフトウェアの方で対応してしまうとか。

 

加藤木       実際は大事なんです。ノイズにしてもなんにしても、基板をキチッとやらなきゃいけないというのがあって。そういう中で若い人がいないというのはすごく危機を感じてまして、業界としてそこをなんとかしないといけないなと自分自身は考えています。そのためにもこういったことをして(基板製作そのもの以外の周知活動もして)、増やしていかなければならない。

enmono   基板設計業界の底上げをやっていきたい。
enmono(宇都宮)   弟子は募集していないんですか?

加藤木       弟子はまだですね。募集はしてないんですけども。

enmono   そういうことを心配している感じですか? それともこんな未来になったらいいなと?

加藤木       心配はしてるんですけど、課題だと思っているだけで。そこは若い人を入れられるような体力をもっとつけて入れていきたいのと、やっぱり小さなものでもなんでもいいので、モノを作っていくということを繰り返していれば、基板っていうのはキーなので絶対出てくると思うんですね。
加藤木       基板設計会社の二代目三代目という人は今はいないんですよ。数社しかないです。そういう会社をウチは応援しつつ――。

enmono   技術を伝承していく。

加藤木       はい。モノさえ作っていれば未来はあると思うんです。繋げなければいけないので。
加藤木       未来に対してあまりいいことは言えないですけど、解決すべき課題があるので、常に緊張感があっていいんじゃないですかね。「大変だ大変だ」って言い続けるつもりはないんですけど、未来はあると思います。基板設計に関して日本には優秀な人が多いので。

enmono   若い人を鍛えていけば。

加藤木       モノを作ることが、セットで基板設計にもなります。今はそれくらいしか言えないかもしれないですね。

enmono   わかりました。今日はお忙しい中ありがとうございました。ぜひこの手ぬぐいのように新しい基板の世界を作っていっていただければと思います。どうもありがとうございました。

加藤木       ありがとうございました。



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