NEWガイアの夜明けで紹介された、クラウドファンディングを活用して新規事業を立ち上げるためのスクール「zenschool(ゼンスクール)」 22期新規募集(残席1名)

第125回MMS放送 「ヌンチャク系iPhoneケースで話題になり、横浜の町工場が世界42カ国と取引」 株式会社ニットー 代表取締役 藤澤秀行さん(後編)

前編より続く)

●広がりを見せる自社商品開発
enmono   先程iPhone Trick Coverで自社商品開発のお話を聞きましたけど、その後、最新の自社商品作りはどうなっているんでしょうか?

藤澤         最新はこちらに!

enmono   おお、かっこいい。

藤澤         これは医療現場のニーズから生まれたウェアラブルチェア「archelis」(アルケリス)といいます。

enmono   どういう機能があるんですか?

藤澤         じゃあ、ちょっと動画を見ていただく形でよろしいでしょうか?

※「archelis」デモ動画を再生

enmono   これはいわゆるお医者さんとかが手術中に脚に装着するものですか。

藤澤         そうです。元々は千葉大学のフロンティア医工学センターという、医療向けのモノづくりをやっていこうという部門がありまして、そこの川平先生というお医者さんの先生とお話ししていく中で、医療が非常に高度化し、立ったままで手術をする時間が非常に長くなってきている。患者さんの負担は減っていくんですけども逆にお医者さんの負担はどんどん大変になっていって……。

enmono   長時間になるから。

藤澤         長時間になるのもそうだし、非常に細かい手術が増えてくる。細かな手術を長時間立ってやるというのはやっぱりすごく大変な作業になるわけですね。

enmono(宇都宮)   脚もそうですけど、手のところもあるじゃないですか。「テケリス」みたいなのは……。

藤澤         テケリス(笑)。それも今後ということで。それで立ち仕事を楽にできないかと先生から話があって、じゃあ何かいいモノを作ってみようということで、最初は椅子……座れば楽なんじゃないかと思ったんですが、医療現場って足下にいっぱい工具があったり人が何人もいるので、椅子に座っている状態なら用を成すんですけど、一度立ってしまうと椅子は邪魔以外の何物でもないんですよね。何の機能も満たさない。座りたい時は座れて、立ったら消えちゃう椅子はないかなというところからスタートして、「じゃあ椅子を身につけちゃおう」という発想で。

enmono   藤澤さんと先生で話し合ったのですか? ほかにも何人か?

藤澤         ほかにもフロンティア医工学センターの中村先生という工学部の先生がいて、その方とも一緒に話しました。基本的にはまず「立って楽にしたい」というニーズをいただいて、私の方でスケッチをして、「こんなのどうでしょうか」と見せて、「いいですね」「じゃあ試作を作りましょう」とウチの工場で試作を作って、また見せてみたいな形で製品になっていきました。

●2015年、怒濤の年末
enmono   それはいつ頃なんですか?

藤澤         やり出したのは2014年の10月くらいです。1年半くらいですね。

enmono   早いですね。

藤澤         でも特に納期が決まっていなかったので、まぁダラダラとやったんですよね。

enmono   それが確定的になったのは……?

藤澤         テレビの取材が来るということになって、それまではゆっくり、ある意味自分のペースでやってたんですけど、年末のテレビで石破大臣がこのアルケリスを着けるという企画があって、「じゃあちょっと……ちゃんと作らないとダメだな」と番組に向けてじゃないですけど、製品をブラッシュアップして試作を……。

enmono   納期が決まっちゃったわけですね。

藤澤         無理矢理おっつけた感じではありますけども。

enmono   これ非常に洗練されたデザインになってますけど。

藤澤         最初は全然こんなにかっこよくなかったんですけど、2015年の末くらいにテレビの取材が入るよと決まって、これを頼むなら前々から一緒にお仕事したいと思っていた西村拓紀デザイン株式会社の西村さんだなぁとお願いしたら「面白そうだね」と引き受けてくれて。

enmono(宇都宮)   納期がタイトじゃないですか?

藤澤         タイトなんですよ(笑)。二ヶ月くらいで何もないところからこのデザインをして……これは3Dプリンタで作っているデザインモデルなんですけど、これも西村さんのところで作っていただいたんです。すごかったですね。過酷でした。なおかつ特許を出したりとか、知財も押さえなきゃいけないとか。意匠は出してないですね。

藤澤         特許や商標なんかは弁理士さんに「こんな短期間でやらない」って言われたんですけど、テレビに出るからと知財も押さえて、試作を作りながら、テレビに出るということでホームページも作らないといけない。それなら動画も作らなきゃいけないと、また動画も作って。12月31日の番組だったんですけど、ホームページや動画ができたのが1日前とか。撮影自体も年末の3日前、普通の人が仕事終わった後に動画とかスチールを撮って。

藤澤         西村さんも同席してくれて。スチールのカメラは吉田さん(zenschool第7期生吉田貴洋さん)。吉田さんすごいですね。このホームページの写真も吉田さんです。吉田さんはスチール用の写真撮ってて、その横で私は邪魔しないようにムービーを撮ってました。

enmono(三木)   じゃあ、ライティングは全部吉田さんがセッティングして……。
enmono(宇都宮)   enmono祭みたいな。

藤澤         そうですね。enmonoさん繋がりでこの製品ができてます。

enmono   で、いよいよ「ガイアの夜明け」なんですね。

藤澤         年が明けて1月にはenmonoさんが「ガイアの夜明け」に取り上げられるという。

enmono   一所懸命押し込んだんですよ。

藤澤         ありがとうございます。

enmono   実際に江口洋介さんが……?

藤澤         はい。江口洋介さんがこのアルケリスを装着してくれて。着けた時に江口さんは「あれ? 全然楽じゃないじゃないか」と仰って、よくよく見たら江口さん脚が長すぎて規格外だったんです(笑)。メンズノンノのモデル出身なんで、日本人の脚の長さの規格外というくらい足が長かったんです。これ、身につける製品なので、その機能を果たすためにはサイズが合っていないといけないんです。

enmono   それは改善の余地が。

藤澤         はい。こんなに人って違うんだと気づけました。そこから社内の従業員全員の脚の長さを測って、どのくらい人ってバラついてるんだろうって。身長が同じでも脚の長さが違ってたりするんです。

enmono(三木)   僕もここがめちゃくちゃ短いですよ(笑)。いつも足が短いって言われてるんです。奥さんに。
enmono(宇都宮)   そんな告白いらない(笑)。

藤澤         (笑)。今まで開発をやってきましたけど、人が身につけると全然違うなと思って、どうやってフィットさせるかというのが今の課題です。

●さらに世界から注目される「archelis」(アルケリス)
enmono   今、世界中から引き合いがめちゃめちゃ来てるんでしょう?

藤澤         海外のwebでも結構。日本よりも海外のサイトで多く取り上げられて。国数で言うと20ヶ国以上ですね。言語で14ヶ国です。

enmono   プレスリリースを出したんですか?

藤澤         プレスリリースは国内だけですね。それで海外にどんどん広がっていって。

enmono   誰が翻訳したんだろう。海外からの取材はいかがですか?

藤澤         取材は来てないですね。動画を使わせてくれっていうことで。YouTubeの動画を普通にサイトに載せる場合は連絡来ないですけど、テレビで使う場合は来ますね。

enmono(三木)   じゃあ来年SXSW(サウスバイサウスウエスト)へ行ってこれをPRすればいいじゃないですか。
enmono(宇都宮)   ミラノサローネに行かれるんですよね。

藤澤         そうですね。ミラノサローネは2017年に出展をする予定です。

enmono   アルケリスを?

藤澤         アルケリスではなく、また別の横浜の製造業のグループでデザインに特化した製品をやろうということで今やっていて。

enmono(宇都宮)   色々されてますね。
enmono(三木)   これは海外に出さないですか?

藤澤         出していくんですけども、色んなメンテのこととか保証の問題もあるので、まずは日本でしっかりとした製品販売をして問題ないというのを確認してから海外展開をしていこうと。無理しないように、段階を踏んでやっていこうかなと思っています。

enmono   サウスバイはいいかもしれないですね。来年くらい、ご検討ください。

藤澤         はい。ありがとうございます。

●自社商品開発をしたいという町工場へ向けて
enmono   普通に見て、ここまでの自社商品開発はウチの会社じゃちょっと無理だと挫けちゃう町工場がたくさんあると思うんですけど、多分一番最初はiPhone Trick Coverから。本当に自分で端材を加工するようなところから始められて、自社商品開発で小さい成功があって、また次の小さい開発があって成功に終わってという段階を踏んでここまで来ている。

藤澤         多分最初からこの製品(アルケリス)を……思いついたとしても製品にしようとはまず思わないですね。でもTrick Coverとか自社製品をやってきた積み重ねがあったので、段々階段を上っていったので今これやるにしても、「ああ、じゃあこうやればいいんだな」とか「こんな風に伝えればいいんだな」とかわかってきたので、まず自分のできることから自社製品としてやる。

enmono   まさにマイクロに生みだしてマイクロに成功していく、それをなるべくスピーディに、しっかり成功体験を重ねていくことが、結果に繋がるということですね。放送をご覧になっている町工場の方に、「私も自社商品開発したいんだ」という方がいらっしゃると思うので、なにかアドバイスがあれば。

藤澤         まずやっぱりzenschoolの考え方、マイクロモノづくりの考え方でもある「楽しいことをやる」というのが、私自身も大事だなと思います。

enmono(宇都宮)   やっているうちにツラいことも生じるじゃないですか。やめても誰も文句言わないじゃないですか。自社商品って。でもやるための原動力が……。

藤澤         自分が楽しいって思えないと大変な時期を乗り越えられないので。

enmono(宇都宮)   多分、身近な人から反対が来るじゃないですか。その時になにかないと乗り越えられないんでしょうね。

藤澤         「自分が楽しむ」はすごい大事だなと思います。

●今後は社員発の自社商品開発を
enmono   社員さんからも自社商品開発の声は出てるんでしょうか?

藤澤         はい、やっぱり元々は作りたいものを作るというところから始まっているので、製造業の会社なので私だけじゃなくて社員の人たちもモノづくりが好きな人が多いんですね。そんな中で社員の中からも自社商品のアイデアを集めて、もしかしたらまたそこからキラッと光る製品が生まれるんじゃないかと取り組んでいます。

enmono   今は社長がメインでやっているけども、いずれは社内から商品の企画ができるように。

藤澤         ぜひそういう風にやっていきたいですね。

enmono   社員が社内設備をある程度自由に使える制度とかはあるんですか?

藤澤         オープンファクトリー制度というものがあって、それは15年以上前からやり出して、元々は多能工といって、一人の人が一つの技術じゃなくて色々な技術を身につけましょうということで。でも仕事でやれることは限られるので、休みの日とか仕事終わってから、会社の設備とか端材を使って自分で好きなものを作っていいですよということを言ったんです。
藤澤         それで実際釣りの道具とか自転車の部品を作ったりして、自分の好きなものを作るんですけど、それは例えば溶接ができなかったら溶接の人に言って教えてもらいながら自分で溶接するとか、板金の人に教えてもらいながら自分で作るとか。自分で作れば楽しいし、愛着も湧くし、自分で作るものなので極端に言うと失敗してもいいわけです。


藤澤         それをやって社員同士が交流したりとか、さっきのM&Aで集まった技術を攪拌していければいいなということでオープンファクトリー制度をやったんです。私のTrick Coverも自分の好きなものを作ろうということで、会社が終わったあとに自分で作ったんです。それまでは作って終わってたんですけど、それをネットに上げたら作って欲しいという人が他にもいた――という反応が見られて、それがヒット商品に繋がっているんですね。
藤澤         だから自転車の部品とか釣りの道具なんかも、自分の好きなものを作っただけなんだけど、それがヒット商品になるかもしれない。可能性があるということだと思うんですね。

enmono   社内で自社商品展示会みたいなことはやらないんですか? こういうのを作りましたって。

藤澤         それいいですね~。

enmono(三木)   お互いに褒め合うというか。
enmono(宇都宮)   zenschoolの発表会を持ってくるとか。
enmono(三木)   社員さんも連れて、そういう雰囲気を味わってもらえれば。そしたらそれに刺激を受けて、会社に戻ってまた作ったりするかもしれない。

●日本の町工場の未来・若者の未来
enmono   お話は尽きないんですが、そろそろお時間の方が迫ってまいりました。いつも皆様に質問していることがありまして、藤澤さんの考える日本の○○の未来。この○○はご自身で入れていただければなと思うので、モノづくりでも町工場でもなんでもいいのですが、なにか思いがあれば語っていただきたいと思います。

藤澤         一つは日本の町工場の未来ですね。ウチ自信も町工場からスタートして、横浜にあるので横浜の製造業の仲間と話す機会があるんですけど、やっぱり非常に厳しいなぁとか大変だなぁという話は出るんですね。そんな時に自社製品をやってウチはだいぶ変わったんです。いいことがあって。

藤澤         最初はなにかやりたいねと言ってて、自分なりにやっていて、知り合いの工場に大変だねって話をしていた時に、アドバイスといったら烏滸がましいですけど「こういうことやるといいんじゃない?」というのを話すんですけど、でもやっぱり一歩踏み出せなかったりするんですね。そういう意味では新しいことを一緒にやっていくことで、今の負の状態を脱却できる、楽しんでやれると思うので、そこを一緒にやれたらなと。

enmono   やっぱり現状の町工場を見ていて厳しいですか。

藤澤         まだまだ厳しい状態ですし、若者にとっては魅力的ではない。昔の3K職場ほどではないですけど、もっと夢のある会社、夢のある職業にしたいと思うんです。そういった意味で面白い商品を出すとか、私含めて自分で色んなことをやって、それを見てもらった時に、「ああ、ああいう風になりたいな」みたいなことを思ってもらえるようなことをやっていきたいと思います。

enmono(三木)   素晴らしい。

enmono(宇都宮)   若い人たちから声がかかることってあります?

藤澤         最近だと地域の学生さんと交流することがあって、金沢区だと関東学院、大学生とか高校生ですね。割かしですね、「Trick Cover知ってるよ」と知っててくれるので今までの製造現場なんか見たことない人がほとんどなので、「面白いですよね」とか「テレビで知ってる知ってるコレ」とか、学生さんもこれ見ると「なにこれヤベェ」って。

藤澤         ヤバイって褒め言葉をいただくと私嬉しいんですけどね(笑)。「ヤベェぞ」って言って触ってくれるんで。そうやって作ったものが若い人にとって楽しみに繋がってくれたら、本当にそれは嬉しいなと思いますね。

enmono   貴重なお話をいただき、ありがとうございました。本日は株式会社ニットーの藤澤社長にご出演いただきました。どうもありがとうございました。

藤澤         はい、ありがとうございました。


▼藤澤秀行さん
https://www.facebook.com/Fujihide

▼WEBSITE
http://nitto-i.com/

▼ウェアラブルチェア「archelis(アルケリス)」
http://www.archelis.com/

 

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