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第125回MMS放送 「ヌンチャク系iPhoneケースで話題になり、横浜の町工場が世界42カ国と取引」 株式会社ニットー 代表取締役 藤澤秀行さん(前編)

●実は結構長いお付き合い
enmono(三木)   はい、第125回マイクロモノづくりストリーミング、本日も始まりました。本日は株式会社ニットーにお邪魔して藤澤さんに色々お話を伺いたいと思います。司会はいつもの通り株式会社enmono三木でございます。

藤澤         イェイ!(拍手)

enmono   あといつもの声の出演で――。

enmono(宇都宮)   はい、宇都宮です。

enmono   藤澤さんは今回2回目の登場ということで、来ていただきましてありがとうございます。

藤澤         ありがとうございます。よろしくお願いします。

enmono   藤澤さんとはいつも、講演会とかも何度もさせていただいて、色々とお話を聞いてるんですけども、このMMSをご覧になる皆様の中にはもしかしたらご存じない方もいらっしゃるかもしれませんので、まず我々と藤澤さんの出会いというところからお話をさせていただければと思います。

藤澤         はい。

enmono   きっかけは「春のおばかモノづくり祭」というwebの企画がありまして、町工場でちょっとおばかなモノを作ってみようということでエイプリールフールにかけてありまして、それで募集をかけていたところ、ミナロの緑川さんという方に「ニットーという会社で面白いことやってる社長がいるよ」とご紹介いただきまして。

藤澤         2012年ですね。緑川さんとは元々結構長い付き合いで。

enmono   あ、そうなんですか。

藤澤         緑川さんがミナロを起ちあげる前からですね。

enmono   それで、いきなりiPhoneを振り回している方が動画で出てきたので、すっかりびっくりして。

藤澤         そうですね(笑)。

enmono(宇都宮)   会いに行かなきゃと。
enmono(三木)   それですぐメッセージ送ったら、すぐ帰ってきたんですよね。

藤澤         そうでしたっけ(笑)。

enmono   すごいレスポンスがよくて、そこからのお付き合いということで。もう4年。

藤澤         まだ4年か(笑)、っていうくらい濃いですね。

enmono   4年とは思えないくらいの、16年くらいな感じですね。

enmono   様々なことがありまして、今や我々の手の届かないところへ……。

藤澤         いやいや、そんなことないです。まだ全然。

enmono   まだまだ?

藤澤         まだまだ行きますよ(笑)。enmonoさんのおかげで頑張れてます。

enmono   その時に開発したものが、前の方に並んでおりますiPhone Trick Coverという、iPhoneを振り回すという、今大人気の。

藤澤         ちょっと振り回してみましょうか。これが実機なんですけど、このiPhoneとカバーがクルクル回って、電話に出る時、こんな風に(ヌンチャクのような動き)iPhoneを振り回せるケースです。あとは特徴として、このようにスタンドになったり、後ろにSuicaを入れたりと。

enmono(三木)   いいですね。
enmono(宇都宮)   スタンドになるのはついでですよね(笑)。

藤澤         そうですね(笑)。第一の機能としては「振り回せる」というところがスタート地点です。

enmono   累計でどれくらい出ているんですか?

藤澤         ちゃんと数えてはいないんですけど3万4千台くらいになります。

enmono   おおー。iPhone4の時代から?

藤澤         4の時代から累計で。クラウドファンディングの出荷も含めてですね。

enmono   クラウドファンディングやりましょうよと僕らの方からお声がけして。

●それ、そんなに振り回しちゃっていいんですか?
藤澤         せっかくなので二人の出会いのきっかけになった最初の動画を見ていただいてもいいですか?

enmono   ぜひ、お願いします。

※iPhone Trick Coverのデモ映像を再生。

enmono   これがほんとに。

藤澤         すべてのきっかけですね。私にとってもそうですし、会社にとってもそうですし。

enmono   これ、開発の時は会社には内緒に。

藤澤         こっそり作ってましたね。こっそり作って、日曜日に動画を撮影して、iPhoneで撮って。

enmono   改めて動画を見たらすごいよくできてるな思いました。その製品の特徴やワクワク感みたいなものがよく出ていて、あとちょっとギャグっぽいのも(※ 動画の中で振り回しているうちに落っことしてしまった)。

藤澤         (笑)。あれは全然わざとじゃなかったんです。たまたま落として。

enmono   よかったと思います。傷ついてないかどうか見たりして。

藤澤         iPhoneじゃなくて机を気にするっていう。あれ無垢のアルミだったんで、実は重いんですよ。

enmono   ビュンビュン回ってる感じですね。

藤澤         そうなんです、危ない感じなんで。

enmono(宇都宮)   モデルチェンジ後の動画の技がすごくシンプルになってました。

藤澤         動画も色んな出し方をしてて、あんまり振り回しすぎて、一時期ドヤ顔を出し過ぎちゃったんで。

enmono   ドヤ顔が炎上しちゃったんですか?

藤澤         ドヤ顔バッシングが来たんで(笑)。だから5の動画とかは振り回しとドヤ顔をちょっと抑えてたんですが、やっぱり振り回す方がいいんじゃないかとなったので、6の動画ではガンガン振り回すことにしたんですけど。

enmono   それがアメリカのサイトに掲載されたんですよね。

藤澤         そうですね。ギズモードに掲載されて。

enmono   知らない間に?

藤澤         知らない間ですね。見つけて掲載されて、シェアされ始めたらどんどん広がってった感じで。

enmono   60万回くらい再生……。

藤澤         今65万回くらいですね。

enmono   そういうのって向こうはなにも許可取らないで載せるんですね。

藤澤         YouTubeの映像をGIFにしてサイト上で動いてくれてたりとか。

enmono   戦略通りですか?

藤澤         戦略(笑)。ノープランでやってますからね。

●下請仕事のみの状態からの脱却
enmono   では、ここで会社のことを少し説明していただけますか?

藤澤         株式会社ニットーです。創業49年で来年50周年を迎えます。横浜にありまして、ちょうど海が目の前でヨットハーバーが見えるところに会社があります。
元々は金型を製造する会社で、お客さんから品物の図面をいただいて、ウチで設計して、作った金型をお客さんに売るというところからスタートして。で、金型だけじゃなくて、プレス部品だとか、金型を作るので色々な機械加工もして、精密機械だとか治工具などもやるという会社であります。

enmono   いわゆる典型的な下請の……。

藤澤         そうです。下請の会社です。

 

enmono   その下請の会社さんがなぜ自社商品を開発しようと思ったんでしょうか?

藤澤         ちょうどリーマンショックもありまして、普通の下請だけだとやっぱりちょっと心配だなぁというのがあったり、下請仕事だと大手がどんどん海外へ出て行って価格競争が厳しくなっていって、そこから脱却するにはどうしたらいいかということがあったりで。

enmono   どのくらいの期間、開発しようかなと思ってたんですか?

藤澤         昔から何か自社製品やりたいなとは思っていました。製造業にいると割と皆さん思っていると思うんですけど、本格的にやり出したのが2011年くらいからです。

enmono   震災の……。

藤澤         その影響もありますね。そのくらいから取り組み始めたのですが、何をやったらいいのかわからなくて悶々としていました。その中で「おばかモノづくり祭」があって、そこに出したこのTrick Coverが欲しいという声がネット上にあがってきたので、「じゃ、これを自社製品にしてみよう」ということでスタートしました。

enmono   「おばかモノづくり祭」で「製品化しないんですか?」と聞いた時に、あんまりそういう感じはなかったと思うのですが。

藤澤         はははっ(笑)。精密機械を振り回すというのが製品になるとは元々思ってないんで。自分はこれ、作りたくて作ったんですけど、ほかの人が欲しいとは夢にも思わないというか。

enmono   マーケティングとかしてないですよね。

藤澤         全然。ただ自分が作ったら面白いなというネタとして作っただけなんです。

enmono   会うたびに話が製品化の方へ少しずつ変わっていきましたよね。デザフェスの頃には8月に発売を決めると。

藤澤         決めるというプレスリリースも打ってですね。

enmono   そして「クラウドファンディングしようか?」と悪魔の声が囁いて。

藤澤         そうですねクラウドファンディングを全然知らなかったですけど、enmonoさんに。

enmono   私たちも(当時)あんまり知りませんでした。情報としては知っていましたが、実際にやったことはなかったんですね。

藤澤         自社製品をやるには、色んなことをやっていかなきゃいけないので、とりあえずやってみようと。勉強になれば失敗してもいいやということで、プレスリリース打ったりイベント出たり、チャレンジの一環としてクラウドファンディングにもチャレンジしたんですね。

enmono(三木)   クラウドファンディングがスタートした日は覚えてます? 「今日何時からスタートです」ってメッセージがFacebookで来て、ちょっと大げさなことを書いてみたんです。「製造業の歴史がこの日で大きく変わる最初の日です」って大げさなメッセージを書いたら、「なんですかそれは」って返事が来て。
enmono(宇都宮)   本当に変えましたよね。

藤澤         その時はワケもわからずやってましたけど、大きなターニングポイントでした。

enmono   あの日あの時やっていたから今がある、みたいなね。

藤澤         ほんとそうですね。

enmono(宇都宮)   極端に言うとやらなくてもいいじゃないですか。本業があるわけだから。そこを踏み切った決意というか。

藤澤         なんか面白そうだなと思ったからですね。直感というか。お客さんとの取引もそうなんですけど、いいなと思えばどんどん進みますし、「ん?」と思ったら考える。そこら辺の直感を大事にしています。まぁでも直感も自分なりに勉強したり、人にアドバイスもらったり、経験を積んだりした中で、最終的にそこに委ねるというか、そこら辺をアンテナにして判断してます。

●三つの会社が一つになって……
藤澤         で、色々やっていく中で自社製品の前に、自社で一貫生産というのをやりだして。今までは試作は試作、量産は量産だけで受注してたんですけども、どうしてもそれだと単発の仕事になって価格勝負になってしまうので、そんな中で設計・試作・金型・量産みたいのを一貫でやろうと決めたんですね。

藤澤         そうするとお客さんの位置づけとして、パートナーとして長く製品の取引ができる。あとはウチが持っているノウハウなんかをお客さんにどんどん提供していくことによって、いい付き合いができるようになるという思いの中で自社で一貫生産をやって。その中でお客さんから依頼を受けて、色んな製品を作っていきました。

enmono   それはいつ頃になるんですか?

藤澤         2010年くらいですね。ちょうど工場を引っ越した時期なんです。

enmono   2009年までは純下請で?

藤澤         純下請で、会社をプロモーションすること自体していなかったですね。ホームページは一応自分なりに作って出してたんですけど、位置づけとしては既存のお客さんに向けた最新の会社案内として作っていただけで、新規の人に見てもらうとか、そこにSEOとかの考えも全然なくやっていました。

enmono   その頃は通常のルート営業に行ってやっていたんでしょうか。

藤澤         そんなイメージでやっていて、リーマンがあって、自分の会社を自分でアピールしないといけないなと。ウチが「金型やるよープレス加工やるよー」とか技術的に色んなことをやれても、プレスの仕事をもらっているお客さんに対して金型もやってるよという話をしないと、お客さんにとってはウチには金型の技術がないことになってしまうというか。要は知らせていかないとお客さんにとっては技術すら持っていないということになってしまう。
藤澤         敷衍すると、会社自体をアピールしないと、知らない人にとっては当然、ニットーという会社は「無い」に等しいということになってしまうわけですね。情報を伝えるとか、自分たちの技術とか、自分たちの会社がこんなことやってるよとか、ここにニットーがあるんだよと伝えていくのが大事だなということで、一貫生産をアピールの方法として選びました。

enmono   藤澤さんの会社は三つの会社が一つになったと聞きますが、それはいつぐらいの話なんでしょうか?

藤澤         11年前ですから、2005年くらいですね。製造業によくある問題で後継者がいない。若者の製造業離れじゃないですけども、その中で伏見製作所という会社が一社目の合併した会社なんですけども、どんどん高齢化が進むが後継者がいない。お客さんがいて、従業員の方がいる。やめざるを得ないけどもという状況でウチに話が来て、「引き継いでくれないか」という話が来て。その時私は専務という立ち位置で父が社長でいたんですけど、私は最初反対したんですね。

enmono   論理的に考えればそうですよね。

藤澤         ウチとほぼ同じ規模の会社だったんですね。その頃10名ちょっとの会社だったので、10名ちょっとの会社が10名ちょっとの会社を買うと。

enmono   それはすごい決断だな……。

藤澤         で、借金も結構あったんですよね。

enmono(宇都宮)   それはいったん精算してもらわないと困りますよね。

藤澤         でも、そのまま借金も含めて引き継ごうという話になって。

enmono   お父様がお付き合いのあった会社なんですね。

藤澤         そうですね。ウチが金型を作ったお客さんで、向こうはプレス工場だったんです。で、実際M&Aして一緒になると非常にいいことがあって、当然従業員にとってみれば雇用が確保される、リタイアするオーナーさんは安心してリタイアできる。あとお客さんもウチが引き継ぐことによって、安心して部品供給がされるので「いいな」と言ってくれたり。自社にとっても非常にメリットがあって、短期間に技術が倍になって、取引先も倍になった。会社規模が一気に倍になったんですね。

enmono   重なっているということはなかったんですね。

藤澤         お客さんとしては重なっているところもありました。

enmono   金型屋さんとプレス屋さんって同じモノづくりでも一品物を作ってる領域と量産の領域で現場の生産管理の質がちょっと違うと思いますが。

藤澤         確かに違いますね。ニットーとしてはその頃もうプレス加工とか色んなことを幅広くやっていたので、幅広さが枝を伸ばしていった時の太い枝がゴンッと急についたような感じですね。枝を伸ばそうかなと思ってた時に太いのが来てくれたので、すごく心強かったですね。技術があって、伸ばしていく先にはお客さんがいてくれて、ビジネスとしても広がりを見せてくれました。

enmono   もう一つの会社も?

藤澤         翌年にもやはり後継者がいない会社。そちらはアルミの板金加工を得意としている会社で。ウチとしてはアルミの板金とか溶接の技術がなかったので、でも割かし近い業界ではあったので非常にいい繋がりになりました。

enmono   三つの会社って従業員の方もそれぞれ別々の環境の中で育ってきたから、それを一つに統合するのって相当大変な作業だったんじゃないですか。

藤澤         工場がそのまま分かれている時はよかったんですね。ニットーという会社、伏見製作所という会社、田辺製作所という会社、代表が替わっても基本的にはやっている仕事は変わらないのでそんなに環境の変化はなかったんですけども、(分かれていると)非常に効率が悪いので一ヶ所にしたいということで、2009年に大きな工場――ここに三社の工場を集約しました。

enmono   集約したその年にリーマンショックが……。

藤澤         そうなんですよ。その直後に。

enmono   社長としてはすごくガクーンと。

藤澤         なったんですけど、いい面と悪い面があって、新しい工場を買うってすごく大きな決断でお金もかかるんですけど、でもリーマンショックだったので想定していたよりも安く買えたんです。そういう意味ではよかったんですけど、先行きが見えない中で大きな買い物をしたのでどうにかしなければならないなと。三社それぞれ文化が違うので……。

※編注:対談の中では三つの会社が一つにとなっているが、伏見・田辺両製作所から期間をおいてもう一社、小池慎一製作所の業務も引き継いでいる。2004年に伏見製作所、2005年に田辺製作所。2008年に小池慎一製作所という順で資本業務提携やグループ会社化を進め、2010年に新本社工場へ集約を完了した。集約が順次進められたことで2009年という認識になっているのだと思われる。

enmono   その統合はどういう風にやっていったんですか?

藤澤         それぞれを見ていると、意見として間違ったことは言っていないんですけど、ベクトルが違っていました。それを一つのベクトルにまとめるために企業理念をもう一回作り直しました。その時新しくできたニットーの企業理念は「お客様にとって頼りになるパートナー企業として満足と信頼を提供し続ける」「働く一人一人がやり甲斐と幸せを実感できる企業を目指す」「より高いレベルの技術を目指し、常に新しいことにチャレンジし続ける」という三つになります。

enmono   まさに三番目が今花開いて。新しいことにずーっとチャレンジし続けていますね。

藤澤         この企業理念も社長とか経営者が作るんじゃなくて、そこに集まった社員のみんなで作り直したんです。

enmono   それはいいですね。

藤澤         ウチの会社はなんのためにあるのか、なんのためにニットーで働くんだという目的を企業理念に籠めるという意味では自分たちで決めたものの方がいい。

enmono   それは嬉しいですね。社員が作ってくれたというところが。

藤澤         半年かけてこの企業理念を作って、社員の一人がせっかく作ったので毎朝唱和しましょうと、朝礼の一番始めにみんながこれを口に出して唱和してから始まるんです。だから社員誰に尋ねても企業理念は言えます。そういう風にしてベクトルを一つに向けていきました。

後編につづく)

 


▼藤澤秀行さん
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http://www.archelis.com/

 

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