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「使ってもらう人が魅力的な体験をしてもらう、Smile Experienceを目指す」千葉工業大学 デザイン科学科 山崎和彦教授

MMS本編

 

enmono 本日は、千葉工業大学 デザイン科学科の山崎先生の研究室、「Smile Experience Design Lab.」にお邪魔しています。初めてお会いしたのは、大田区の町工場でしたよね。その時は「町工場とデザイン」ということで町工場をご覧になられていましたが、先生の研究室では「Smile Experience」という考え方で、さまざまな企業と一緒にプロジェクトをされています。

 

山崎 例えば「自社製品を作ろう」とか「工場をかっこ良くしよう」、「カタログやWebサイトを改善しよう」といった事でデザインが役に立つのではと思っています。デザイン的なセンスは皆、持っているのです。小学校で工作をするのもデザインです。そのようなデザイン的な事をやっていたセンスを活用してもらおうというのが、私の考え方です。学生達は大学の中での学びだけでなく、実践からも学びます。社会の人達から教えてもらうような感じです。「Smile Experience」は使う人だけでなく作り手も含めて、皆が良い体験ができるということなのです。

 

enmono どのようなプロジェクトがありますか?

 

山崎 産業廃棄の会社さんとは、カフェスペースを企画してカフェに関わる物をデザインしました。農業のIT会社さんの場合は、企業のイメージづくりをしました。研究室の活動内容はウェブサイトでも公開しています。産学で企画した商品は、東京デザイナーズウィークやミラノサローネに出展して売ります。ミラノサローネは4年前から、学生と一緒に毎年行っています。ミラノはデザインの本場です。そのような所で英語でコミュニケーションし、グローバルな目で見てきてもらいたいのです。

 

enmono 私も山崎先生の本を購入して勉強させていただきました。テクノロジーの方まで踏み込んで書かれていますね。 

 

山崎 『PRODUCT DESIGN』は、デザイナーのための本ではありません。「商品開発に関わるすべての人へ」と書いてあるように、モノづくりに関わる人の教科書です。売れる商品はデザインで決まります。ビジネスに関わる人は、プロダクトデザイン的な考え方を知っていてほしいのです。デザイン的な考え方を皆が持つことで、売れる商品に変わるということなんです。

 

enmono 『EXPERIENCE VISION』は、ビジネスにデザインを活かしたい人に読んでもらいたい本だそうですね。

 

山崎 今、多くの方が、どういう商品やビジネスが良いのか悩んでいますよね。視点を変えると、新しい商品やサービスの提案ができます。これまでの日本のモノづくりは、海外に原形があり、その改善を一生懸命やってきました。そうして良い製品をつくってきたわけなんですけれども、「そろそろ自分達のビジョンで、これまでにない商品やサービスをつくっていきましょう」、「ビジョンをつくる時にEXPERIENCE、体験というのを考えていきましょう」ということを言いたかったのです。

 

enmono 『情報デザインのワークショップ』には、40ものワークショップのやり方、進め方が書かれています。山崎先生はプロダクトデザイナー時代にノートパソコンの「ThinkPad」などをデザインされていますが、その頃から造形だけでなく、ビジネス全体や社会システム全体をデザインするような考えがあったのでしょうか?

 

山崎 ありました。モノが良くても売れなかった経験があって、「モノだけやっていても成功しない」と実感しました。それと、リチャード・サッパーというデザイナーに「デザインとは形だけではなく、社会の文化をつくっていくことなんだよ」と教えてもらったのです。リチャード・サッパーは「ThinkPad」のコンサルタントでした。サッパーが、プロダクトの造形を見る繊細な視点と、「これは社会に役立つだろうか」という両方の視点でデザインしたものがあります。

 

enmono 笛吹きケトルと、チーズ用のおろし金でしょうか。

 

山崎 このヤカンはハーモニカのユニットが入っているので、汽笛のような音が鳴ります。毎日が楽しくなる綺麗な音が鳴ることに一番時間を費やしていて、造形的な面白さは最後に、スパイス的に入れているのです。コーヒーを飲む人も楽しいけれど、コーヒーを入れる人も楽しい。チーズ削りも、楽しむユーザーの姿を描いてデザインしています。イタリアではワインを配るのは主人の権限で、チーズを削るのは子どもなどの役割だそうです。ワインを注ぐようにテーブルの上で優雅にチーズを削れば、削る人もそれを受ける人も楽しいですよね。

 

enmono 「Smile Experience」の「Smile」ですね。後半は、山崎先生のデザイナー時代について伺いたいと思います。現場も経験されたとか?

 

山崎 皆が良い住宅に住めることに興味があり、住宅産業の工業化をやっているクリナップに入社すると、ステンレスを着色する工場に配属されました。工場の隅に机を置いて、一人で調査をして企画書を作成し、試作をします。当時の会長がアイデアマンで、「ステンレスを使った商品をどんどん考えよう」と、浴槽や玄関ドア、下駄箱などのお題をいただくのです。開発部門とは別の、会長直属の開発部のような感じでした。現場で人が足りないと手伝うこともありましたね。デザイナーという意識はあまりなくて、売るところまで考えながら図面描きからカタログ作りまで、モノづくりを一通り経験させていただきました。

 

enmono そのような経験が、ビジネス全体をデザインするという考えに繋がるのでしょうね。クリナップに5年いらっしゃって、その後IBMに入られて、突然の業界越えですね。

 

山崎 自分の地元である神奈川で仕事をしたいという気持ちが出てきた時、たまたまIBMが募集していたのです。クリナップにいた時から、コンピュータにも興味がありました。

 

enmono IBMでは、どのようなものをデザインされていたのですか?

 

山崎 銀行のATMや工業用の機械、レジスタなど、BtoBが多かったです。

 

enmono 「ThinkPad」が発売された当時、真っ黒いパソコンは他になかったのでは?

 

山崎 皆さん、筐体の色が印象に残っているようですが、私達は黒いノートパソコンをつくりたかったのではなく、日本の市場にあって日本の標準になるプロダクトをつくりたかったのです。当時、日本のパソコンメーカーは別々のDOSで、互換性がありませんでした。アメリカはIBM PC DOSが共通のDOSなので、どのパソコンメーカーが製造してもデータを交換できました。ソフトウェアも共通です。日本は小さな市場なのにそのような状況では、パソコン業界が良いわけないですよね。日本IBMでは一つの共通のDOSを広めるために、DOSのリファレンスマシンが必要だと考えたのです。

 

enmono 苦労された部分はありますか?

 

山崎 「日本のユーザーにとってベストなサイズはA4だ」と、A4サイズにこだわりました。日本はA4ファイルがあるので、A4にこだわることで鞄や机の引き出し、棚にも入ります。また、「キーボードを一番良くレイアウトできるのはA4サイズだ」と、考えました。その二つの理由から、企画や開発の人達と、まずサイズから決めていったのです。キーボードのレイアウトやサイズは、いったん決めたら10年間変えないくらいのつもりで。そうでないと、リファレンスにマシンにならないですから。次に、「10年間スタンダードな形や色は何だろうか」と考え、形は最もシンプルになりました。色は、薄い色は変色しますし周辺機器の色を考えると、白か黒かシルバーか。

 

enmono 黒に決まった理由は何でしょうか?

 

山崎 日本人は黒が好きで、ビジネスマンも当時のOLも皆、黒い鞄を持っていました。アタッシュケースも、手帳もそうです。黒はビジネスの標準だと気づいたんです。それと、黒は製造する時に色を決めやすいのです。

 

enmono 日本でのスタンダードを製造するための黒だったのですね。

 

山崎 反対意見もありましたが、リチャード・サッパーも「黒にすべきだ」と主張してくれました。

 

enmono 今後、日本のモノづくりの未来がどうなっていったらいいと思いますか?

 

山崎 私はずっと、イタリアのモノづくりの研究をしてきました。イタリアの工場で現場を見させていただくと、いろんなヒントがあると感じます。会社の規模は小さくても、世界に向けて発信しています。オリジナリティがあるのです。そして、メイド・イン・イタリーで職人を大事にします。技術者がヒーローなんです。モノづくりをする人とデザイナーや企画する人が近い存在で、皆が協力している。お客様と一緒にモノづくりをしている。そのようなイタリアのモノづくりが、日本のモノづくりの参考になるのではないでしょうか。作り手も使い手も、第三者がいたらその人達も良い体験ができるビジョンづくりが鍵だと思います。

 

enmono ありがとうございました。

 

 

 

 

 

’14/9/5 第88回MMS放送(ゲスト:山崎教授)

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Smile Experience Design Lab.

 

 

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