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五光発條 村井秀敏

日本でバネづくりを続けたい

村井さんがかぶっている帽子、その帽子にかけた眼鏡は、小さなバネをつなげてつくったものだ。レゴなどのブロックパズルが好きで、「プロ級の腕前」と自負する43歳。村井さんが代表取締役社長を務める五光発條株式会社も、同い年である。

五光発條は、神奈川県で精密超微細バネを開発製造している。山梨工場(株式会社ジー・エス・ケー)と、海外はタイとベトナムに工場がある。バネ業界ではリーマンショック以前より、国内の取引が厳しい状態にあった。村井さんの「100年後も国内でバネをつくる」という強い思いもあり、5年前から革新事業や自社製品開発のプロジェクトに取り組んできた。

 

経営革新講座で生まれたアイデア

2012年秋、村井さんはenmonoがおこなっている「マイクロモノづくり経営革新講座」で、あらたな自社製品について考えていた。講座では、「自分が好きなもの」と「自社技術」が重なりあう何かを、見つけ出さなくてはならない。好きなものをつくって世に出すなど、許されないことのようなイメージがあったという、村井さん。これまでとは違う考え方でアイデア出しをしたところ、「バネをブロックのようにつなげる」という案が浮かんだのだ。

これと決まると、村井さんは夢中でバネとバネをつなげていった。そして、尾びれが動く鯛のオブジェが完成した。何より嬉しかったのは、今までにないブロックが手にする人を笑顔にし、楽しいコミュニケーションをもたらしてくれたことだ。それこそ、思い描いていた製品だった。

 

 

バネを通じて人と人をつなげる「SpLink」

金属バネのブロックは、プラスチック製のブロックとは違う魅力がある。精密バネを使うことで、作品が柔軟に動く。ステンレスは錆びにくく、水にも熱にも強い。バネの隙間をなくしてみたら、鉄のかたまりを削り出したような仕上がりになった。イス、カエル、飛行機••••••新しいオブジェが増えるたび、表現の幅は広がっていった。

こうして誕生したバネのブロックは、「SpLink(スプリンク)」と名付けられた。

「Spring(バネ)」を通じて、世界中の人が「Link(つながる)」してほしいという願いがこめられている。

 

村井さんは、デザインフェスタへの出展やクラウドファンディングでの資金調達などをしながら、「SpLink」は過去の企画とは違うと実感した。自分が好きなことのためと思えば、苦手なことでも「挑戦しよう」という意欲がわいてくる。販売まで、熱意を持続できているのだ。

世界で一番笑顔をもらえる会社に

五光発條の統合理念は、『幸・信・繁・(思いやり)。社名にある「五」にあわせて、「笑」の一文字を加えたいと、村井さんは考えている。目指すのは、世界で一番、笑顔をもらえる会社。そのためには、社員が笑顔でなくては始まらない。

 

最近、社員も変わった。「日本製造業コマ大戦」への参加がきっかけだった。コマ大戦は、各社が自社技術を応用して喧嘩ゴマをつくり、対決をする。普段の仕事とは別に、自らクリエイトし、チャレンジする良い機会となったのだ。そのような変化もあって、「SpLink」のプロジェクトにも協力してくれる。

 

社長は講座で、同じ時期に、社員はコマ大戦でステップアップ――これが、会社の革新へとつながった。100年続くバネづくりの道は、もう始まっているようだ。

 

 

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